2019年度の新卒採用が本格的に始まり、お忙しい日々を送られている人事の方も多いこの時期。
そして、2019年度の新卒採用と並行して考えなければならないのが、2020年度新卒採用インターンです。特に2020年度の新卒インターンは、昨年と比較した際に昨年よりも上回るペースですでに各社の準備が進んでいるようです。
そこで今回は、最新の新卒採用インターン状況とその打ち手についてご紹介します。
ネオキャリアで新卒採用コンサルタントに職に10年以上従事している、梅田貴央氏に、最新のインターン事情についてお伺いしました。是非、ご覧ください。
梅田 貴央 | 株式会社ネオキャリア 新卒採用インテグレーション/RPO事業部マネジャー
【目次】
数年前から話題のインターン。何故いま急速に浸透?
-新卒採用の早期化に伴い、インターンが注目されているのは数年前から変わらないように思いますが、今年は特にインターン実施に拍車がかかっていると聞きます。何故なのでしょうか?
梅田氏:過去3年間の新卒採用マーケットを振り返ると、広報開始と言われる3月以降の就職サイトにおける、1社ごとの学生のエントリー数が年々15%ずつ減少しています。
また、2018年度新卒採用の状況を見ると、内定率が過去最高の推移となり、4月時点で約1/4の学生が内定を保有している状況でした。
これは、インターン経由での内定出しが増加したためで、その結果として早期化かつ短期化となった1年だったように感じています。
[参照]マイナビ学生就職モニター調査
-ちょうど、経団連の指針変更があった2015年のタイミングから始まり、年々懸念されてきたことが顕在化していますね。
梅田氏:学生側の動きを見ると、全体活動量の85%が3月~4月に集中しています。
企業様と一緒に、私たちコンサルタントもさまざまなことを提案し試しましたが、学生が一斉に動き出す時期に何をおこなっても就職サイト上で埋もれてしまい効率が悪く、また費用をかけた割に見合う効果が得られなかったという状況でした。
そのため、もっと早い時期から学生と接触しようと、インターンの実施に踏み切っている企業様が増えています。
-具体的にはどのような「失敗ケース」が費用対効果の悪化につながったのでしょうか?
梅田氏:一概には言えませんが、学生の行動が一定時期に集中するのであれば、当然人事が対応しなければならない業務も3~4月に集中し負担も大きくなります。
それにも関わらず、あらゆるケースを想定した準備ができていなかったため、失敗につながってしまっていたケースが多いように思います。
例えば就職サイトのDMやスカウトのようなオプションです。普通に利用していても埋もれてしまいがちですが、ターゲット属性や配信タイミングを工夫せずに配信をしてしまっていました。
また、3月に毎日のように実施されるイベントへの参加もそうですね。連日開催されるため、そこで接触できた学生への再アプローチが後回しになってしまい、有効に活用できてないこともありました。
もちろん、企業様にとっては使わないよりも使ったほうが効果があることは間違いありません。価格に見合う効果を出すのが難しくなっているという印象です。
-それでも、インターンシップの実施に関しては、【手間がかかる】、【就業体験できるネタが無い】といった意見の企業も多く、そこまで浸透してこなかったように思います。
梅田氏:そうですね。ただ、学生のインターン参加状況やインターンからの採用率といったデータを見ると、人事としても着手せざるを得ないような状況です。
インターンシップ参加率と平均参加社数
[参照]マイナビ「2019年卒 マイナビ大学生広報活動開始前の活動調査」
[参照]マイナビ『 2018年卒 マイナビ大学生 広報活動開始前の活動調査 集計結果』
梅田氏:年々インターンの重要性は増しています。2018年度卒の学生で見ると、6割程度の学生がインターンに参加し、そのうち7割以上の学生がインターン参加企業の選考を受けています。
このことからも、いかにインターン実施が母集団形成に有効となっているのかがわかります。また、早期に内定が出ている学生ほど、その企業のインターンに参加している傾向があります。
[参照]マイナビ『2017年度新卒採用就職戦線総括』『2018年卒 マイナビ学生就職モニター調査 7月の活動状況』
多くの企業が本来のインターンを通して、企業名や業種・職種に関わらず、学生に興味を持ってもらうきっかけにしようという考え方が広がってきています。
実際、「就業体験を通した前倒しの説明会」のような位置付けで利用しているような企業も多いですね。
「採用」を目的にすると失敗する!?「インターン」実施にあたっての落とし穴
-インターン実施をするうえで、どんなことに気を付けなければならないのでしょうか?
