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超売り手市場で人材確保が難しい現在、労働環境が厳しければ離職する人も増え、企業が継続困難に陥りやすい時代になりました。
そこで、国をあげ、働き方改革と称して、労働環境の見直しが図られています。
では、働き方改革とは具体的にどのような改革を行うのでしょう?
企業としてはどのような対応が必要なのでしょうか?
本記事では、働き方改革が採用市場に与える影響について人事の視点で分かりやすく解説します。
働き方改革とは
高齢化社会でかつ少子化となった日本社会において、労働人口が減少の一途をたどっています。
この状態を放置しておくと経営が困難になる企業が増えることが予想されます。
そこで、政府は「一億総活躍社会」というキャッチフレーズのもと、女性の職場進出や高齢者の活用、個人ニーズにあわせた働き方を提案、実現しようとしています。
この政府の施策を「働き方改革」と呼んでいます。
ワークライフバランスを見直し、健康にかつ生産性を高めることが大きな目的です。
働き方改革は単に制度化するだけでなく、法的な効力ももたせています。
例えば、残業時間の上限を設け、それ以上働くと罰則の対象になります。
これは、慣習化された長時間労働や残業を防ぐことを目的としています。
働き方改革の背景と目的
企業にとって労働人口の減少による労働力不足が大きな問題となっています。
その結果、経営に影響がでる企業も出始めました。
労働力不足のため、営業時間を短縮する、サービスや事業の質が低下、事業の縮小などへの影響がでています。
さらに人材確保のために従来以上の賃金が必要になり、人件費の負担が増えることも問題となっています。
これらの課題を抱えた現在、従来の日本企業での働き方を見直す動きがでています。
慣習化した長時間労働や残業などを減らし、働き方を見直すことで生産性を高めるのが目的です。
働き方改革法案は「残業時間の罰則付上限規制」、「勤務間インターバル性の促進」など大きく9項目を柱とした改革になっています。
働き方改革の政府の取り組みと関連法案
働き方改革は政府にとってもメリットがあります。
国民が気持よく働くことができるのが目的ではありますが、それにより、労働人口を増やすことで税収を確保し、65歳を超える人を労働者として働いてもらうことができれば、国が支払う年金が減るなど財政的にもいい方向にすすみます。
働き方改革による政府の取り組みは「裁量労働制の適用範囲拡大」、「同一労働同一賃金」を実現することです。
またワークライフバランスを維持するという点でも残業時間の上限値を設け、労働者の健康を守ることになります。
働き方改革としては、「労働時間の是正」、「正規・非正規間賃金格差の解消」、「高齢者の就労促進」があります。
労働時間の是正に関しては、残業時間の上限を設けて、それを超えた場合は、法的な罰則の対象になる制度が施行されます。
賃金格差の解消は、原則、同一労働に対して同賃金という公平な賃金制度にすることでで非正規労働者のやる気を高め、生産性を改善させることが期待されます。
しかし、企業が支払う賃金が大幅に増えることを考えると、簡単な施策ではありません。
高齢者の就労促進はこれまでに培った経験を生かして若者への技術伝承や職場によっては若者以上に力を発揮することも期待されます。
働き方改革のメリット
働き方改革を行うことで、会社および社員にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは会社および社員が受けるメリットを紹介します。
会社にとってのメリット
労働時間が短縮されることで、従業員の集中力が高まり、生産性の向上が期待できます。これまでのように時間がかかるだけでダラダラとした雰囲気を一新することができます。
また人材採用においても、働き方改革に熱心な企業という社会的な評価を得ることのメリットもあります。
特に若者は自分のライフスタイルを実現しようとする意識が強いので、従業員を大切にする企業に目がいきがちです。
働き方改革に積極的な企業という印象が生まれると若者の目にもとまりやすくなり、人材確保がやりやすくなります。
社員にとってのメリット
社員にとってのメリットはなんといっても自分のライフスタイルにあわせた生活を送ることができるという点です。
それによってストレスも減り、仕事への集中力が高まることで生産性も改善します。
たとえば、就業開始時間を少しずらすことで、満員電車のストレスからも解消されます。
また残業時間の上限値が法律で決められるのでそれ以上に働くことができません。適度な休息をとることができるようになります。
働き方改革のデメリット
働き方改革を行うことでデメリットはないのでしょうか?会社および社員が受けるデメリットを紹介します。
会社にとってのデメリット
残業時間に上限が設けられることで、単純に就業時間を減らすだけだと、仕事がスケジュールどおりに完了できなくなります。
