こんにちは、HR NOTE編集部の入江です。
人工知能、ビッグデータ、IoT、VRなど、テクノロジーの発達によって私たちの住む世界は大きく変化しようとしています。
そして、このテクノロジーの波はHR領域にも押し寄せています。
今回は、世界最大のビジネス誌を発行するForbes社が予測した5つのトレンドを参考に、今後のHRTechにどんな流れが押し寄せるのか、人事担当者だけでなく多くのビジネスマンが知っておきたい、HR領域の変化を紹介します。
目次
1. HR techとは?
そもそもHR techとは、HRとtechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語であり、採用や勤怠などの人事業務に対し、テクノロジーを用いて簡略化しようという趣旨のものです。
採用系のサービスであるTalentioや、勤怠管理システムのジンジャーなど、さまざまなHRTechサービスがリリースされています。
また、テクノロジーが発展した今日、「〇〇×tech」を組み合わせた言葉はさまざまな業界で使われています。
金融業界では「FinTech」、保険業界では「InsurTech」、不動産業界では「ReTech」など、もはやTechという言葉を組み合わせることができない業界がないほどです。
2. HR techにおける5つのトレンドとそのスタートアップ
今後、HR tech業界においては、大きく分けて5つのトレンドがくるだろうとForbes社は予測しています。
今日働き方改革でもいわれているように、さまざまな場所で「働く」ことに対する価値観が大きく変容しているのではないでしょうか。
ここでは、今後HR techにおこるトレンドを、その流れをけん引する世界各国のスタートアップ企業とともに紹介します。
HR techトレンド①:潜在転職者へのアプローチが可能に
SHARPやパナソニックといった大企業もその存立が危うくなっている今日、これまでの年功序列型で企業に依存した就業スタイルとは異なり、「個のスキル」に価値を置いて自身のキャリアを捉えようとしているビジネスマンが増えてきています。
転職に対する価値観も変容しており、キャリアアップとして転職を捉えている人も多いです。
総務省統計局の調査によると、転職者数は年々増加しており、転職に対するニーズは徐々に高まっていることが読み取れます。
これまでの転職は?
これまで転職の際は、転職のためのフリーペーパーから申し込んだり、転職サイトから申し込んだりするしか方法がありませんでした。
企業側としても優秀な人材を雇うためにヘッドハンティングしたい場合は、リファラルをおこなうか、または優秀な人材が転職サイトを通じて自社の選考に申し込むのを待つばかりでした。
ただ、近年はビッグデータの分析やAIの進出などによって潜在転職者の発掘が容易になっており、これまでのプル型からプッシュ型の転職サービス展開が可能になっています。
SNSを通じてヘッドハンティングをおこなったり、WantedlyのようなビジネスSNSサービスを通じたりと、さまざまな角度や視点から転職がおこなわれています。
今後もAIやビッグデータを駆使して、潜在転職者をより多く発掘するためのサービスや潜在転職者がさらに転職しやすくなるようなサービスがリリースされるでしょう。
GRID~新型採用プラットフォーム~
GRID社は、インターネット上にある個人のデータを分析し、個人データからわかる相性のいい企業があった場合にその候補者を企業に紹介する新型採用プラットフォームを展開しています。
現代人はSNSやブログなど、さまざまな場所で発言をおこなっており、その発言内容や意思表示を分析することで候補者の特性を把握し、企業とのマッチングにつなげています。
これまでの転職市場とは異なり、プッシュ型のアプローチができるため、より労働市場が活性化する契機になるのではないでしょうか。
HR techトレンド②:リモートワークが可能になるか
IT化の発展にともなって通信設備も拡大し、今やいたるところにWi-fiが通っている時代です。
パソコン1つあれば、どこでも仕事ができる今日、カフェや自宅で仕事をするリモートワークが注目を浴びています。
現にアメリカではリモート―ワークを経験したことがある社会人が、この20年間で4倍の37%に伸びており、リモートワークへの注目は高まっています。
採用にも好影響
また、リモートワークが可能になったおかげで採用面にも良い影響を与えられます。
これまで優秀な人材を雇う際は、通勤圏内に住んでいる人もしくは物理的に通える距離まで引っ越してもらう必要がありました。
しかしリモートワークが可能になった今日、もはやわざわざ従業員にオフィスに通ってもらう必要がないため、世界中から優秀な人材を雇うことが可能になりました。
今後もVRやARの導入などによって、リモートワークという働き方への需要はますます高まるでしょう。
DORA~VRによるリモートワーク実現へ~
ペンシルヴェニア大学の学生たちが作ったロボットDORAは、連携したVRヘッドセットをつけている人間と同じ動きをします。
例えば、オフィスの自分の席にDORAを置き、家で連携させたVRを見ると、画面を通じて横に座っている同僚や奥に座っている社長を見ることができます。
またDORAには足もあるので、会議がある際には実際にオフィス内を歩くように自分も家の中を歩き、会議室に入ることで普段通り会議に参加することができます。
まだロボット自体も完全ではなく、VRの質も低いようですが、今後はオフィスにいるのはロボットだけということもあり得るかもしれません。
HR techトレンド③:偏見をなくすための採用のブラックボックス化
