採用競争が激化しており、候補者から自社を認知・興味・理解して選んでもらうための手段として、採用広報が注目を集めています。
しかし、採用広報は「重要度は高いが、緊急度は低い」業務だと言われており、その必要性は理解しているものの、「なかなか本腰を入れて着手できていない」「そもそもどうやって良いのかわからない」という人事の方も多いのではないでしょうか。
そうした背景のもと、ホワイトプラス高見氏、ユニファ橋本氏が発起人となり企画されたのが『採用広報勉強会』。
定期的に各社の人事が集まり、採用広報における取り組み、悩み、課題を共有し、「採用広報力」ならびに「人事力」をつけることを目的としています。
今回は、採用広報勉強会の内容を取材させていただき、採用広報に関する細かいノウハウをまとめました!是非、ご覧ください。
- 株式会社ホワイトプラス:高見 唯樹
- ユニファ株式会社:橋本 祐造
- ユニファ株式会社:内藤 侑子
- 株式会社favy:高柳 麻由香
- 株式会社フーモア:大森 美奈
- 株式会社イデア・レコード:平岡 いづみ
- 株式会社アイスタイル:小坂 崇
目次
届けたい人に届けたいメッセージを送るには?
まずは、採用で「届けたい人に届けたいメッセージ届けられているかどうか」に関して議論していきたいと思います。
採用要件、採用基準を決めたら、採用のメッセージをつくっていく流れになると思います。では、それをどのように発信していくのか?
favyさんは「favicon」というオウンドメディアがあるじゃないですか。あちらは採用に活用されているのでしょうか。
「favicon」は、人事と広報で連携しながら情報を発信しており、採用関連のコンテンツが半分、残りは対クライアント、対ユーザー向けにプレスリリースやサービスの導入事例を紹介しています。
人事としては新しいプロダクトのリリースや、新メンバー加入のタイミングに合わせてプロダクト開発秘話や入社エントリーなどのコンテンツを作成しています。
その中で今、「Wantedlyとの棲み分け」をどうしようか悩んでいます。将来的にはfaviconを育てたいという思いがあり、Wantedlyにはすべての内容を掲載せずに、「詳しくはfaviconを見てください」という感じで、faviconへ誘導する形で載せています。
そうすると求職者の集客のメインはWantedlyなのですが、現状だとWantedlyのPVや応募者数が伸びないという問題が発生していて・・・。
その辺り、皆さんはどうしていますか?
「届けたい人にメッセージが伝わるかどうか」で考えると、両方に同じコンテンツを掲載しても良いと思いますけどね。Wantedlyからもう1回クリックするとなると、そこで離脱されてしまう気もしますね。
それぞれの媒体に全く別のコンテンツをつくっていくのは工数的にも辛いですよね。
一方で、各媒体に同じコンテンツを載せるとしても、記事の出し方を意識したほうが良いと思います。全く同じ内容だと「コピーコンテンツ扱い」となり、Googleでの検索順位が著しく落ちるペナルティがあるかもしれません。
Wantedly、オウンドメディア両方に注力したいけど、そこまでリソースがさけない。Wantedlyだけに注力するとオウンドメディアが育たない。いろいろ難しいですね。
統一感も意識しないといけないですよね。その中で数多くのコンテンツをつくっていくのは大変ですよね。
橋本さんは、ご自身で発信しているSNSメディアとWantedlyの使い分けなどはされていますか。
そこに関しては実は今、結構悩んでいます・・・。
その中で意識しているのは、ブログだけでなく、Wantedly、Facebook、twitterを活用して発信の仕方を変えていることですかね。
会社のFacebookやtwitterアカウントを育てるだけでなく、個人のアカウントも活用しています。
Facebookは日頃の活動に関する内容が多いです。自分の子どもの動画などもあげていて、たまに人事の話をするイメージです。twitterは人事の話がメインで、フォロワーも人事の方ばかりです。
一方、Wantedlyでは、自社の採用の話や自分の想い・スタンスなどを打ち出し、ブログでは自分が感じたことや経験したことを人事向けのノウハウとして落とし込んでいます。
日頃からそれぞれのプラットフォームごとに関係性をつくっていて、たまにFacebook上でWantedlyの記事をシェアすると拡散されたりしますね。
見る側からすると、コンテンツを見に行く目的も違いますよね。
たとえば、Wantedlyは他社と比較をしながらコンテンツを見られていると思うんです。「自分に合った会社はどこか」と探しているので、自社の情報が多く載っているコンテンツでも嫌ではないと思います。
