企業にとってITやテクノロジーが切り離せない時代になってきている中、採用担当者の頭を悩ませるのが『エンジニア採用』ではないでしょうか。
長年の採用経験がある担当者様でも、日々更新されていくエンジニアスキルを見極めて採用することは至難の業だと思います。
本記事では、プログラミングスキルを可視化するツール『codecheck』を提供している株式会社ギブリーが主催する、人事がエンジニアの採用を成功させるためのノウハウが詰まったイベント『エンジニアと人事がコラボするための各社の取り組みの裏側【Code Summit vol.002】』の内容をご紹介します。
当イベントでは、現場のエンジニアが人事の役割を一部担う「人事エンジニア」として、人事と手を組みながらエンジニア採用活動をおこなっている、株式会社オロの人事エンジニア 黒河氏が登壇されており、株式会社ギブリーの取締役 新田氏とエンジニア即戦力採用のナレッジを、エンジニア目線で語るといったトークセッションがおこなわれました。
「エンジニアは協力的だが、エンジニアに工数をかけすぎてしまわないか心配」「そもそもエンジニアにどういうお願いをしたら人事部に巻き込めるかわからない」など、エンジニア採用に関する課題を感じられている採用担当者様にとって参考となれば幸いです。
黒河 俊樹(くろかわ としき) | 株式会社オロ コミュニケーションデザイン事業本部 クリエイティブグループ ソフトエンジニア
2011年1月にオロに入社後、ビジネスソリューション事業部に領域配属。その後、開発・研究開発チームを経て、現在のコミュニケーションデザイン事業部に配属。フロントエンド、バックエンド、サーバーインフラなど、領域を問わずに対応が可能。15採用までは面接・採用イベントに参画をし、16採用から1次面接、17採用から2時面接官として採用に参画をしている。
新田 章太(にった しょうた) | 株式会社ギブリー 取締役
2012年3月に筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻卒業。 プログラミングスキル可視化ツール「codecheck」やオンラインプログラミング学習サービス「CODEPREP」といったエンジニアの成長支援事業の統括、及び自社サービスプロダクト推進室の責任者として活動をしている。
目次
採用目標人数を超えても「いい人を採用する」のが最終目標
黒河氏:オロのエンジニア採用は最終面接前の他社内定による内定辞退などが多く「選考スピード」「魅力づけ」といったクロージングの部分に課題を感じていました。
この課題感を解決するためには、学生に対してマス的にアプローチするよりかは、学生一人ひとりにフォーカスをして「早期接触、早めの魅力づけ、選考スピード、クロージング」といった点を強化しています。
また、選考の早い段階でスキルチェックをおこない、開発の技術力が高い学生にフォーカスをして採用を進めています。
新田氏:技術力が高いといったように、「個」にフォーカスしすぎると、エンジニアは人数が少なく売り手市場といわれている中で「採用目標数にいたらないんじゃないか?」という懸念があると思うんですが。
黒河氏:そこの懸念は、永久に消えないですね。
しかし、うちの会社では、「5万人の世界企業を目指そう」という方針があります。長期的な視点で一緒にこの企業を大きくしていきたいと思って働いていただける人じゃないと、互いに幸せにならないので、採用しないようにしています。なので、きちんとスキルチェックを受けた上で技術ベースを突破した学生にのみ、時間を費やしています。
なので、目標数を採用するというよりは「いい人を採用する」というのが、最終的な目的だと思っています。なので、逆に目標数を超えていても、いい人がいたら採用しようと思っています。
スキルチェックを活用した早期の「囲い込み」と「魅力づけ」
新田氏:開発の技術力が高い学生にフォーカスをしているとのことですが、そのスキルチェックの際に「codecheck」を活用していただいていると思います。どのように採用で活用しているのでしょうか。
黒河氏:学生がエントリーをする際に、エントリーシートとあわせて「codecheck」を実施しています。また、会社説明会に参加していただいた学生においては、その場で最長1時間ぐらいの問題を解いてもらっています。
ここで一定のスコアを出す人は、次の一次選考に進んでいただいています。面白いのは、スコアを分析していくと「一次は通っても、二次は通らない」という採用ラインが見えてくるんです。また、「codecheck」はすぐに、リアルタイムで結果が出るので、ハイスコアの学生がいたら、その場から「囲い込み」を始めています。
そのあと、一次選考の際にも「codecheck」を実施しています。そこでは、ちょっと問題の形式を変えて、ガッツリとプログラミングを書くような問題にしています。
その後の社長面接においては、高いスコアが出ている学生を社長はほぼ落とさないんですよね。なので、高いスコアをとっている人であれば、面接のときには「社長面接は絶対に通るだろう」という自信があるので、面接の後半から企業の魅力づけをするようにしています。
新田氏:「codecheck」を活用することによって、求職者ごとに優先順位をつけた対応ができるということなのでしょうか?
