新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、多くの企業でオンライン環境下での採用活動が続いています。
学生の内定保有率も年々上昇しており、内定承諾から入社するまでの長期間における学生のモチベーションを維持することは、とても難しくなりました。
そこで今回のHR Studyでは、「内定者フォロー」をテーマに、各企業が学生に対してどのようなフォローを実施しているのか、詳しく語っていただきました。
- 他社がどのような内定者フォローを実践しているのか知りたい。
- 内定承諾から入社までに内定者とどのようなコミュニケーションを取れば良いか分からない。
- 入社までに学生の意欲が下がってしまう要因について知りたい。
といった人事担当者や経営者、マネージャー層の皆様は、ぜひ参考にしていただければと思います。
※本記事は、2021年7月15日(木)13:00~14:30に実施されたイベント内容をもとに再編成したものです。
登壇者紹介
佐藤 彰悟|かたわら代表/サツドラホールディングス株式会社HRパートナー
札幌市出身。越境する複業人事。地元大学を卒業後、大手アミューズメント・ITベンチャー・ブライダルを経て、2019年かたわらを開業。複業人事として幾つかの企業・自治体の人事・顧問を掛け持ち、北海道⇄東京を行き来する越境スタイル。現場主義を徹底した完全オーダーメイドの組織創りと生産性向上支援・地域コミュニティの運営に取り組む。息子(3)とサカナクションとニンテンドーをこよなく愛するサブカル好き。
山崎 満帆|株式会社デジタルホールディングス(旧オプトホールディング)人事総務部 採用グループ
2016年に新卒で株式会社オプトへ入社後、コスメ、アパレル系の企業様を中心に広告運用方針や戦略立案を行うアカウントプランナーとして従事。2019年より人事戦略部へ異動し、2020年ホールディングス上期優秀賞受賞。新卒採用を中心に、現在はホールディングス全体の採用担当として設計から採用、入社後フォロー含め担当。採用業務に加え、社内コミュニケーション活性もミッションにプロジェクト始動中。
モデレーター紹介
西村 創一朗|株式会社HARES 代表取締役
新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・中途採用などを歴任。在職中の2015年に「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」をミッションに株式会社HARES(ヘアーズ)を創業後、2017年に独立。今回のテーマである「オンボーディング」を含め採用・人事領域を中心に多数の企業のアドバイザーを務めるほか、人事系イベントのモデレーター/ファシリテーターとしても活躍。著書に『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。
[勉強会の内容をまとめたスケッチノート]
LT1. 内定から入社まで学生のモチベーションを継続させる方法|サツドラ佐藤さん
初めまして。かたわら代表で、サツドラホールディングス株式会社のHRパートナーを務めている佐藤です。
サツドラホールディングスは、北海道では知らない人がいないドラックストアチェーンで、現在はフィットネスや教育、地域マーケティング事業など、幅広い分野から地域活性化もおこなっている企業となります。
私は普段北海道に住んでおりますが、個人としても結婚式事業を手掛けるGLOVE ENTERTAINMENT株式会社やLGBT当事者のキャリア支援をおこなう株式会社JobRainbowで人事顧問をするなど、複数企業の採用プロジェクトに関わっています。
本日は、東証一部上場企業や地方の中堅ベンチャー、都内のスタートアップといった多様な企業で人事に携わる中で私が大事にしている内定者フォローのノウハウについてお話できたらと思います。
「ぼっち人事でもできた」内定者フォローの実態
