人材の流動性が高まる中で、多くの企業が「自社が求める優秀な人材を採用すること」の難しさに直面しています。
このような中で注目が集まっているのが、自社で運営するメディアを中心として採用活動をおこなう採用オウンドメディアです。
第9回となった今回のHR-Studyでは、ヤフー・マクドナルド・ユーザベースの3社をお招きし、採用オウンドメディアの運用ノウハウについて各社の取り組みをお話いただきました。
- オウンドメディアの運用で効果を出すことができるのか不安
- オウンドメディアの運営を具体的にどのように実践すべきかわからない
- オウンドメディアの運用がなかなか上手くできない
- オウンドメディアを立ち上げたいけど、経営陣から予算をもらえないと悩んでいる
といった人事担当者や経営者の皆様は、ぜひ参考にしていただければと思います。
※本記事は、2021年2月16日(火)に実施されたイベント内容をもとに再編成したものです。
登壇者紹介
筒井 智子|株式会社ユーザベース ブランディングチーム UB Journal編集長
新卒で金融業界向けITコンサルタントとして働く。2006年にリクルートエージェント(現リクルートキャリア)に転職し、キャリアアドバイザーとしてさまざまな職種・業界を担当。2014年、WEB系企業に転職し、BtoBマーケティングに従事。その後フリーランスのライターを経て、2019年に株式会社ユーザベースに入社。カルチャーエディターとしてUB Journalの執筆編集やインナーコミュニケーションの活性化を担う。2020年1月より現職。
干場 未来子|ヤフー株式会社 コーポレートPD本部 採用企画部 採用ブランディング担当
大学卒業後、上海に留学。帰国後にEコマース企業へ入社。その後オーバーチュア株式会社に転職し、ヤフーの買収にともない転籍。広告事業の営業やプロダクトマーケティング、マーケティング職などを経て、2016年に採用に異動。採用オウンドメディアlinoticeや採用ホームページ、動画、SNS、広告など採用周りのデジタルコンテンツすべての企画運用を行い、採用マーケティングを採用の戦略や実務に活用している。
宮沢 泰成|日本マクドナルド株式会社 人事本部 フィールドHR部 マネージャー
1994年 明治学院大学社会学部卒業。同年日本マクドナルド株式会社入社、営業・マーケティングを経て2015年8月より人事本部へ。マーケティング本部では、主要商材であるフードカテゴリーにおいて複数ブランドの商品開発/マーケティング戦略立案/プロモーション開発/メディアプランニングなどを担当。既存商品のマーケティング戦略だけでなく、ビッグアメリカシリーズなど新ブランドの投入も数多く経験。人事本部ではマーケティングプロセスでの人事領域の課題解決に向けて、従業員のブランディング戦略を策定。
モデレーター
西村 創一朗|株式会社HARES CEO/複業研究家/HRマーケター
新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・中途採用などを歴任。在職中の2015年に「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」をミッションに株式会社HARES(ヘアーズ)を創業後、2017年に独立。今回のテーマである「オンボーディング」を含め採用・人事領域を中心に多数の企業のアドバイザーを務めるほか、人事系イベントのモデレーター/ファシリテーターとしても活躍。著書に『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。
[勉強会の内容をまとめたスケッチノート]
目次
LT1. ユーザベース筒井さんに聞く、採用オウンドメディア運用ノウハウ
株式会社ユーザベースで、UB Journal編集長とインターナルブランディングの担当をしている筒井です。
弊社は、主力サービスである経済情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」をはじめ、複数の経済情報に特化した事業を展開しています。
