ティール型組織を目指すネットプロテクションズの取り組み|新人事制度「Natura」の効果とは | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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ティール型組織を目指すネットプロテクションズの取り組み|新人事制度「Natura」の効果とは

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

7月31日におこなわれた、株式会社ネットプロテクションズによる勉強会「働き方改革の現況と、次世代働き方を実現する国内でも数少ない『ティール型組織』の実情と今後の展望」。

今回の勉強会では、組織開発に力を入れるネットプロテクションズが、新たに導入した人事評価制度「Natura(ナチュラ)が紹介されました。

Natura」は、国内でも事例が少ない「ティール型組織」の実現を目指して作られた人事評価制度です。

勉強会では、人事総務グループの釣巻氏より、「Natura」が導入された背景から「Natura」の仕組み、そして導入1年後にとった社内アンケートの結果についてお話していただきました。

新人事制度「Natura」が導入されたことで、ネットプロテクションズの社員からはどのような声があったのか、組織はどう変化したのでしょうか。

ネットプロテクションズにおける「ティール型組織につながる人事評価制度」の導入事例をご紹介します。

「自ら考え、行動する社員を育てたい」ネットプロテクションズの組織像

釣巻氏:ネットプロテクションズ人事総務グループの釣巻と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

釣巻 創氏 | 株式会社ネットプロテクションズ 人事総務グループ 

東京大学大学院生命理工研究科生体システム専攻卒業。2014年に新卒でネットプロテクションズに入社。1年目から4年目まではBtoC通販向け後払い決済「NP後払い」のカスタマーサービスにて与信の運用・企画に従事。2018年より人事グループに参画し、Naturaの運用改善、中途採用、新卒採用、新卒研修、海外拠点の人事制度歳暮など、広く人事領域で活動中。

まず組織についてお話しますと、ネットプロテクションズの組織構成は少し変わっていて、全従業員に占める正社員の割合が半分以下で、さらに正社員のうち8割が新卒です。

特徴としては、入社5年目までの社員の定着率が92%と、社員の定着率が高いことがあげられます。

社員は「自ら考えて行動するタイプ」が多く、責任感が強かったり、誠実であったりといった性格の人が集まっていますね。

そんな私たちは、組織をつくるにあたって「ミッション・ビジョン・バリュー」を大切にしています。特に「ミッション」を実現することは、日頃から常に意識しています。

【ネットプロテクションズの組織のミッション】

  • 社員の自己実現
  • 社会発展の両立

釣巻氏:人事としては、ミッションを実現するために「自ら考え、行動する社員」を育てていきたいと思っています。

上層部が組織のあり方を細かく設定すると、社員は働きにくさを感じたり、能力を発揮しにくかったりといった状態になり、自ら考え行動することができなくなってしまいます。

そこで私たちが目指しているのが、「ティール型組織」です。

ネットプロテクションズが目指す「ティール型組織」

【ティール型組織とは】

「主体性」を持つ「個」を軸にした新たな組織形態。誰かの支持によって業務を進めるのではなく、権限を託された組織のメンバーが、全員でルールや仕組みを設定し、組織を動かすモデル。

釣巻氏:「自ら考え、行動する社員」が集まった「ティール型組織」になると、事業と組織が対等になります。

事業の価値を高めるために、ただ上から指示されたことをやる「事業のための組織」ではなく、社員が自ら進んで行動する「事業と対等な組織」が出来上がるのです。

結果として、「社員個人の自己実現」と、「会社として社会に貢献する」というミッションの実現につながると考えています。

ですから私たちは、「自ら考え、行動する社員」が働きやすい環境をつくるために2つの取り組みをおこなっています。

【組織概念図】

ミッションを実現するための2つの取り組み

釣巻氏:取り組みの内容は大きく2つあります。

1つ目は「情報の徹底的な開示」です。情報というのは、損益計算書やキャッシュフロー計算書といった事業の数値状況や、会議の議事録です。

情報を隠し過ぎてしまうと、社員が経営者の目線に立つことができなくなってしまうため、情報の開示は徹底しています。

2つ目は、「ワーキンググループ制度」です。この制度は、業務時間の20%を好きなプロジェクトのために使える制度で、自身でプロジェクトを立ち上げることもできます。

たとえば、新卒採用や研修といった「組織づくり」に関わるプロジェクトが実際に実施されています。

また、中長期の経営計画を考えたり海外事業を立ち上げたりといった「経営」に関わるプロジェクトも、ワーキンググループ制度を通して生まれました。

ただ情報を知っていても、実際に行動に移す場がなければ組織のミッションの実現につながりません。そのため、やりたいことがある人が手を上げて参加できるワーキンググループ制度を設けました。