私は「越境人事」「フリーランス人事」として複数のエリアをまたぎながら活動していますが、実はずっと「ぼっち人事」でした。
たった1人で採用、教育、評価といったことまで対応しているので、「ぼっち人事が本当に内定者フォローをする時間なんてあるのか?」と疑問に思う方も多いのではないかと思います。
しかし、直近の3年間は内定承諾後の辞退率が33%から0%に下がっており、個人として内定者フォローを強化できているのではないかと感じています。
3年前までの私は、「1 to 1」「マメな連絡」「愛」を大事にした内定者フォローを実践していました。
内定者に「今日はテストどうだった?」と聞いてみたり、誕生日にプレゼントを送ってみたり、とにかく1人ひとりに向き合うスタイルを貫いていたと思います。
しかし、その結果、一部の内定者から入社後に実は「ウザい」「重すぎる」と感じていたことを言われ、また、そもそも1対1でフォローをすることに私自身が相当疲弊してしまいました。
このままではいけないと思考錯誤した末、「①自分事」「②非日常」「③程よい距離感」という3つのキーワードをもとにした内定者フォローにスタイルを変更しました。
キーワード①:内定を「自分事」にしてもらう
まず、1つ目のキーワードが、人事から内定者に対して何かをするのではなく、内定者本人が「この会社に受かったんだ!」「この会社の一員になったんだ!」と、内定を「自分事」として考えられるような後押しをすることです。
具体的には、内定者人事という取り組みを実施し、合同説明会の参加やインターンの企画・運営、内定者人事に経費として食費を渡して内定承諾前の学生を口説いてもらうクロージング食事会など、多くのことを内定者人事にお任せしています。
過去には、クロージング食事会後に内定者人事と内定者が2人で戻って来て、「この人と一緒に働くと決めたので入社します」とその場で決まったケースもあり、内定者のタイプによっては効果的な施策になります。
キーワード②:「非日常」で絆をはぐくむ
2つ目のキーワードは、非日常です。普段の日常から離れた環境で、遊び心ある体験を一緒におこなうことで、内定者同士や先輩社員との絆を深める取り組みをおこなっています。
北海道にある「イコロの森」という電波が届かない場所で合宿をした時は、丸一日かけて農業体験をしたり、2チームに分けて食事対決をしたりしました。
内定者全員、電波がなくなると、普段いかにSNSやYouTubeなどに時間を使っていたか実感するんですよね(笑)。
料理対決は、買い出しや調理作業などの役割分担が必要になるため、お互いの個性を理解し合うことに繋がるのでおすすめです。
また、完全にクローズな場で合宿をするだけではもったいないと思い、3チームに分かれて合宿中の様子をスマホで撮影し即興で動画を作成してもらい、公式インスタに配信をしてPV数を競う対決を取り入れたりもしました。
キーワード③:「程よい距離感」を保つ
そして、最後が、内定者のコミュニティを作成することで、人事は内定者と程よい距離感を保つ取り組みです。
Slackを活用して内定者同士が自由にコミュニケーションを取ることができるようにするだけでなく、内定者同士のオンライン飲み会などで自由に使える「内定者用ZOOMアカウント」、いつでも個別の相談ができる「人事ホットライン」も用意しました。
依然はLINEグループを活用していたこともありますが、入社前に同期にLINEを知られるのが嫌な人もいたため、現在はSlack運用に統一しています。
また、人事ホットラインの連絡手段に明確なルールを設けておらず、TwitterやInstagramのDMなど、内定者本人が使いやすい手段でOKとしています。
人事からマメに愛重く接しすぎるのではなく、また、放置するのでもなく、内定者自身が連絡したい場合にいつでも連絡できるくらいの程よい距離感を保つことのできる仕組み作りを実践しています。
内定者フォローで「しない」と決めている3つのこと
ここまで、具体的な取組内容をベースに内定者フォローにおける3つのキーワードをご紹介しましたが、この他にも「しないと決めていること」が3つあります。
