人材獲得戦線が激化する昨今。その背景から、人事部強化のために異動をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「右も左もよくわからないけど、とりあえず人を採用しないといけない」「人事の仕事に慣れてきた」という人もいるかもしれません。
人材獲得手法としては、大きく新卒採用と中途採用に分けられます。どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。今回は基本に立ち返って、新卒採用と中途採用のメリット・デメリットをまとめてみました。
まだ着手していない、採用で新しい挑戦をしてみたい、そんな時にぜひご活用下さい。
新卒採用
学校(四年大学、大学院、短期大学、専門学校など)を卒業してから働く人たちを一括で採用するのが新卒採用です。多くが就労経験がなく、貴社で採用した場合が初めて社会人としての勤務になります。
新卒採用のメリット
企業文化浸透度が高く、継承していくことができる
よく企業文化は大事だと言われていますが、なぜ企業文化は大事なのでしょうか。それは企業文化とは、組織を一つにまとめ、社員が正しい方向にいく動機を与えるものだからです。つまり、迷ったときや困難にぶつかったときに進むべき方向を示してくれるのが企業文化です。
中途社員より新卒社員の方が企業文化が浸透しやすい傾向があるのは、バックグランドの有無が関係しています。他社での就労経験があると、「前の会社ではこうだったのに!」と企業の考え方に馴染めないかもしれません。
一方新卒採用の場合、就労経験がない場合がほとんどなので、初めての社会人経験が貴社ということになります。
社会人としての考え方は、その会社で吸収することがスタンダードとなるため、その会社の価値観や考え方にあたる『企業文化』を、受け入れやすいといえます。
組織を活性化し、事業の成長に繋がる
新卒社員が入ることによって、組織が活性化されたという意見をよく耳にします。長い期間、同じメンバー・組織構成でいると、マンネリ化してしまうこともありますよね。そんな職場に新しい風を吹き込むのが新卒社員です。
新卒社員が入ってくることで、先輩がぴりっとすることは弊社でもよく見かける4月の風物詩。今まで教えてもらうばかりだったメンバーも、自分の後輩が入ってくることで、「頼られる存在」になるために奮起をしてくれます。
後輩育成コミュニケーションを通して、改めて企業文化の大事さに気付いたり、自分のノウハウを言語化することで、先輩自身も自己成長に繋がりますね。
このように新社会人の採用・育成自体が、組織活性に繋がることも『新卒採用』のメリットのひとつです。
一度に入社研修ができ、効率性が高い
『新卒採用』は、新卒一括採用や定期採用とも呼ばれており、海外では類を見ない独自性の高い日本固有の雇用戦略です。決められた入社時期にまとめて新入社員が入ってくることによって、社員研修を一度に実施でき、その後の成長過程についての評価も予め定めておいた基準に照らし合わせることで容易におこなうことが可能です。
教育係の選定から始まり、研修の準備や運営、研修後の成長評価など、中途社員に比べ、新卒入社員の教育コストは決して低いものではありません。
全国各地で採用した新卒社員を一ヶ所に集めて研修を行える点などから、広範囲において採用をおこなう企業ほどメリットがありますね。
新卒採用のデメリット
学生と社会人とのギャップが、自分と会社とのギャップになってしまいやすい
学生から社会人になる時、物事への取り組み方や捉え方にギャップを感じてしまうものです。今まで許されていたことが許されなかったり、細かいチェックが入ったり。
それは大概の場合、ビジネスに関わる以上、少なからず社会的責任が伴うことによるあるべきギャップなのですが、問題はそのギャップを「自分とこの会社のギャップ」だと捉えてしまう可能性が高いということです。
それによって仕事にやりがいを見いだせずに、早期離職に繋がり、企業にとっても新卒社員にとっても悲しい結末になってしまうのは切ないですよね。
そうならないためには、入社前に「社会に出ることの意味」など、「社会人として」を伝えることで解消できると思います。
入社、戦力化まで時間がかかる
