先日発売された、世界的な経済専門雑誌『Forbes』の日本版『Forbes JAPAN』の2016年12月号に「注目はここだ!日米HRテック20選」という題目でHRテック特集が組まれていました。コンピューターやAI(人工知能)を使ったデータ解析が世界的にも注目を集めており、HR領域にも最先端のサービスが次々と誕生してきています。
「注目はここだ!日米HRテック20選」では、人材管理、エンゲージメント、採用、評価、コミュニケーション、福利厚生、教育と、7領域に分けて日米それぞれのHRテックサービスが紹介されており、今回はその中の『人材管理(7選)』の領域に関して、どのようなサービスが取り上げられているのか、アメリカ3サービス、日本4サービスを調べてまとめてみました。
Forbesが選ぶ『人材管理』領域のHRテック|アメリカ代表3サービス
1.Workday(ワークデイ)|「攻めの人事」へと導く統合型人事ソリューション
Workdayは、人事領域だけでなく財務領域、そしてそれらの分析をひとつのプラットフォームで行うことができる、エンタープライズソリューションです。
人事・福利厚生・タレントマネジメント・リクルーティング・給与計算・タイムトラッキングをカバーする人事管理、およびファイナンシャル・収益・経費・調達をカバーする財務管理の機能を備えており、それらが1つのプラットフォームに統合されているため、導入企業は各領域を横断して自社のビジネスプロセスを効率化することができます。
主要な企業向けエンタープライズアプリケーションベンダーの中で98%という最高の顧客満足度を達成しており、日産、日立、ソニー、ファーストリテイリング、東京エレクトロンなどのグローバルに事業を展開する顧客に採用されています。
2.BetterWorks(ベターワークス)|新時代を切り開く目標設定プラットフォーム
BetterWorksは、ゴールを「見える化」でき、従業員の目標設定やその進捗がリアルタイムで把握できるプラットフォームです。
個人の目標はもちろん、組織全体の目標や部門間の関係も、画面から確認することができます。さらに従業員エンゲージメントやパフォーマンス向上の改善に向けて、文脈を理解したコーチングやフィードバックを行う際に、従業員のあらゆるデータをもとに事前に分析することができます。また、WorkdayやSalesforce、slackなどのプラットフォームと統合することができ、自動連携を行うことも可能です。
SONY MUSIC、BMW、Schneider Electricといった企業が導入しており、BetterWorksを活用することにより、72%の企業がエンゲージメントが向上し、95%が目標設定や評価への透明性が増したとのことです。
3.Zenefits(ゼネフィッツ)|一時期、世間の注目を集めたユニコーン企業
Zenefitsは、中小企業向けに「人事管理」「勤怠管理」「給与計算」「健康保険の管理」など、人事業務を効率化してくれるオンラインツールを提供しています。Zenefitsの特徴は、企業に対して自社サービスを無料で提供している点で(一部有料)、中小企業を中心に約2万社が導入しています。
アメリカでは日本と違い、健康保険の加入義務はなく、公的な健康保険または民間の保険会社が提供する健康保険への加入を個人の意思でおこなうことになっており、企業は福利厚生として健康保険の管理・加入サポートを導入しています。このようなサポートを搭載したHRテックサービスは他にも多くの企業が提供しており、アメリカならではといえるでしょう。
Zenefitsは、ピーク時には45億ドルの評価額で5億ドルを調達しており、シリコンバレーを代表するユニコーンといわれていました。
Forbesが選ぶ『人材管理』領域のHRテック|日本代表4サービス
1.36(サブロク)|社員の退職を防ぐ!クラウド型人事・労務分析ツール
サブロクは、健康経営・コーポレートガバナンス強化を目的としたクラウド型人事・労務分析ツールです。社員の勤怠情報・属性情報をクラウド上に蓄積にし一元管理、分析データへ変換し、機械学習により予測モデルを作成できます。それにより、社員の退職確率・精神疾患発症率も導き出すことが可能です。
上記以外にも、「人材傾向分析」「プロモーション人材(リーダーとなる人材)の発見」「人材評価・給与妥当性チェックへの応用」「リソース最適化」「上司・部下・チームメンバの相性・適正分析」「部署・チーム・従業員単位での内部環境分析」などの分析を行うことができます。
2.HUE(ヒュー)|AIやビッグデータを組み込んだ世界初の人工知能型ERPシステム
HUEは、AIやビッグデータを組み込んだ世界初の人工知能型ERPシステムです。有能なパートナーのように、“あなた”に合ったベストな提案をしてくれます。企業内に眠る膨大な業務のログを解析・学習することで、社員が次に入力する情報を予測することはもちろん、クリックのみで帳票や分析レポートが作成できます。
また、人事や会計のデータをエクセルシートのように、追加・削除、並び替えをしてくれる。その結果が、そのままデータベースに反映される。あるいは、メールで受け取った添付ファイルが、自動でERPに保存されるといったことも実現できます。さらに学習機能によって翻訳精度が向上し、現地の文化や慣習をも吸収してくれるため、グローバル対応も問題なくおこなえます。
3.ジンジャー|AIによる退職アラートなど、国内初人事向けプラットフォームサービス
ジンジャーは、「採用管理」「勤怠管理」「労務管理」「人事管理」といった、国内初の人事領域のデータを横断的にマネジメントできるクラウド型人事プラットフォームサービスです。昨今、求人倍率の向上・労働人口の低下により、企業は従業員の生産性向上が責務となっています。しかし人事データが、WEBで管理できていない、各人事関連システムに点在していることにより、データのクレンジングができず、本当に抽出したいデータがアウトプットできていないことが日本の企業として課題となってきています。
ジンジャーを活用することで、今まで可視化されていなかった人事データを「数値化」し、かつAIによりデータ分析をおこなうことで、戦略人事の最適解を導き、人事業務のパフォーマンス向上、更には企業経営の支援が実現できます。
4.iTICE(アイティス)|3つの「見える化」で的確な人材マネジメントを実現
iTICEは、人財検索、課題分析、効果測定が簡単に実施できる「人財データベース」を構築してくれるサービスです。企業内に散在する人財情報を集約して人財プロファイルシートを作成、個人・組織のコンディションが見える化できます。
人財配置・後継者選出時などに対象となる人財を一括抽出でき、また個人ごとにグラフボタンをクリックするだけで、組織内のスキルバランスをグラフ化し、強化ポイントを判断することができます。さらに、適性試験結果・アセスメント評価・研修結果などの人財情報をスピーディーに取り込めることもでき、アンケート機能を活用した意識調査も簡単に実施することが可能です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
アメリカと日本のHRテックサービスの市場を比較したときに、VCからの資金調達額や「HRテック」でのWEB検索数など、さまざまな軸で比較すると、まだまだアメリカの方が注目度が高く、大きな市場となっている印象を受けました。
日本でも、クラウドを中心にさまざまなHRテックサービスが登場してきており、人事業務の戦略化、効率化に大きく役立ってくるかと思います。しかし、どのサービスを導入すべきか、それらをどのように社内に浸透させ活かしていくべきかを考え、道筋を描けるかが、人事に求められてくるのではないでしょうか。人材不足や生産性、働き方などに関して多くの話題が出ていますが、人事の役割は、さらに多くのものを求められ、また経営に寄り添ったポジションになってくるように感じます。