そして、組織としては世界中の才能あるメンバーが集まり、その才能を最大限に発揮できるようなカルチャー、そして一人では超えられない壁を全員で乗り越えていけるチームがあるような会社であり続けたいと考えています。
そのため、弊社では採用プロセスにおいて、下記「3つの誓い」を大切にしています。
面接時には、特に「バリューフィット>ミッションへの共感>スキル」を重要視して採用をおこなっています。
その中で採用活動の一環として、採用オウンドメディアにも積極的に取り組んでいます。
弊社の特徴として、採用オウンドメディアは人事担当者ではなく、ブランディングチームで運用を担当しています。
コンテンツの制作も、ブランディングチームとリクルーティングチームで連携を取りながらおこなう体制を取っています。
UBが持つ多様性、組織カルチャーを伝え、強いブランドを確立するために
採用活動に関するオウンドメディアとしてメインで運用しているのは、ブログ形式のオウンドメディアである『UB Journal』と『UB note』の2つです。
これらのオウンドメディアは、自社のカルチャー醸成にも有効だと考えており、読者ターゲットは採用候補者だけでなく、各サービスのユーザー、投資家、そして社内のメンバーなど含めて、幅広い人にリーチすることを意識しています。
カルチャーの醸成という視点が強いからこそ、ブランディングチームが主軸となりメディアの運営をしています。
UB Journalは少し固めの印象があり、「UB Journalを見ただけでは、働く現場のイメージが湧きづらい」と、採用候補者や若手の方が感じているのではという課題感がありました。
ですので最近では、もう少し現場のカジュアルな雰囲気を伝えるためのコンテンツ制作も強化しています。
採用オウンドメディアの運用で大事にしている3つの基本姿勢
採用オウンドメディアとして大切にしていることは、以下の3つです。
- リアルを伝える(飾らない)
- ひたすら現場に寄り添う(聴く)
- 結果を集めて、広める(喜ぶ)
1. リアルを伝える(飾らない)
「無駄に盛らない」「わかりづらい表現をしない」といったことを通じて、ありのままを伝えられるようことを意識しています。
たとえば、スタートアップ界隈の人の中には、「採用の機会を~」ではなく、「採用のオポチュニティが~」みたいな、あえて業界用語や尖った表現をすることがあるかと思います(笑)。
その言葉一つひとつを取って、「本当に現場でリアルに使われているのか」という点を見極めています。
2. ひたすら現場に寄り添う(聴く)
現場目線のコンテンツを作成するために、日々ひたすら現場社員に寄り添って、どんな人が欲しいのか、どんな課題があるのかを聞き出すようにしています。
役員陣は取材慣れしていますが、現場のメンバーは、自分にスポットが当たり、あれこれ取材で質問されることに慣れていないケースも多いです。
なので、社員向けの取材をする際は、事前に質問を共有するなど細かい配慮を心掛けています。
3. 結果を集めて、広める(喜ぶ)
最近意識していることは、「この記事が採用の決め手になった」ということを、成果として社内に共有・報告することです。
もちろん、UB JournalやUB noteを通して、すぐに採用が決まるわけではありません。
でも、記事による候補者への動機付け、入社意思決定の後押しがおこなわれることは多々あります。
小さな成果でも一つひとつ拾いにいくことで、採用への貢献度を社内に広めることは、重要な視点であると思っています。
コンテンツの広がりと共に、効果が定量的に見えるようになってきた
2018年から開始したメディア運用の成果としては、「社内での取り組み評価」と「スカウト返信率の向上」の2点を挙げたいと思います。
成果①:UB Journalの取り組みが評価され、LinkedInや動画コンテンツにもチャレンジ
まず社内でUB Journalの認知が広がったことで、他事業部から声がかかり、採用予算ではなく事業部付けの予算で新たな動きがあった点です。
具体的には、事業部予算で上海に出張してLinkedIn用の動画コンテンツや英語コンテンツを作成し、それらのコンテンツをUB Journalに掲載しました。
UB Journalが単なる「採用のためのメディア」としてだけでなく、事業部でも活用できる「会社としてのメディア」に変化した点が成果と捉えられると思っています。