まず、会社都合の押し付けです。
学生を早期に戦力化したいから勉強会や研修を多く実施している企業も多くあると思いますが、大学4年生・短大2年生といった最終学年の時間は人生で二度と経験できないので、その貴重な時間を奪わないよう、会社都合の取り組みはおこなわないようにしています。
また、内定者だけのLINEは過去に人間関係のトラブルが起きたことがあるため、強制的に全員が繋がることになるツールはSlack以外に作成していません。
そして、最も良くないと考えているのが、3つ目の放置です。マメに連絡を取りすぎるのもNGですが、放置時間が長過ぎるのはさらに危険です。
内定から入社までの空いた時間に、「この会社って本当に自分にあっているのかな」といった不安が膨らみ、内定を得た時点との気持ちにズレが生じる内定者は毎年必ずいますので、適度に、緩く繋がり続けることが大切だと考えています。
「疲れる」「ウザい」「重い」と思わせない内定者フォローを
以上のことをまとめると、次の5点が内定者フォローのポイントになります。
- 内定者フォローのゴールは「いつでも連絡が取れる兄・姉」になること
- 求めることは早期戦力化ではなく「自分事」と思えるマインドセット
- 新卒同期は一生に一度の縁。家族のような関係性にコーディネートする
- 関係性を強める鍵は「単純接触回数」を増やすことと「非日常」の共有
- 採用担当だけで頑張らず、社内・内定者を巻き込んで一緒に取り組む
内定者との程よい距離感、自分事化してもらうためのマインドセット、内定者同士の関係性構築を進め、かつ一人で頑張らずに社内や内定者を巻き込むことができれば、より効果的な内定者フォローに近付いていくのではないでしょうか。
LT2. 「内定者に選ばせる」採用|デジタルホールディングス山崎さん
株式会社デジタルホールディングスの山崎と申します。
デジタルホールディングスは、従業員数1800名弱のメガベンチャー規模の会社で、年間で約30名~50名前後の採用をおこなっています。
「内定辞退者ゼロは目指さない」学生に自分で選ばせるための施策とは
まず、先にお伝えしておきたいことが、弊社は現在「内定辞退者ゼロは目指していない」ということです。
弊社は昨年から、デジタルシフトカンパニーへの転換を目指して社名や組織体制が変更となるなど、第3創業期として会社が大きな変革期・過渡期を迎えています。
そのため、このようなカオスな環境にある会社を理解した上で、自ら飛び込もうとしてくれる学生の意思や覚悟の強さを重要視した採用活動をおこなっています。
採用活動全体のキーワードとしても「学生に自分で選ばせる」ことを掲げており、もし内定承諾してくれた学生が「ここでの挑戦はやっぱり違うかも」「覚悟が持てなかった」といった状況の場合は、無理に入社を進めないスタンスで内定者フォローに取り組んでいます。
内定承諾前の学生に対するアプローチ方法
弊社が内定承諾前の学生に実施しているアプローチ施策は、大きく2点です。
まず1つ目が、人事面接終了時点であらかじめクロージングまでの設計を行うことです。
人事面接の中で学生さんの性格や過去の経験などを深掘りし、幼少期から大人になるまでの様々な意思決定に影響を与えたことが何か丁寧にヒアリングします。
そして、その情報をもとにして、最終面接までに渡すべき情報が何か、個別に細かく設計しています。
もう1点の取り組みが、最終面接前に意思決定・覚悟感を持ってもらうことです。
具体的には、最終面接前に現場社員と面談の時間を設け、会社理解のためのインプットや就活軸の整理をおこなってもらっています。
現場社員が「一緒に就活を進める伴走者」として接しながら、一人ひとりが何に悩んでいるのかヒアリングし、入社に際して伝えるべき情報が何か明確にしています。
このタイミングで、いかに深い関係構築ができるかを考えながら面談を実施することを心掛けています。
学生が内定承諾をすぐにできない2つの理由