黒河氏:そうですね。簡単に言ったら、最初のスキルチェックの時点で、最終的に内定をもらえるであろう人がだいたい見えてくるので、優先順位をつけながら積極的に早期から呼び込みと魅力づけをして選考のスピードを上げています。
見極めるのは『スキルを身につけるスキル』があるかどうか
新田氏:codecheckを活用して見極めをおこなう際はどこまでの技術力を見極めているのでしょうか?
黒河氏:そうですね。codecheckがウェブサービスなので受験者全員がネットを使える状態であると思うんです。今の時代、わからないことはGoogleで調べた結果のほうが、「本」などで得た既存の知識よりも新しい情報なんです。
コードを書く問題よりも、知識を問う問題にすることで、わからないことを自分で調べて自分なりの解釈をして「正しい答えを導き出す」事ができる人を見極めています。技術力の高いエンジニアには、この「スキルを身につけるスキル」ができている人が非常に多いので、その特性を活かして、コードを書くよりも、知識を問う問題を出しています。
ある程度、このようなサイクルができる人だったら、わからないことが出てきても、ググって、自分なりの解釈をして、どう答えるのが正解だろうっていうことができるんですよね。
新田氏:いわゆる、SPIのような選択式で調べることができない試験とは違い、調べて自己解決するっていうことを見越した上で問題を出されているということですね。
黒河氏:そうですね。わからなかったら調べてみて、自分が解釈した答えを出す「スキルを身につけるスキル」っていうのは、エンジニア問わず、ビジネスマンとして問題解決の基礎能力ではあるかなと思っています。
新田氏:ということは、勉強の仕方とか、調べ方といった、成長力みたいなところを、見極めているような感じですね。
黒河氏:オロでは「できないことは、なんとかして解決したいエンジニア」が、最終的にいろんなことができる人材だと考えています。「スキルを身につけるスキル」というのは、「自分で解決しようとするか?」わからないことを調べてでも理解しようとするんです。自分の限界を決めていないっていうところですね。チャレンジ精神旺盛でとか、いろんな言葉があると思うんですが、自分のてっぺんを決めていない人が成長していくのではないかと思っています。
採用における、人事と現場エンジニアの役割分担
新田氏:人事と現場エンジニアのあるべき役割分担についてなんですが、黒河さんは実際に、人事とエンジニアで、どういった役割分担をされているのでしょうか。
社員全員からも「オロのエンジニアはすごい」と思われるようなチームをつくるために
黒河氏:まずは、人事とエンジニアを問わず、採用活動の中では、まず「企業の魅力づけ」をきちんとしていく必要があると思っています。何故かと言うと、冒頭でもお伝えしましたが、クロージングに課題感があったためです。
その上で人事には、「エンジニアである前に、同じ企業に勤める仲間としてどうか」「エンジニアから見て、エンジニアの仲間として迎え入れられるかどうか」の2つをチェックしてもらっています。
弊社の人事はもともと、事業部の営業経験者が担当するケースが多く、過去に仕事としてエンジニアと関わったことがある人が多いんです。なので、人事目線でこの人がオロのエンジニアとして一緒に仕事ができるかということは、充分に判断できることだと思っています。
エンジニアの役割は、社内の社員にも「オロのエンジニアってすごいよね」と思われるような人を採用することです。「このエンジニアがいるなら、どんな提案をしても形にしてくれるだろう」と、オロのエンジニアはすごいということを、社内のエンジニア以外のメンバーに思ってもらえるよう、採用活動をしています。
こういった形で、人事とエンジニアで役割分担をしています。私のグループであれば「うちのエンジニア組織がどう思われたいか」いうところに私自身とてもこだわりがあるので、そこを崩さないような組織にするために採用のお手伝いをしています。
人事がエンジニアスキルを理解するためにつくった共通指標
黒河氏:もともとセールスの社員が今人事をやっているのであれば、人事採用として、エンジニアをどう見るかってところが、非常に求められてくると思います。しかし、エンジニアのスキルって、わからない人からすると絶対わからないんですよね。