ネットプロテクションズの組織の課題

釣巻氏:「徹底した情報開示」と「ワーキンググループ制度」といった取り組みをおこなう一方で、若いメンバーが多いことでマネージャー層に負荷がかかっているという組織の課題がありました。

また、組織の課題に加え、人事評価制度に対して現場社員から不満の声が出ていました

【人事評価制度に対する現場の声】

「マネージャーはメンバーの業務を充分に把握していないので、適切に評価できていない」
「どうしたら評価が上がるのかわからない」
「マネージャーの任用基準が不明」

釣巻氏:こうした声は、「マネージャーが若手メンバーを見切れていない」という2つ目の組織の課題から生まれていると考えました。そこで、2つの課題を改善するために新人事制度「Natura」の導入を決めました。

ティール型を目指して導入された新しい人事評価制度「Natura」

釣巻氏:「Natura」を策定するにあたって、『全てのメンバーが「成果」「成長」「幸福」を両立できる』というコンセプトを立てました。

コンセプトに基づいて、「上司と部下の上下関係をできるだけ縮め、協調を促進していこう」「一部のメンバーへの負荷の偏りをなくそう」と考えながら制度を策定しました。

制度の内容についてですが、「Natura」の取り組みには3つのポイントがあります。

【「Natura」3つのポイント】

  1. 役割のフラット化
  2. より安心でフェアな報酬ポリシー
  3. 評価の主旨を「成長支援」へとシフト

カタリストの活躍でよりフラットな組織に

釣巻氏:まず「役割のフラット化」に関しては、マネージャー職を撤廃し、代わりに「カタリスト」という役割をつくりました。

カタリストとマネージャーの違いは、マネージャーが「役職」であるのに対してカタリストは「役割」である点です。

カタリストには、社内の情報や知識の共有など、組織のメンバーが自立・自走するための支援をおこなう役割があります。組織の「黒子」のような役割を担っているイメージです。

カタリストが活躍することで、社員間の知識や情報の偏りが無くなり、よりフラットな組織が出来上がると考えています。

フラットな組織とは、メンバーが皆同じくらいの情報量を持っていて、同じことができる状態の組織だと思っています。

こういった状態であれば、メンバーそれぞれが自然と協調しあい、お互いを助け合って行動していく「ティール型組織」に近づくのではないでしょうか。

360度評価とグレードの開示でフェアな報酬を

釣巻氏:2つ目のポイントは、社員の昇給や昇進を決めるにあたって「より安心でフェアな報酬ポリシー」を置いたことです。フェアな報酬とは、社員がお互いに「対等な立場」から評価しあって決めた報酬です。

「Natura」ではフェアな報酬を決めるために、「360度評価の実施」と「全社員の評価のグレードを開示」することにしました。

制度の導入後は、全社員が自分のグレードだけでなく、他の社員のグレードもわかるようになっています。

また、安心な報酬というところで、ネットプロテクションズでは相場より高めの給与を設定しています。

半期の成果によって給与額が変動した際に、社員が不安を感じなくてもいいように、あらかじめベースの金額を高く設定することにしました。

ディベロップメントサポート面談の実施で社員の成長を支援

釣巻氏:3つ目のポイントとして、評価の主旨を「成長支援」へシフトしました。新制度の導入前は、半期に1度の評価面談で報酬額を決定していました。

しかし、「長い期間が空いてから評価されることに納得がいかない」といった社員からの声がありました。空いた期間の成長をもっと評価してほしいということなのでしょう。

そこで、社員の成長を日頃から支援することを目的とした「ディベロップメントサポート面談」の実施を決めました。

ディベロップメントサポート面談は月に一度、自分よりグレードが高い社員と1on1で面談をしていくというものです。

社員の成長支援が目的なので、面談では目標の振り返りや、成果に対するフィードバックをおこなうだけではありません。

キャリアの相談や仕事の悩み、家族の話など幅広い内容を聞き、社員がやりたいことを実現できるようなサポートをおこなっています。

面談の内容は記録していて、半期ごとにおこなわれる360度評価に紐づく仕組みになっています。

「Natura」を導入してから1年後に社員から上がった声

釣巻氏:「Natura」は2018年の4月に導入しましたが、約1年後の2019年6月に社員に対してアンケートを取りました。

新制度の導入によって組織がどう変わったのか」「社員はどう感じているのか」「本来の目的である組織の改善はできたのか」を測定することが目的です。

そのアンケートの結果を受けて、「360度評価」「ディベロップメントサポート面談」について良かった点と改善点が明らかになりました。

360度評価は、安心や自信につながるといった声があった

釣巻氏:360度評価については、面談を受けた側から「自分のやっていたことは間違っていなかったと安心した」「自分の仕事に自信を持てるようになった」といった前向きな声がありました。