しかし、どんなに深い関係構築ができていて、適切な情報提供をおこなっていたとしても、実際にはすぐに意思決定をできない学生さんも多くいます。
私は意思決定ができない理由について、シンプルに「決断が怖い」「志望度が高くない」の2つだと考えています。
上図は、人材に関わるコンサルティングをされている岩松様の本を参考にプロットしたのもです。
このマトリクスに当てはめると、「志望度は高いが、他にもっと良い企業があるかもしれない」「まだ周りが就活をしているのに今の時期で就活をやめて良いのか?」といった、志望度は高いけれど決断が怖い人の心情が見えてくるでしょう。
採用担当者としては、「志望度が低いし、決断も怖い」というタイプのパターンの学生は、曖昧な意思決定をして早期離職につながる可能性が高いので注意する必要があります。
また、キープとして内定保留をしていて、なんとなく捨てきれないという状況の学生も気を付けなくてはなりません。
学生の状態に合わせたクロージングを実施
このように、採用担当者として、それぞれの学生が今どのパターンのどこに当てはまるのか的確に理解し、それぞれの状態にあったクロージングをしていかないと、効果が出にくいと考えています。
学生の心情を先ほどのマッピングに的確に当てはめるためには、当たり前ですが学生との関係構築がもっとも重要になります。
最終面接の前に学生と関係をしっかりと築くことを意識して取り組み、学生の状態を把握することができていれば、やるべきことは非常にシンプルです。
また、そもそも内定辞退率を下げるためには、内定承諾をする時点で「学生本人がしっかり納得しているか」がとても大切です。また、自分で覚悟をもって意思決定できたかは、内定辞退率だけでなく、入社後の動きにも大きく影響していきます。
フォローの手厚さに採用担当の人数は関係ありません。事前に情報を整理しながら設計し、周りを巻き込むことができれば、少ない人数でもフォローは実践できるはずです。
パネルトーク/視聴者からのQ&A
ここからはパネルトークとして、視聴者の皆さんからご質問が集まったテーマをもとにお話を進めていきます。
Q. 複数企業に内定している学生の口説き方とは?
複数企業の内定を持っている学生の口説き方は、私自身も困っていますね(笑)。
もし内定者が明確な軸をもって第一志望を決めている場合は、その就活軸、意思決定の軸から一緒に考え直すしかないと思っています。
「会社を選ぶ基準」ではなく、そもそもの「物事を決断する際の基準」について、一緒に考え直すアプローチです。
ものすごく本質的なアプローチですね。
実際に、内定者の意思決定の軸を一緒に考えた結果、自社の内定承諾につながった事例はありますか?
たとえば、商社やグローバル系、海外などに憧れていた学生さんが、最終的に弊社を選んでくれた事例があります。
このときは「英語を活用できる企業に入りたい」「グローバルに活躍したい」といった話に対して、まずは「そもそもグローバルで活躍したい理由は何か?」「商社以外で英語は使えないのか?」といったような突っ込みを入れていきました。
学生本人の考えに対して、少し別の角度から「それって本当にそうなのかな?」と質問してあげることで学生自身が新たな気付きを得ることも多くあります。また、第三者ならではの複数の視点で思考を一緒に整理していくと、ポロポロと本音が出てくるんですよね。
そこで改めて、「海外で活躍した後はどうなりたいの?」「グローバルに活躍するために、どういったプロセスを歩めば良さそうかな?」と1つずつ掘り下げて寄り添うことで、学生本人が本当に大事にしたい視点を取り戻し、弊社に内定を決めてもらうことができました。
たしかに、学生の中で「英語を使うなら商社が1番」「グローバルに働くために英語の勉強をしたから生かさなくては」といった思い込みやバイアスってありますよね。
学生本人の主観を一旦無くして、ゼロベースで考え直すパートナーとして山崎さんを選んでもらうのが大事なんですね。
このような深い話をする際に信頼関係が大切かと思いますが、山崎さんが学生と深い関係性を作る時に大事にしていることはありますか?