しかし、利益を得るためにはスケジュール通りに業務を完了させる必要があります。その結果、残業の対象にならない、管理職が代わりに業務を行わなければなりません。
一般社員は残業時間の上限設定により過労働から解放されますが、管理職の負担が増えてしまいます。
人件費が高騰するのもデメリットです。これまで非正規雇用者は正規雇用者に比べて人件費が抑えられていました。
同一労働同一賃金になれば、非正規雇用者の人件費が増えるので、トータルの人件費が増えてしまいます。
このように費用負担が増えたり、一部の人への負荷が高まったりしてしまうので、注意が必要です。
社員にとってのデメリット
これまで支給されていた残業手当が大幅に減ることになるので、総賃金も減ってしまいます。
また競争に勝ちたい、でも早く帰らなければなりません。
最近は昔よりもプロセスが煩雑になっており、必要な文書も増え、労働必要な時間が増えています。
その中で働ける時間が減ることが必ずしも良しとはなりません。
もちろん、労働時間が減ることを考慮してスケジュールを伸ばすなどの対策が必要になります。
特にIT系のように日進月歩の技術を扱っているとそう簡単にスケジュールをのばすことはできません。
スケジュールに間に合わせるために、家に仕事を持ち帰ってしまうリスクが増えてしまいます。
働き方改革をするための助成金の受け方
働き方改革を推進するために働き方改革助成金が設定されています。 ここではそれぞれの助成金の概要とどこで受け取ることができるかを紹介します。
職場意識改善助成金
中小企業が労働時間等の改善を含めた職場意識の改善計画を作成し、この計画に基づく措置を効果的に実施した中小企業事業主に支給されます。
職場環境改善コース、所定労働時間短縮コース、時間外労働上限設定コース、勤務間インターバル導入コース、テレワークコースがあります。
(支給額)コースにより異なり、また取組が実現できたか否かによっても異なります。支給額は20~150万円です。
(問い合わせ先)都道府県労働局労働基準部監督課または労働時間課
そのほかの助成金
地方自治団体が支給する助成金(各地方自治団体の助成金も厚生労働省HPに掲載されているので確認しましょう)
働き方改革の企業における課題
働き方改革を行うためには、人材の確保や賃金アップによる費用負担増にも耐えなければなりません。
そうなると資金力や知名度が高い大企業は働き方改革を行いやすいでが中小企業が働き方改革を行うのは難しいのが現状です。
労働時間を減らし、その分をほかの人を雇う。 それは大企業ならば可能ですが、中小企業だと簡単に人が見つからなく、費用負担が増えるのも問題になります。
結果的に中小企業の多くが働き方改革を行えない状況になっています。
仕事時間は減るが仕事量が減らないという問題も大きく残っています。
結果として会社で仕事をする時間が減ったものの、自宅に持ち帰って仕事をす
るというケースも増えています。
会社としては費用負担が増えないので良いともとれるが、労働者のワークライフバランスが乱れることで生産性が低下してしまうリスクもあります。
今後は、働き方改革と一緒に、業務の進め方の改革も必要となっています。
働き方改革に対応する方法
働き方改革と一言にいってもかなり広い改革が必要です。
まずは、効果が大きそうな項目や法律で定められた罰則の対象となる項目から対応していく企業が増えています。
実際に自分たちが行うべき改革のターゲットを決めて、実行計画をたてます。
短期間で完了できるような内容ではないため、数年先を見据えたロードマップを策定しておくと全体像が見えて進めやすくなります。
働き方改革は国が進めている施策のため、ガイドラインも設けられています。
まずは、ターゲットを決めてガイドラインに従って進めてみるのが良いと思います。
その結果、うまくいかないようであれば、プロの助言をうけることをおすすめします。
働き方改革時代にこそ有効な「採用代行」のススメ
働き方改革では従業員一人ひとりの負担を削減することが求められます。
採用のプロに採用業務を代行してもらうことで、働き方改革を推進するための自社課題に向き合う時間を確保する事ができます。
働き方改革のための課題を解決した企業はこれからの人材難の時代の中で、きっと採用優位を確保する事でしょう。
働き方改革を推進していく事は、全ての日本企業には求められています。いち早く課題を解決するためにも採用代行の導入を検討してみましょう。
まとめ
働き方改革は企業にとっても従業員にとってもメリットがたくさんある良い方向への変化です。
しかし当然ながらいいことばかりではなくデメリットもあるので注意が必要です。
デメリットがあるからやらないという選択肢はないので、デメリットの影響がでにくいように考える必要があります。
そのためには働き方改革を通して、業務の進め方を見直すことが必要になります。
働き方改革は自分たちが当たり前と思っていた業務の進め方を見直す良いチャンスともいえます。