ただ、Wantedly内では埋もれてしまう可能性もありますし、比較されることもあるので、わりとキャッチーに書いて興味を換気させる。同じ内容でも、出すメディアやSNSによって文章のテイストだけ変えるのはありかもしれませんね。
書くことは一緒でも、その媒体に合わせた書き方を意識するってことですね。
求職者からの応募率をあげるためには○○が効く
目的を「採用する」ということだけにするのであれば、Wantedlyに集約してもいいかもしれませんね。
Wantedlyだと、「こんなメンバーがいます」といった社員インタビューコンテンツが多くあると思います。
その中でユニファも同様のことをしても、埋もれてしまうと感じたので、違った角度のコンテンツ作成も心がけています。
たとえば、「ユニファはこういう面接をやります」といったコンテンツです。その戦略はわりと良かったと感じています。
実感値として、あらゆる採用経路で面接にくるのですが、ほとんどの方がWantedlyブログを見てきてくださってるんですよ。
「今日どんな面接されるのか楽しみに来たんですよ」って言われると、逆にプレッシャーなんですけどね(笑)。
私は、スカウトメールを送る際に、取材記事やWantedlyブログなど、読んでほしい記事のURLを記載して送っています。エージェントさんとのやりとりの中でも送っています。
エージェントさん向けには、しっかりと当社を理解していただきたいので、より詳細がわかる長めのコンテンツURLにしています。
一方、求職者の方からすると、長いとなかなか読んでくれないじゃないですか。なので、短くて軽めの内容のURLにしています。
たとえば、創業ストーリーに関する記事を送るとなると、カルチャーフィットの精査が事前にできるんです。そもそもカルチャーに合わないなと感じたり、興味・共感がなかったりすると選考したいと思いませんよね。
ちなみに、求職者の方に送るメール文面では、何かポイントはありますか?
一言でいうと“エモい”感じの内容にしています(笑)。簡潔でポップな明るい元気な文章ですね。転職活動している方から「どうせ、誰にでも同じこと書いてるんでしょ」と思われないように気をつけています。
そして、メールの文面は短くして、すぐURLにとんでもらうイメージです。「取材してもらいました。詳しくはこちらを見てください」って。第三者視点で語られている魅力を知ってもらうようにしています。
スカウト文面に「取材されてます」といったことを書くと、反応率が高いらしいです。逆に自分たちでがっつり書いてるWantedlyブログなどは、求職者の人にはあまり送らないようにしています。
動画も効果的だと思います。アルバイト募集をした際に、会社の場所が悪いのか、ものすごくドタキャン率が高いんですよ。半分以上でした。
それで、面接日程が確定したタイミングで、日程の連絡とともにサービスの紹介動画を送るようにしたんです。
文章は多分見ないので、Youtubeの非公開動画のURLを送って。そうすると、サービス動画はアットホームで心温まるものなので、動画を見ると気持ちが上がると。それでドタキャン率は改善されましたね。
今は求人があふれているので、Wantedly上でも、いかにして求人票を見てもらえるかを考える必要があります。
ほとんどの方はスマホでWantedlyを見ているらしいんですよ。だから、長すぎると読まないんです。
なので、「2スクロールで読めるまでにしてください」って言われました。「話を聞きたいボタン」が一番下なので、2回のスクロールでそこまで誘導できるくらいの分量にしてくださいと。
favyでは、直営店もあるのでアルバイトの方の採用も積極的におこなっていますが、そこの応募ページは申込みフォームだけなんです。スマホで見るならこういう感じでいいと思います。
また、どうやって認知してもらっているかでいうと、インスタグラムを活用しています。
たとえば、原宿のソフトクリーム専門店「coisof」のアルバイト求人は、インスタグラムで、「10代女性、バイトに興味があって、ソフトクリームが好きな女の子」と掲載すると、応募がたくさん来るんです。
しかもミスマッチが少なく、面談からの採用率が9割近いんです。採用単価でいくと2,000円くらいです。
今の若い世代の方であれば、文章よりは写真などで惹きつけて、応募してもらい、面談で会社のことを好きになってもらう。そういったやり方もこれから来るのではないかと思いますね。
スカウトメールは社長や事業責任者が打ったほうが圧倒的に返信率が高い
高柳さん、面談で会社のことを好きになってもらうって言ったじゃないですか。どのようなことをされてるんですか?