「学生との信頼関係=尊敬」と捉えることですね。
学生に「山崎さんは、自分に新たな知識を与えてくれる人だ」と思ってもらえるよう意識していまして、この人なら信頼できる、尊敬できるという状態を作ることが大事だと思っています。
学生に無理に共感したり寄り添ったりするのではなく、新しい視点の切り口をどんどん渡してあげることを重視しています。
ただの共感ではなくて、別の視点の提供を通して信頼を獲得していくのですね。
続いて佐藤さんにも同じ質問を伺いたいと思います。
複数企業の内定を持っている学生とは、ざっくばらんに話しながらお互いがお互いを知ること、そしてどの企業がライバルになっているのか正確に理解することが大事だと思います。
私個人としては、主に下記の3点をおこなっています。
- 解釈のずれを直す
- 情報を余すことなく伝える
- 軸が足りてなければ立てる
たとえば、北海道の場合は札幌圏に人口の3分の2が集中しているので、函館や帯広にいる学生が就職のために札幌に来ることは、ある意味「上京」として捉えることができます。
なので、とある新聞社さんが北海道の学生に「どこで就職したいですか」という調査を実施したところ、道内の地方や道外よりも札幌で働きたいと答える学生が大多数となるような状況です。
実際に「なぜ札幌での就職を希望するのか」と聞いてみると、「親の近くにいたいから…」といった答えが返ってきます。
でも、実際のところ、交通機関を利用しての時間ベースで考えると、東京まで飛行機で1時間半なのに対して北海道内の函館へはJRで4時間程度かかるので、考え抜かれていない印象を受けます。
この勤務地バイアスは北海道特有かもしれませんが、どんなに社風や事業内容が素敵であっても、働く場所が合わなかったり転勤があったりすることで、就職先としてネガティブに捉えられてしまいがちな現状もあることでしょう。
まずは「就職するなら札幌」といったような他者依存の軸を学生から取り除くことが大事だと思います。
学生さんとは、具体的にどのようなコミュニケーションを取っているのでしょうか?
まずは、「なぜ弊社を志望したのか?」という点をどんどん掘り下げ、矛盾があった時は1つずつメモを取りながら指摘・共有するようにしています。
すると、「札幌就職が絶対」といった条件以外にも、「風通しのいい社風」「先輩と上司との関係性が良いところ」「成長できる」など、他の希望軸がたくさん出てきます。
これらの出てきたキーワードを一緒にグルーピングしながら、優先順位付けを手伝ってあげることで、学生さん自身が次第に自分の就活の軸を見つけることができるようになります。
そして、その人ならではの軸が見えたタイミングで、改めて自社の情報提供をおこない、同時に「他社の情報も見てみた方がいいよ」と後押しをしています。
ここまで軸をまとめると他社内定に流れることもありますが、「こんなに向き合ってくれたから買い物するならサツドラだよね」と将来のお客様になってくれたり、いずれ転職する際の選択肢に入れてくれる可能性にも繋がるので、それで良いのかなと思っています。
学生本人が秘めている本音を引き出して、言語化することがキーポイントなんですね。学生の本音を引き出す上で気を付けていることはありますか?
共通体験や共通言語を持つことに加え、愛嬌を大事にしています。
私はサブカルが好きなので、音楽やアニメなどの話から入ってフラットに話せる人と思ってもらうことを関係性構築のスタートとして意識しています。
また、もう1つは、業務に影響しない範囲で自分の弱みを見せることも大事ではないでしょうか。
極端な話ですが、学生の中には「人事は神」といった過剰な解釈をする方もいます。同じ目線で会話できる親戚のお兄ちゃんのような関係を意識するようにしています。
Q. 入社前に内定者に実施している課題や研修について
2つ目のテーマですが、入社前の研修や勉強会などは実施していますか?
全体での強制課題は出しておらず、学生のうちにやれることをやりきってほしいというスタンスを取っています。
ただ、中には少しでも勉強しておきたい学生さんもいるので、おすすめの書籍の案内や、自分のペースで受けられる研修システムの登録を案内しています。
あくまでも本人が「先に学びたい」という意思があった際に取り組めるような体制を作ることが大事だと思っています。
その他には、オンライン懇親会の実施や、緊急事態宣言の前は人事と内定者4~5人だけ集まって人狼ゲームや桃鉄などの遊びを交えた交流会も実施していました。
私たちも基本的には強制系の課題はありません。
サツドラはドラッグストアで働く際に登録販売者の資格があった方がプラスになるので、もし入社前に勉強したい人がいればフォローをしていますが、強制ではありませんね。
ブライダル企業での内定者には、「カラーコーディネーターなど取得したほうが良いですか」と聞かれることもありますが、必須ではないと伝えています。
それよりは、学生ならではの体験を思いっきりしてきてほしいという考え方です。
2社とも、本人の希望がない限りは強制的な課題はないんですね。代わりに、本人の意思があれば勉強をサポートしていることがわかりました。
ところで、コロナ以前は内定者懇親会が鉄板企画だったと思いますが、オンラインが推奨されるなかで内定者同士の関係をどのように深めていらっしゃいますか?