そこで、codecheckのスコアや、カリキュラムテストのようなものを用意して、人事とエンジニアの間に「この点数がいい人って、いい人だよね」という共通指標を作るということをしました。
自社のハイパフォーマーのスコアをもとに「こういうスコアをとっている人は、基本、いい人だろう」という仮説をもとに指標をたてているので、そのスコアを超えてきた学生に関しては、スキルは申し分ないはずだと考えています。
一番の理想としては、80点というスコアを叩き出した学生に対して、エンジニアも「80点とった人いるんだ、すごいね」と、人事も「80点超えているんだったら、これ、きっとすごいだろう」って思えるような指標をつくることだと思っています。
新田氏:じゃあ、人事的観点から欲しいと思った学生のスコアが90点だったら「ヤッター」みたいな正解発表感が理想ということですね。
黒河氏:逆にエンジニアの観点として、人事から「点数は悪いんですけど。会って欲しい学生がいる」と言われると、「えっ」ってなります。
80点がボーダーだとしたら「80点を超えている人はいい人で。70点、60点をとっている人っていうのは、悪い人なんだろう」っていう認識なんですよね。
新田氏:人事の方からみて、エンジニアのスキルスコアがちょっと低くかったとしても「この子は絶対、活躍するだろう」っていう学生もいるということですよね。このような場合で受かったケースってありますか?
黒河氏:あります。その学生に、違ったスキルがあったというのもあるんですけど。もう、そのときはすごく悩んで、面接、面談を2時間おこなって、話したうえで決断をしました。
オロにいるエンジニアで、プログラミングに初めて触れた年齢は小学生高学年とか中学生ぐらいなんですよね。
でも、この学生は大学3年ぐらいに初めてプログラミングに触って感動をして、プログラミングを始めたみたいなんです。たった1年間やっただけで、これだけのスコアを出してるっていうのは、それは評価に値するなと考え、2時間の面談をした後に選考通過の判断をしました。
同じ『言葉』で話すことが人事とエンジニアのコラボレーションになる
新田氏:お話を伺っていると、逆にそういう特質なケースっていうのは、「個」にフォーカスをして、より時間をかけて見極められる。それ以外の人たちは、スピーディーに魅力づけに移れるという効果があるっていうことですよね。
黒河氏:そうなんです。ただ、学生全員に時間をかけて見極めることって、現実的に無理なんですよね。とはいえ、多くの学生に接触をしていかないと、自社の求める人材と出会えません。そのため、人事としては、母集団を増やさなくてはいけません。
もし、採用チームが100人体制であれば、話は別だと思うんですが、一人一人に時間をかけることができない中では、確実にパフォーマンスが出る人を最優先で先に進める。その次に、時間をかけて「個」にフォーカスをしていくようにプライオリティをつけなければいけないと思いますね。
新田氏:ありがとうございます。エンジニア採用において、人事とエンジニアの役割を「どうコラボレーションするのか」ということは、人事とエンジニアが同じ『共通指標』を持って『個』にフォーカスをして採用するというスタンスをつくることが大事ということですね。
黒河氏:そうですね。同じ『言葉』で話すことが大事だと思うんですよね。人事とエンジニアの観点がズレてくると、採用は上手くいかないと思います。
共通の『言葉』って言い方をしているんですが、定性的な指標のことです。エンジニアが学生の技術力だけを見るのではなく『技術力8割、人柄2割』人事は学生の『人柄8割、技術力2割』を見るというように評価をできるようにすれば、人事とエンジニアがコラボレーションしやすい採用ができるのではないかということは、すごく感じています。
【イベント概要】
- イベント名:エンジニアと人事がコラボするための各社の取り組みの裏側【Code Summit vol.002】
- 開催日時:2017年7月20日(木)19:30~21:30
- 開催場所:bit & innovation 東京都新宿区西新宿6丁目24番1 西新宿三井ビルディング 23F
- イベント詳細URL:https://givery.connpass.com/event/61059/