採用率を上げるために、当社は基本的に事業責任者が面談しています。たとえば、営業であれば営業責任者、社長室であれば社長が面談します。「責任者が会う」ってことは徹底してます。
アルバイト採用もですか。
そうです。店舗の場合は店長さんがやる場合もありますが、基本的には飲食事業部の責任者が会います。
ホワイトプラスも重要なポジションの採用では、代表が最初に会うことにしています。代表が会ってお互いの温度感が高ければ、「今日お会いしてみて、弊社で活躍できる可能性を感じたので、ぜひ選考を受けていただき、またもう1回会おうよ」と、次回につなげるようにしています。
「是非もう1回会いたいけど、それまでにはステップがあるから、そこをがんばって乗り越えてきてほしい」といったコミュニケーションをとります。
「一緒に頑張ろうぜ感」を出すんです。「質問があったらいつでも人事に連絡してくれていいよ」みたいな。
もし、候補者が仮に当社で採用が決まらなくても、「ホワイトプラスはいきなり代表が会ってくれた」と、プラスの印象を残すことができると思うんです。
スカウトメールは何か意識してされていますか?
2パターンあります。1つは代表や役員が直接メールを打つ場合。そうすると、返信率が圧倒的に高くなります。
ただし時間が取れない場合もあるので、その場合は、人事側である程度ひな型をつくって、最後に添削をしてもらっています。これが2パターン目です。
そして必ず、伝えたいメッセージをしっかり入れてもらうんです。事業への想いやその人に対して「あなたのここがいいと思いました」とか、「あなたのこのご経験から弊社で活躍できる可能性を感じました」とか。ほんのひと手間加えることで、候補者の方からの反応ががらっと変わるので、最初は驚きでした。
Wantedlyのスカウトメールの返信も、初回は事業責任者が送ったほうが返信率は高いですね。でも、圧倒的に返信率が高いのは代表ですね。
ただ、代表や事業責任者がメールを送ったのに、面接から採用担当者が引き継ぐと、「あれ?社長じゃないの?」と思われる可能性もあるため、そこの誤解だけはないように気をつけているポイントです。
私の場合は、Wantedlyで「話を聞きたい」を押してもらったら、必ずその人のFacebook、twitter、LinkedInなどの情報を全部チェックします。
その上で、「ここを見ました。こういう部分が良くて、これは共通項だと思っていています」といったことを実施したら、8割ぐらいの返信がきました。ものすごく大変ですが(笑)。
また、スカウトを打つ時間も意識しています。学生などの若手層を狙うのであれば週末が良くて。ビジネスマンであれば平日の夕方だと思います。
その中でも金曜日が狙い目だと感じていて、「今週終わったー」ってタイミングで、夜7時から9時の間にスカウトを打ったりしています。
フーモアは、「採用の振り返りのブログ」を毎月月初ぐらいに更新してWantedlyに出していて、でも、自分のFacebookでシェアしないとあまりPVが伸びない場合もあります。じゃあそのFacebookのシェアを何曜日の何時にするのがいいのかを考えたりしています。
それで、平岡さんと同様に「平日の夕方が良い」という結論になりました。また、そのときにコメントがつくじゃないですか。で、コメントの返信をすぐにしないで時間帯をずらすんです。
それ、わかります。最近特に意識するようにしています。
さらに後追いで、「○○に掲載もされました」と、どんどん投稿したFacebookに追加情報をあげていきます。そうすると、タイムラインに埋もれずに上位に出やすくなったりします。
社員から協力してもらう体制をつくるためには、結論「地道な努力」が欠かせない
社員みんなにシェアしてもらうために何か良い方法ってありますか?
やはり全員がシェアしてくれることで結果的にはPVが伸びて多くの人に情報が届きますが、会社の規模が大きくになるにつれて全員から拡散の協力を得るのは難しくなると感じます。
シェアしてもらう仕組みづくりは難しいですね。
平岡さんは、そのあたりすごく注力してやられてますよね。
私は、定期的に“祭り”を起こすことは意識しています。そのためにいろんな会社さんと組んで、「応援合戦」をしています。「今週の応援合戦はこちら」って共有して、拡散の完了報告を全員に求めていきます。
一時期はチーム戦にしていて、「あれ?まだあのチーム完了報告きていない」みたいな。
チーム制にして競わせるんですね。
そうです。結局そこから応援数があがるとPVもあがりますし、フォロワーも増えます。
社内のメンバーにどうやって協力してもらうんですか?