オンラインに限らずですが、早い段階でお互いの共通点を見つけられるよう工夫しています。考え方や価値観、経験、趣味など、何か共通点があれば、初対面でも話しやすくなるものです。
自己紹介を回すなど、自分のことを発信する場を作って「この内定者にはこんな共通点があるので話しやすいな」と自然に感じられるような支援をしています。
また、内定者用のSlackワークスペースも作っていますね。社内チャンネルよりも、自由度が高くなるのでいいかなと思っています。
私も内定者用のZOOMアカウントの共有と、Slack内での部活立ち上げなどをおこなっています。
ZOOMやSlackなどを活用しながら、オンライン飲みをしたり、一緒に好きなミュージックビデオを見たり、使い方は自由です。
決して強制参加させるのではなく、オンラインの場所と機会提供をして、人事が全体のモニタリングをする体制をとっています。
その中で、1つ工夫しているのは、コミュニティマネージャーを置くことですね。
たとえば、15名採用する場合は、3名ほどをコミュニティマネージャーと見込んで採用をおこないます。
本人にも前もってコミュニティマネージャーを任せることをお伝えし、内定者同士の取り組みが盛り上がるよう役割を与えていますね。
採用したメンバーに場づくり側に回ってもらうことで、コミュニティマネージャーはほぼ確実に辞退しなくなりますし効果的です。
内定者の中で役割を与えておくことで、人事が介入するよりも自然な盛り上がりが生まれていくと思います。
Q. 内定者とのコミュニケーション方法について
最後に、内定者とのコミュニケーション方法についてお伺いしたいと思います。内定者とは、どんなタイミングで、どういった方法でコミュニケーションを取っていますか?
メールやMessengerなど限定せずに、学生本人が連絡を取りやすいツールで連絡をとっています。ただし、何かあったときのホットラインとして、公式な連絡はメールで分けて運用していますね。
実際に使っているコミュニケーションツールの半数はLINEです。次いでインスタとTwitterのDMが多くなっています。FacebookのMessengerは、今や過去の遺産ですね(笑)。
ちなみに、内定者と連絡を取っていると、人生相談や恋愛相談といった話になることもあります。彼氏に振られたと言って、夜中に泣きながら電話をかけてきた学生さんもいます。
もちろん、こういったことはあくまで一例に過ぎないですが、やはり大事にしているのはリアルタイム性です。
「本人が連絡したいと思っている時に即時返信する」「どうしても時間がとれなければ、別途日程を組み直す」など優先的に対応していくことで、学生が心を開いてくれるのではないでしょうか。
Slackでリアクションがなかったり、あまりログインをしていない方に声掛けするタイミングも大事ですよね。
部活や学業など、学生時代にやることが決まっていて忙しい方のレスがあまりないことは、そこまで不安視していませんが、今までアクティブに連絡をくれていたのに、急に非アクティブになった方がいたら注意して見るようにしています。
もし少し気になる学生がいて声掛けをするのであれば、個別ではなく全体に向けて「先輩たちもこの時期に悩んでいたので、何か相談したい人はいますか?」といった、全員に共通する質問で問いかけてみます。
それでもリアクションがなく心配であれば、「この前、こんな発信してみたけどどう?」といったように、そっと寄り添うようにしています。
あえて広く質問を投げかけた上で、当事者にうまくアプローチされるのですね。
私も山崎さんと同様に、とても積極的だった方のリアクションがいきなりなくなった場合は、注意深く見るようにしています。
また、このようなことが起こらないようにするためにも、事前に「この時期は部活で忙しい」といった学生側の情報をできる限り把握するようにしています。
その他には、あまりリアクションの無い学生が興味を持ってくれそうな企画を全体向けにいくつか投げかけて、様子を見たことはありますね。
ただし、基本的には学生同士で連絡を取り合ってもらって、解決するように促しています。
お二人とも、本日は貴重なお話をありがとうございました!