一方で、「評価軸がよくわからず、偏った評価になっているように感じる」「社外での活動や関係者が多岐にわたる業務の成果が部分的にしか評価に反映されない」というネガティブな声もありました。

面談をおこなった側からは、「全社的にみんなで育成していこうという機運が高まった」「年次や役職問わず、評価を考えるきっかけになっている」といった前向きな声があがるとともに、「評価が報酬に結びついているとやりづらい」といったネガティブな声がありました。

ディベロップメントサポート面談は、業務内容の共有で終わってしまったとの声も

釣巻氏:ディベロップメントサポート面談については、面談を受けた側の声としては「自分の考えを整理でき、前向きになれる」「他社とのディスカッションを通して、自分の成長を定点観測できる」といったポジティブな声がありました。

しかし、「ただの業務共有になってしまっている」「面談できないことがあった」といった声もありました。

面談を実施している側は「キャリア、将来について話せる人が増えている」「評価とは離れた成長支援の場になっている」とポジティブな声があり、対して「表面的な話で終わってしまう」といった声もありました。

アンケートで見えた制度の課題

釣巻氏:評価について、安心や自信を持てるといった声があったことは良かったなと思いつつ、全員で評価をするための目線合わせが非常に難しいと思いました。

また、ディベロップメントサポート面談と360度評価を実施するなかで、評価者側の視点に偏りが生じている可能性があります。

評価者どうしで集まって、評価のバランスを調整する評価委員会がありますが、評価委員会が機能しきれていないのではないかと思います。

そして、「Natura」はスペシャリストにとっては不遇の制度かもしれないと思いました。

そもそも「スペシャリストとは何なのか?」という定義が曖昧であるために、評価できていない部分もあります。

こういった評価の基準や正当性の課題を解決するために、参考になる「事例」が少ないことがティール型組織の難しいところだなと思います。

アンケート結果を受けて変えていきたい今後

釣巻氏:今後は、評価基準の目線のすり合わせをおこなっていきたいです。人事から評価基準の定義を提示するのではなく、評価する側・評価される側での会話を増やしたり、社員アンケートを公開したりしていこうと考えています。

評価する側と評価される側が共通の情報を持っていて、評価しやすい状態になることが重要だと思うので、対話を大事にしていこうと思います。

また、社員の成長を支援する仕組みを改善したいです。特に、成長支援をよりリアルタイムにおこなう必要がありますね

今、成長支援の一環としてディベロップメントサポート面談をおこなっているものの、「それだけじゃ足りない」といった声が上がっています。そのため、面談の内容を変えてみようかと考えています。

ただ、「何をリアルタイムにおこなうか」にはいくつか種類があると感じています。たとえば、「仕事に対してすぐにフィードバックがほしい」「成果をすぐに報酬に紐付けたい」といった声がありました。

ディベロップメントサポート面談が社員の業務内容の共有で終わらずに、上手く活用されるような対策を取ろうと思います。

さらに、スペシャリストの評価について、自分の頑張りが評価されない状態は改善すべきです。たとえばブログラミングのスキルは、世の中にとっても会社にとっても価値あるスキルですが、360度評価で評価しにくいスキルでもあります。

そういった専門性の高いスキルを、多角的に評価していけるようになりたいです。

以上、私たちの組織風土と「Natura」の取り組み内容、アンケートの結果と今後の方針をお話しさせていただきました。ありがとうございました。

まとめ

ティール型組織を目指してさまざま取り組みを実践するネットプロテクションズ。今回紹介された人事評価制度「Natura」は、組織全体のレベルの底上げにつながる人事制度となるのではないでしょうか。

ティール型組織はまだ国内での事例が少ないそうですが、今後「Natura」のような革新的な制度によって増えていくかもしれません。

組織の課題を感じている人事担当者様の参考になりますと幸いです。

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