中途採用と違い目に見える職務実績がない分、新卒採用はポテンシャルをみて未来の活躍を見極める面接となります。1回の面接で見極めることが困難な場合も多く、複数回する企業が多い中、選考回数が多い新卒採用は非効率的と捉える場合もあります。
また最近は採用激化の背景もあり、3月の採用広報開始、6月の選考開始、そして10月の内定開始まで、選考対象者のフォローを実施する企業も多くあります。よりマンパワーが必要となるため、実際の戦力になるまでを考えると膨大な労力と時間がかかります。
景気変動に左右されやすく、やり直しがきかない
毎年定期的に確保しやすい新卒採用ですが、景気の動向によっては人材の確保が難しい年や、反対に採用しやすい年がでてきたりします。
また前述の通り、3月の広報開始から10月の内定開始まで大きな採用の流れが決まっているため、一度母集団形成のタイミングを逃してしまうとなかなかやり直しがききません。
新卒採用は、1回だけの単発採用には向かず、初めて着手する場合は先3カ年ほどの計画を念頭に運用をしていくことが望ましいです。
新卒採用を初めて考えるなら
ここまでお伝えした新卒採用のメリット・デメリットを、改めて下記にまとめます。
メリット
- 企業文化浸透度が高く、継承していくことができる
- 組織を活性化し、事業の成長に繋がる
- 一度に入社研修ができ、効率性が高い
デメリット
- 学生と社会人とのギャップが、自分と会社とのギャップになってしまいやすい
- 選考フローが長く、入社、戦力化まで時間がかかる
- 景気変動に左右されやすく、やり直しがきかない
新卒採用が効果的なケース
- 先代から社長が変わったので、企業文化浸透を促進したい
- 組織を活性化させたい(成長欲求を高めたい)
- 採用数が増えるので広域での採用を実施したい
・・・etc
このような特徴から、新卒採用は単発的に実施するのではなく、その後の教育・評価を含め計画的に実施することが望ましいです。定期的な採用となるため、しっかり運用ができれば、若手労働力の確保ができ、組織における人員構造の最適化につながります。
新卒採用を見直したい採用担当者様には新卒採用総合コンサルティングがおすすめです。
中途採用
過去に一社以上の社会人経験がある人を採用するのが中途採用です。
期間はバラバラで、企業がほしい時期に採用募集をおこない、採用を進めます。
中途採用のメリット
即戦力として期待できる
中途採用は実務経験豊富な「即戦力」や「管理職」を採用できるのが新卒と比べ大きなメリットといえます。
そのため、職種別採用が一般的で、必要な経験・スキル・資格などを明示して採用活動を進める企業が多いですね。中途採用の場合は、募集告知から選考、内定出しまでが数週間で可能であり、仮にその時点で他社に勤務している人材であっても、1~2カ月程度の引継期間があれば、随時入社してもらうことができます。「欠員補充」などスポットでの採用目的であっても、中途採用は効果的です。
教育・育成費のコストが削減できる
企業ごとの採用戦略にもよりますが、新卒採用単価と中途採用単価は、通年でならすと大きな差異はありません。ですが、中途採用であれば、社会人としての基本的な常識は当然備わっていると考えられるので、その部分の研修費をカットすることができます。
また同業種で働いていた経歴がある人を採用出来れば、既に業界のことは知っているので、基本的な事業研修にかかるコストを抑えることができます。
ビジネスマナーなどすべての基礎的なことを一から教えなければならない新卒よりも、ある程度の基礎知識を持っており、前職から実力などをチェックできる中途採用は、その後の育成を考えると企業側にもメリットは大きいと考えられます。
新しい知識やメソッドを獲得できる
以前の職場で培った知識やメソッドを自社に展開してもらえることも、中途採用の良さです。
同業他社で活躍していた人材を獲得できれば、自社にはなかった知識やノウハウを取り込むことが可能になり、反対に異業種からの採用の場合は、同業では考えられない発想や発見があったりもします。
また知識やノウハウ以外にも、中途採用者がこれまで築いてきた人脈も獲得できるケースも多々あります。
