株式会社リフカムが主催する「リファラル採用」の成功事例を紹介する「リファラル採用成功事例セミナー」。
今回のセミナーでは、株式会社リフカム・株式会社すかいらーくホールディングス(以下すかいらーく)の2社が登壇。
リフカムでは、リファラル採用を始める上で、「インセンティブについて考えない」「データを軸にしっかりと施策を立てる」「求職者にリアルな情報を提供する」の3つのポイントについてお話されていました。
すかいらーくでは、5年前からリファラル採用に取り組んでおり、1年目は数名だった採用人数が、5年目で7,000名採用ができたとのこと。また、リファラル採用に取り組む中で、会社の新しい魅力と課題を発見でき、より良い会社を目指し改善が進んでいるようです。
本記事では、リフカムとすかいらーくのセミナー内容の詳細を記事にまとめました。
「インセンティブは後回しで良い」リファラル採用を成功させる3つのポイント
まずはじめに、株式会社リフカムの小山氏より「リファラル採用に注力するべき理由」と「リファラル採用を成功させる方法」について、講演しました。
【登壇者紹介】小山 剛史 | 株式会社リフカム カスタマーサクセス部 部長
株式会社チェッカーサポートにて採用部門責任者を務め、主要アルバイト求人サイト・SEMを駆使し年間30,000応募を獲得。新卒採用・中途採用領域にも精通している。 「Refcome」をユーザーとして利用している中で、リフカムの社風や魅力的な仲間に惹かれ、2017年6月より株式会社リフカムに参画。「リファラル採用」で採用領域のアップデートにチャレンジしている。
前年比で検索数が4倍に。リファラル採用はなぜ注目されるのか?
小山氏:リファラル採用を簡単にご説明させていただきますと、友人紹介採用です。アルバイト採用であれば、現在勤務されているパート・アルバイトの方が、お友達に「一緒に働かない?」と声をかけて採用する手法です。
リファラル採用の認知度は年々増加してきており、前年対比で「リファラル採用」というキーワードの検索回数は約4倍になっています。「リファラル採用って聞いたことあるな」「実際どんなものなのかな」といった疑問を持って検索される方が多く、認知度がどんどん上がっています。
リファラル採用が注目されている背景の一つは、採用応募数の減少です。
今ある、主要の求人サイトには、約200万件の求人情報が掲載されています。3年前は約130万件でしたので、年々求人情報数が伸びており、競争が激化していることがわかります。
競争が激化すると、一社あたりの採用応募数が減ります。その結果、採用人数が減少します。
求人サイトで人が採用できなくなっているため、新しい採用手法を取り入れようという動きが高まっているのです。
また、二つめの背景として、情報量が増えたことで、求職者がどの情報を選定すればいいのかわからなくなってきていることもあります。
そこで今、求職者の間で重要視されているのが、知人から得られる情報です。
例えば、重要な決断をする際に、初めて会う人から「これいいですよ」と勧められるよりも、普段一緒に働いている同僚から勧められるほうが、信用度は高いですよね。つながりがあるからこそ、情報を信じることができるのです。
リファラル採用も同様に、知り合いから勧められることで職場に関する情報の信用度が高まり、「この職場で働いてみようかな」と思えるんですね。
企業は今の採用手法のみでは人を採用できにくくなっているため、新しい採用手法を求めています。また、求職者は信用度の高い求人情報を求めています。そのため、リファラル採用が注目されているのだと思います。
リファラル採用の成功の秘訣は「始め方」で決まる
小山氏:リファラル採用を始める際には、3つのポイントを押さえると成功につながりやすいでしょう。
一つ目は、リファラル採用を始めてすぐに「インセンティブについて考えない」こと。インセンティブは、ないよりはあったほうがいいですが、考えるのはリファラル採用の体制が整ってからでいいと思います。
実際に、従業員から知人の紹介が少ない理由はインセンティブではありません。
正社員の立場でいうと、インセンティブが5万円だから友達を紹介しない、10万円だったらするということはないはずです。金額だけで設計するのは非常に危ないです。
二つ目は「データを軸にしっかりと施策を立てる」こと。何も見えないなかで道を歩くより、「右には崖があって左は山だな」といった情報がある程度わかった上で、「どの道を進めばゴールに近いのか」を明確にしましょう。
例えば、「年間で採用している人数」「1ヶ月以内に離職している人数」など、集めたデータから自社の具体的な採用課題を把握しましょう。その上で、採用数や定着率などの目標を設定します。
「データを計測し、課題を洗い出し、目標を設定する」というように、一つずつ確実に進んでいくと、リファラル採用の成功が近づくでしょう。
三つ目は「求職者にリアルな情報を提供する」こと。求職者は信頼できる情報を求めています。「きれいに飾られたアットホームな職場です」といった情報ではなく、本当にリアルな情報を求めているのです。
例えば、「アルバイト同士の仲が良くて、先月もみんなで飲み会をしたよ!」といった生の声です。
リファラル採用を始める際は、友人には職場のリアルを伝えることを従業員に認識してもらうことが重要です。
リファラル採用に取り組んで、知らなかった会社の姿が見えた|すかいらーくの事例紹介
すかいらーくの杉原氏、千石氏より、「リファラル採用を始めた背景」「浸透していった経緯」「取り組みによる成果」について、お話しいただきました。
【登壇者紹介】杉原 康仁 | 株式会社すかいらーくホールディングス すかいらーく人財本部人財採用研修グループディレクター