2017年、シリコンバレーのテクノロジー業界では、職場での差別があるのではないかと不満の声があがっていました。
実際、採用する際の手法は面接官の経験にもとづく属人的なものであったり、人種・性別・年齢・学歴などで判断されたりと、採用基準が明確でないこともありました。
そんな中で、「人が採用をする限り、無意識レベルでも偏見が混じってしまう。ならばテクノロジーの力を借りて採用活動をおこなおう!」という趣旨のもとBlind hiring(採用のブラックボックス化)に注目が集まりました。
Blind hiring(採用のブラックボックス化)
人が採用する以上、無意識的にも何かしらの偏見が混じってしまう可能性があります。
成果や能力に基づいて客観的に判断するためにも、AIやビッグデータといったテクノロジーを用いることが鍵になってきます。
AIなどのテクノロジーが採用候補者のデータを抽出し、その人の成果や能力に基づいて判断する仕組みをつくることによって良い意味でブラックボックス化し、より公平に採用活動をおこなうべく研究開発しているようです。
Nottx~偏見をなくした新型の採用プラットフォームの構築へ~
イギリスのスタートアップNottxは、公平な採用を実現するために候補者のプロフィール情報を隠した採用プラットフォームをリリースしています。
Nottxでは、候補者の個人情報は匿名化され、自己PR文やこれまでの成果、能力のみに基づいて採用可否の判断がされます。
また、このサイト上では仕事と求職者を結びつけるマッチングの仕組みは備わっておらず、企業側が自らコンタクトをとるまで求職者には連絡がいきません。
そのため完全に実力主義に基づいた採用手法を推進しており、言い換えるならばこれまでの結果で評価される仕組みを作っています。
HR techトレンド④:ゲーミフィケーション
ゲーミフィケーション(Gamification)とは、ゲームをビジネスの世界に持ち込み、ゲーム感覚で仕事に取り組む環境を作ることで成果をあげようとする仕組みのことです。
この考え方はあらゆる業界であらゆる業種において導入されており、さまざまなサービスがリリースされています。
ゲームをしながら、もしくはゲーム感覚で仕事に取り組めることで仕事に対するモチベーションが上がり、ひいては成果の向上につながるようです。
さまざまな業種に広がるゲーミフィケーション
採用、経理、営業など職種を問わずあらゆる業種にこのゲーミフィケーションが導入されています。
従業員の働くモチベーションを向上させ、より良い成果を出してもらうためにさまざまな切り口からいろいろなアイデアがゲームとしてリリースされています。
アメリカ軍が兵隊を募集するために「U.S.Army」というゲームをリリースしたり、日本にも「Progate」というプログラミングをゲーム感覚で学べるサイトがあったりと「楽しく成果を上げる」仕組みに力を入れている企業が多いようです。
ChoreWars~ゲーム感覚でのタスク管理ツール~
ChoreWarsはゲーム感覚でタスク管理・消化をできるツールです。
もともとは毎日の家事(洗濯や掃除など)をより楽しくおこなうために、家事業務の管理をゲーム化してリリースされたものですが、今はカスタマイズ次第では仕事上のタスクにも応用できます。
ChoreWarsでは、タスクとそのタスクを完了すると得られる能力(攻撃力や守備力など)を入力して設定します。
タスクを完了すればするほど自分で設定したキャラクターの能力が上がって強くなります。
最初は「ただの魔法使い」の設定ですが、徐々に強くなっていくようです。
このように、日々のタスクを楽しみながらこなし、成長したキャラクターをチームのメンバーと比較したりすることでより高いモチベーションの醸成へとつながるのではないでしょうか。
HR techトレンド⑤:Future-proofing employees(AIに職種されない仕事についている従業員)
最後にあげられたHR業界のトレンドは「Future-proofing employees」(=AIが進出してきた後もなくならない業種につく人や、AIを使う側に回れるほどの高い能力やスキルを持った従業員のこと)に関するものです。
来るべき人工知能の時代において、Future-proofing employeesをいかにして発掘するか、どう配置するかが、多くの人事にとって悩みの種になっています。
未だ解は見つからず
ほとんどの企業の人事は、今のうちにFuture-proofing employeesを一人でも多く雇用し、育成しておきたいと考えています。
しかし、そもそもAIがどのレベルまで進化するのか、人知を超えるほどになるのかどうかがまだ不明瞭であり、AIが進出した後の世界がまだ明らかでないのが現状です。
そういった中でどの仕事が生き残り、どの仕事が搾取されるのか、という問いに対する共通認識的な絶対解は存在していません。
今後さらにAIを含めたテクノロジーが発達し、徐々にAIの全貌が明らかになっていくにつれて、Future-proofing employees を一人でも多く育成できるようなサービスが少しずつリリースされるかもしれません。
3. おわりに
いかがでしょうか。
さまざまなテクノロジーが発達している今日、HR業界にも新たな風が流れています。
採用、勤怠管理、労務管理などさまざまな人事業務が便利になるにつれて、Future-proofing employeesのような課題も生まれてくるかもしれません。
参考:The 2018 Human Resources Trends To Keep On Your Radar|Forbes