中途採用で入社してくれたメンバーの知識やノウハウによっては、自社で今まで常識だと思っていたことを、ブラッシュアップするチャンスでもあります。ときには異文化だと違和感を感じる中途採用かもしれませんが、上手くコミュニケーションをとることで、より組織を活性できるかもしれません。
中途採用のデメリット
貴社にとどまらない可能性がある
転職を何度か経験している人は、採用してもわずか数年で辞めてしまうということもよくあります。 これはその人の性格がそもそも飽きっぽかったり、また好奇心・チャレンジ精神が旺盛でいろいろと経験をしてみたいと思う考え方だったりと転職をする理由はそれぞれあります。 ただ採用担当者からすれば、会社にとって即戦力となり将来的にこうなって欲しいと望んで採用したとしても、当人はまた別の人生プランがあったりするので、採用時にいかに相手のことを知り、働き方をすり合わせるかが重要になってきます。
自分のやり方に固執されると、即戦力にならない
新卒採用では一から企業文化を教育できるのに対し、中途採用の場合はこれまでその方が経験してきた背景があり、企業文化にうまく馴染めない可能性があります。
同じ結果をあげるにしても、元の社風や考え、その方独自のマイルールに固執してしまい、自社のサービスを低下させてしまうこともありえます。
そのため、同業からの転職であっても、必ずしも即戦力になるとは限らないケースもあります。
若い世代が育たず、組織がマンネリ化する可能性がある
中途採用では即戦力を採用できますが、中途採用中心だと「社内の人口ピラミッド」が崩れやすいという話もよく耳にします。
また、入社してくるのが自分よりも年代が高いメンバーばかりになってしまうと、若手が育たず、成長実感を感じられずに退職懸念につながることもあるかもしれません。
将来のコア人材確保なのか、欠員による急遽の採用なのか。そのケースによって意識して中途採用していかないと、気がついたら若い世代がおらず、組織のマンネリ化につながりかねません。
中途採用を強化するなら
ここまでお伝えした中途採用のメリット・デメリットを、改めて下記にまとめます。
メリット
- 即戦力として期待できる
- 教育・育成費のコストが削減できる
- 新しい知識やメソッドを獲得できる
デメリット
- すぐ転職する可能性がある
- 自分のやり方に固執されると、即戦力にならない
- 若い世代が育たず、組織がマンネリ化する可能性がある
中途採用を戦略的に強化するケース
- 事業領域の拡大やグローバル化など、企業競争力が求められている
- 新卒採用の激化の背景から、若手人材獲得が難しい
- 新規事業の立上げや大量出店で、企業経営に機動的に対応する必要がある
・・・etc
今までは、大手企業は新卒採用だけを実施しているケースが多くありました。しかし最近は海外競争力の強化や経営のスピードアップが求められ、自社内では育成できない高度な即戦力を社外に求める傾向があります。
また、強い組織が持つ要素のひとつに「ダイバーシティ(多様性)」が広く注目されるようになり、生え抜きの組織よりも、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を有する組織形成が求められています。
こうした背景から、スケジュールが決まっている新卒採用同様、しっかりとした採用戦略が中途採用にも必要になっています。
新卒採用市場に比べ、中途採用市場は企業が求めるターゲットの人材を探すことが簡単ではありません。そのため、エージェントに理想人材を紹介してもらう成功報酬型の紹介サービスを活用することも戦略の一つといえますね。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
何のために採用するのかという目標を明らかにし、それに合った採用をすることが大切です。 例えば、将来を見据えて会社の成長とともに人材を育てたいと考えている場合は新卒採用がいいでしょう。 または緊急で事業の業績を上げたい、会社の業績を復調させたいという場合は即戦力になる中途採用が適切かもしれません。
貴社の会社設計、社員に求める内容を加味しながら採用する人材を検討することが大切になるでしょう。 ぜひ、貴社の採用にお役立ていただけますと幸いです。