大学生の時に、バーミヤンでアルバイトをしたことがきっかけで、株式会社バーミヤン(当時)へ入社。入社動機は「1日も早く店舗運営できる責任者になりたかったから」という。以降、マネジャー、エリアマネジャー、営業部長の営業ラインを経験。その後は人事部門で組織開発、研修、採用を経て現職。
【登壇者紹介】千石 友明 | 株式会社すかいらーくホールディングス すかいらーく人財本部クルー人事採用チーム
すかいらーくのアルバイト採用で主に企画を担当。リファラル採用の企画・運用に携わる。株式会社バーミヤン(当時)へ入社。バーミヤンで営業部門、新業態マネジャー、人事では中途採用担当を歴任し現職。企画はもちろん、店舗経験からなる企画展開方法に現職邁進中。
「求人サイトに掲載しても応募が来なかった」すかいらーくがリファラル採用を始めた理由
杉原氏:我々すかいらーくはフードサービスの事業全般をおこなっています。規模でいうと、グループ全体の社員数は6,283名で、アルバイトの数を含めると10万人を超える組織となっています。
アルバイトの方々ですが、卒業や転居などの関係で毎年年間5万人採用する必要があります。しかし、日本では少子高齢化が進んでおり、2020年までに労働人口は340万人減少するといわれています。
一方で、先ほど小山さんからもお話があったように、求人情報の数は5年で4倍になっています。つまり、求人数に対する応募の数が4分の1に減ったということでもあり、求人サイトに掲載してもなかなかアルバイトを採用することができない状況になっているのです。
こういった背景から、我々はリファラル採用に取り組み始めました。最初は、全店8,000人のスタッフに向けて発信したメッセージに対しての応募数は数名でした。
そこで、「リファラル採用を成功させるためには、どうしたらいいのか」をリフカムさんに相談させていただきました。その上で「情報発信」「表彰」「社内キャンペーン」という3つの施策をおこないました。
リファラル採用を推進するには地道な活動が必要。社内に浸透させていった経緯とは
千石氏:2015年から友人紹介が伸びていくきっかけとなったのが、社長による情報発信です。
年に1~2回おこなっている合同マネジャー会議・基本方針発表会で「会社として友人紹介・リファラル採用を推進する」ことを発信しました。
次に取った行動が、表彰です。合同マネジャー会議では、売上や利益、QSCにおいて成績の良い店舗のマネジャーを表彰していますが、その中でリファラル採用での紹介率が高い店舗のマネジャーも表彰しています。
さらに、友人紹介の数が多い店舗や定着率が高い店舗をまとめて社内で競ってもらったり、リファラル採用の成功事例を店舗から出してもらったりと、さまざまな取り組みをおこないました。
こういった取り組みの周知や成果の報告は、社内報やポスターでおこなっています。
また、好評だったのが「感謝状」です。多くの友人を紹介してくれた人には、すかいらーくレストランツの社長から「紹介してくれてありがとう。入社してくれてありがとう」という内容のメッセージカードが届きます。
普段なかなか社長からメッセージが届くことはありませんので、現場から好評の声をいただいております。
また、リファラル採用を推進させる施策の一環として、リファラル採用のノウハウ集もつくりました。
「働いているクルーに対してこういう声掛けをすれば友人紹介が促進するかもしれません」「友人にはこういう福利厚生・仕事の内容・従業員の声を伝えてください」といったノウハウをまとめて店舗に配布しました。
これらの具体的な施策は、人事として地道におこなっていきました。リファラル採用の事例を集める際は、営業の会議に参加したり、現場の社員にヒアリングしたりと、自ら動いて情報を集めています。
人事は、営業部会議・営業マネジャー会議・マネジャー会議とさまざまな会議に参加しています。会議に参加するときには、事前に情報を調べ、例えば友人紹介が多いエリアであれば、「なぜこのエリアで紹介が多いのかを解き明かす」といった目的意識を持って参加しています。
リファラル採用を成功させることで、会社の魅力と課題を発見できた。
杉原氏:最後に、この5年間の取り組みの成果についてお伝えします。リファラル採用を始めて最初は数名だった紹介数は、5年後の今では、年間で約7,000名まで増えました。
多くの方がすかいらーくに入社いただけて、本当にありがたいと思っております。
そして、5年間リファラル採用に取り組んだ成果として、リファラル採用のメリットが見えてきました。
リファラル採用をおこなったことで、会社・店舗にマッチングする人財が採用でき、定着率が高まりました。
リファラル紹介と通常の採用とを比べると、特に初期の離職率にかなり差が出ます。2017年と2018年の入社者を対象にして在籍率を測った結果、定着率に大きく違いがありました。
また、会社の魅力と課題を把握しやすくなったこともメリットのひとつです。
例えば、ある店舗のマネジャーが「友人を紹介してよ」とお願いをしても、アルバイトの方が「このお店には友人を紹介するのは難しいな…」と感じてしまうと、採用にはつながりません。採用を成功させることは、店舗ごとの課題を改善していく動きにもつながるんです。
最後に
インセンティブを出せば、リファラル採用が成功するわけではありません。もし、それで採用が成功しても、定着率は低くなるのではないでしょうか。リファラル採用を活発にするには、「この会社を紹介したい!」と思わせるように、企業を改善していく必要があります。
その成功例がすかいらーくで、人事が現場の社員一人ひとりにヒアリングし、何を改善すれば良いのかを明確にして、改善をおこなってきました。
結果、年間7,000人のリファラル採用に成功しています。
リファラル採用に取り組むことで、良い組織を作ることができるのではないでしょうか。