まずは、リーダーに協力してもらったのが大きかったと思います。
最初はすごく反発があったんです。そこから、リーダーが「こんなふうにやったら1分で終わる」って発信してくれたんです。「え、1分で終わるんだ」となり、そこからそのやり方で実施してくれるようになりました。
当社も毎週応援合戦をやっています。
私は、オンラインでのシェア依頼に加えて、全員のデスクまで行って「応援してくれましたか?」って聞いて、やってないければ「じゃあ、今やってください。3分で終わるので」って直接対面でお願いをしています。(笑)
そういうの大事ですよね。
最近だと、ピアボーナスの「Unipos(ユニポス)」ってあるじゃないですか。あのようなサービスと連携できるといいなと思っていて。「応援してくれた人ありがとう」と、ピアボーナスを支給するみたいな。
Uniposさんとの連携はいいですね。
私は、前職の話ですが、朝会が絶対あるので、そこで前に出ていって「はい、今から応援タイムです」と、やっていました。
みんな立ってるんですけど、「今URL送ったので、席についてパソコン開いてください」みたいな。
私は「応援タイムです」って全員のスケジュールを毎日押さえていました。ただ、最初は強制感もあったのか、結構反発もありました。
なので、社内外問わずシェアしたくなるような記事を考えて、月に1回ぐらいのペースであげるようにもしています。
たとえば、Wantedlyのユーザーは20代30代がほとんどなので、新卒~3年目の比較的若いメンバーのインタビュー記事を載せて、「あ、知ってる先輩だ」と、シェアしてもらう。
当社も応援合戦を週2日で実施したら、応援の数が増え、PVも増えて応募数も増えたんです。そして、そのことを全体集会で共有することを意識しています。
私も応援合戦を機に伸びたデータを集めて、応援合戦の際に、「前回、みなさんのおかげでこんなに伸びました」って伝えています。
「効果があるのか、わからないままやらされるのは嫌だ」と感じる方もいると思うので、しっかりと効果が出ていることを共有することは大事ですね。
やっぱり採用をうまくやってるところは、地道な積み重ねがありますね。
魅力的な求人票をつくるために「求人内容のABテスト」をする
「どのぐらいの期間で何記事あげる」といった計画はされていますか?
フィードのところは、面談数が多すぎて月1回になっちゃったんですけど、でも月に1回は必ずあげるようにしています。あと、求人記事は週2回のペースあげてました。同じ求人だけど、2つに分けるんです。
同じポジションの求人に対し、写真やタイトルだけ変えて、毎週2求人をあげていくんです。「ABテスト」をやっていくイメージです。
それを2週間実施して、結果の良かったほうだけを残す。中身の文章はまったく同じです。
写真とタイトルだけですか?
そうです。それで8割決まるらしいんですよ。なので楽しそうなテイストにするのか、ガチっぽく見せるのか。それがタイトルと写真とで違和感がないか。そんな感じでABテストをずっと繰り返してました。
当社はどちらがいいのか、画像とタイトルを変えた求人を同時に出して、それを少額ですがFacebookに広告掲載しています。
たとえば、500円で一晩だけ広告掲載して、クリック数と円数がより多いほうの求人を掲載していく。1日単位でやっています。
ちなみに、みなさんはフィードに出す記事で、何か参考にしているものってありますか?
福岡にあるIT企業の事例になりますが、自社に関することではなくて、福岡エリアに関する記事を書いているらしいです。「自分たちのオフィスのまわりにあるオススメランチ」とかみたいなイメージです。
そうすると、「福岡 ○○」などでGoogle検索すると、その記事が上位に出てくるんです。Wantedlyのユーザーではない人たちもリーチできるという。
地方エリアを攻めるときとか良さそうですね。Google検索で上位表示されそうなキーワードをテーマに記事をつくってるんですね。
今一度考えたい「採用広報施策を本当にやりきれているのか?」
今日はみなさん本当にいろんなことを考えながらやってるんだなと勉強になりました。やっぱりやりきらないとだめですね。何ごともやりきりたいなと思いました。
そうですね。「まだまだやらなきゃいけないことがいっぱいあるな」と思いました。
あとは、いかに社内の人に協力体制を整えられるかは重要ですね。広報面だけではなく、採用基準だったり、スカウトメール、求人票をつくるときだったり、社内の人にどこまで協力してもらえるかが大事だと、あらためて思いました
「やりきる」っていう言葉があったんですけど、個人的には別の言葉に言い換えたくて。やりきるって言うと、なんだか辛くないですか?
なので、「突き抜ける」と「誰よりも楽しむ」。私は、この2つの言葉を大事にしています。
人事の役割は、「そこにいることで周りが元気になる」ということもあるのではないでしょうか。
私は必ず年間に2回、全社員と面談をやるのですが、「今日話を聞いてもらってめっちゃ元気になりました。スッキリしました」といった感じで言ってもらえることこそが、人事の仕事かなと思っています。
人事はその名の通り、「人の事」に関わる仕事です。人の人生のサポートに携わっていて、会社の命運にかかることもやっています。それはものすごく素敵なことで、その瞬間に我々はいます。
その中で、自分が楽しむ、自分が一番わくわくどきどきしないと、周りを元気にさせられるわけがないし、もったいないなと思います。