梅田氏:3点あると思います。
1つ目は「採用を目的にしないこと」です。
採用を目的にしないと言うと語幣がありますが、重要なのは「母集団形成を目的にすること(より多くの学生へ自社認知を広げること)」なのです。
例えば、少人数でインターンを実施したほうが一人ひとりの満足度が高くなり、採用につながる確率も高いだろうということで、学生を5人だけインターンで受け入れたとします。
しかし、どれだけ内容が良かったとしても、5人全員が採用に至るとは限りません。
3月以降、各企業が自社の説明会にできるだけ多くの学生を動員しようとするのはなぜでしょうか?どれだけ説明会の内容が良かったとしても、5名参加して5名全員が入社を決意するとは限らないからです。
インターンも同様に、「質を生むための量」という考え方が必要です。「採用」を目的にしてしまい、インターンが失敗してしまう企業は多いものです。
インターンシップを採用できるかできないかの博打にするのではなく、年々厳しくなっている母集団形成を補うことを目的に置き、継続してインターンシップを実施することが大切です。
-確かに、「採用できるの?」ということを懸念してインターンを実施してこなかった企業様も多いように思います。
梅田氏:ですが、数だけ集めれば良いのかというとそうではありません。気を付けるべきポイントの2つ目は「参加者の満足度を上げること」です。
1つ目のポイントを抑えつつ、このポイントも抑えるのは難しいように思われるかもしれません。
当然、実施するインターン自体に大量の学生を動員するとなると、受け入れ側の負荷も大きくなり、個別の学生の満足度も下がってしまいがちです。
このジレンマの解消ために各社が実施しているのは、「インターン参加のための説明会の実施」です。
この説明会では、インターンシップに参加するためのオリエンテーションという位置づけですが、この説明会に多数の学生を動員して接点を増やし、実際の本番インターンの参加人数は、選考などを通して各社ある程度絞っています。
-なるほど、説明会でどれだけ惹きつけができるかも重要ですね。
梅田氏:夏のインターン説明会で本番に参加できなかった学生に対して、冬や春のインターン、さらには広報解禁後の自社説明会への案内をしている企業も少なくありません。
ただし、最近は学生のインターンシップのエントリー自体も、大幅に夏の時期に集中しています。
そこで3つ目のポイントは、「6月の頭からインターン広報を実施すること」です。年々、6月の1週目でインターンシップにエントリーする学生は増えている傾向にあります。
-時期を逃すと何をやっても効率が下がってしまうということですね。
梅田氏:はい。インフルエンサーとなるような優秀な学生に自社を知ってもらい、周囲の友人に広めてもらえるかという意味でも時期が重要です。
そうしたことが約3年かけて各企業にも浸透し、2020年度卒のインターンシップは、例年以上に前倒しでの準備が各社で進んでいるのだと思われます。
【まとめ】インターン実施に向けた準備と差別化のためのチェックポイント
-それだけ各社のインターン実施が増えてくるとなると、埋もれてしまう企業様も多いのではないでしょうか?
梅田氏:そうですね。ただ、やり方次第では、学生からの認知度が低い企業様にも勝ち目があるのがインターンです。
なぜなら、学生はインターン期間であれば、業界や職種を問わず、インターンの中身でエントリー企業を選ぶからです。
逆に、広報解禁となる3月以降は、どうしても学生は志望業界の有名大手企業にエントリーしていく傾向があります。
「就職」という軸ですでに企業を見ているので、学生が知らないような会社や業界は発見してもらう術がありません。
その点、インターンシップは知名度や業界ではなく、どれだけ多数の学生が興味を持ってくれそうなコンテンツを用意できるかで勝負ができます。
採用をマーケティングと捉え、「ユーザーが自社に興味を持つ理由は何か?」を考え、なければ創るという姿勢が重要です。
-採用にも広報・コンテンツマーケティング的な考え方が必要な時代ですね。
梅田氏:はい。これまでは私たち採用コンサルタントが提案するツールのうち、どれを選ぶかだけを考えていれば良かった採用担当の仕事は時代遅れで、もう一段階踏み込まなければ差別化できない時代になっています。
どこの会社も就職サイトを使っていて、説明会をやっているのが当たり前になっている。そうなれば、どういうネタを準備してどこで仕掛ければ興味を持ってもらえるのかを、もっと踏み込んで考えなければ勝ち残って行けません。
私たち採用コンサルタントにもそこが求められているとつくづく感じますね。採用担当者が皆知っているようなツールをただ提供するだけでは、見向きもされなくなってきていると思います(笑)。
今後は、そうした採用のコンテンツ設計やブランディングの場面においてこそ、私たちが貢献していかねばなりません。もっとより深く採用担当者様に寄り添って、ニ人三脚で採用をつくりあげていく必要がありますね。
-たしかに、採用コンサルタントに求められるものも変わってきてますね。他には気をつけることはありますか?
梅田氏:6月からインターンを実施するとなると、まだまだ2019年度の新卒採用も真っ最中という企業様も多いのが実態です。そんな中でもしっかりと一人ひとりの学生と向き合えるように、人事の業務効率化も考えておいたほうが良いでしょう。
-具体的に、他社ではどのようなことを実施しているケースが多いですか?
梅田氏:実際、ネオキャリアがおこなっている採用アウトソーシングサービスを、インターン期間に利用したいというお問合せが急増しています。
採用担当者様には、学生と直接会って話しをするといったコア業務に集中してもらい、それ以外の日程調整やデータ入力・更新作業などを採用に特化したアウトソーシングサービス企業に任せるやり方です。
派遣スタッフなどの活用と違い、教育の手間が無いプロが即対応できる部分が喜ばれていますね。
業務効率化のもう1つの方法は、システムで業務効率化するやり方です。
採用アウトソーシングサービスは人手を使っているためカスタマイズが利き、かゆいところに手が届くというメリットがある一方、人力であるが故にミスなどが無いオペレーションをきちんと組めるかどうかの見極めが必要になります。
アプリや採用管理システムを利用して、学生への連絡業務や進捗管理を自動化できる方法を取る企業も増えています。
ー母集団形成に必須のインターン実施。2019年卒の採用も並行する企業様も多いと思うので、業務効率化を図り、実施に工数を割けるようにしていくことが必要ですね。ありがとうございました。
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