成果②:スカウトメールにコンテンツURLを付けた結果、返信率が大幅に向上
次に、UB Journalでは、KPIに「スカウトメールの返信率」を置いていた時期に、スカウト返信率が10.2ポイント以上も向上したという成果を出すことできました。
某ダイレクトリクルーティングサービス提供社に聞いたところ、スカウトメールの平均返信率は5~7%とのことでしたので、オウンドメディアの運用が平均値より高い成果に繋がっているのではないかと考えております。
ある記事を公開した後、ビズリーチ、Wantedly、Linkedinなど各種媒体での返信率が全体的にアップするなど、具体的なデータも出てきています。
スカウト返信率の上昇は、自社での採用力向上にも貢献するため、結果的にエージェントに掛かるコストダウンにも繋がると考えています。
社内からも「リファラル採用のときに記事コンテンツをつけて送付することで、応募率が上がった」という声も出てきました。
また、この他にも、カジュアル面接前にUB Journalの記事を読んでもらうことで、面接官の説明コストを削減していく効果もあると期待しています。
「採用広報」ではなく「HRマーケティング」として
最後に、なぜ私たちが「採用広報」ではなく、「HRマーケティング」をおこなうのかについてお話できればと思います。
採用活動は、候補者との面接前後だけの取り組みでなく、入社いただいてから活躍するまでの長期間の施策として設計をしていく必要があります。
上記図は、ビズリーチさんが作成された採用マーケティングのファネル図です。
入社前に重きを置いた「採用広報」と異なり、弊社は、入社後のインナーブランディングまで意識した「HRマーケティング」として採用活動に取り組む必要があると考えています。
LT2. ヤフー干場さんに聞く、採用オウンドメディア運用ノウハウ
ヤフー株式会社の採用企画部で、採用ブランディング全般を担当している干場です。
ヤフーでは採用活動の中で、ブログ形式のオウンドメディア『linotice』、採用ホームページ、採用動画、SNS(Twitter・Facebook、Linkedin)といったデジタルコンテンツを運用しています。
ヤフーは社員数がとても多く、年間の採用数は数百名規模となります。
既存のチャネル活用だけでは採用の限界があると感じていたため、コンテンツプラットフォームとしてlinoticeの運用を2016年に開始し、最近ではインナーブランディングのツールとしても活用しています。
弊社の採用活動は「エンジニアに始まり、エンジニアに終わる」と言っても良いほど、採用ターゲットの多くがエンジニアですので、エンジニア向けの訴求を強く意識して運用しています。
linoticeの運用で大切にしている4つのこと
linoticeの運用で大切にしていることは、次の4点です。
- 継続する強い意思
- 目的、訴求ポイント
- 社内の連携体制
- 効果測定
まず、何より重要視しているのは、「1度始めたら絶対に止めない」という継続する意思です。
ヤフーは人事の中に運用担当を置いているため、リソースの確保が大変なのですが、月に1~2本のペースだとしても質を重視しながら、継続的な運用を心掛けています。
次に、記事ごとに「なぜそれを書くのか」「候補者に何を伝えるのか」「どのような態度変容を期待するのか」といった訴求ポイントを必ず企画段階で精査する点も意識しています。
弊社では外部のライターにお願いすることが多いので、記事の目的や訴求ポイントがぶれないように、取材前に入念な打ち合わせをおこない、ターゲットや記事構成、訴求点をすり合わせることに注力しています。
3つ目のポイントは、社内連携です。
記事では大抵の場合、社員にインタビューをお願いするので、インタビュイーのアサインを依頼する部門人事や各サービス担当者、エンジニアとの日頃の関係構築も大切にしています。
そして、4つ目は効果測定についてです。
弊社では、さまざまなツールで効果測定をおこない、どの記事が何件のエントリーにつながったのか、採用ホームページ以外の各種ページからどのような経路でエントリーにつながったのか、幅広い視点からデータ分析をしています。
PV数を追うよりも、1つの記事を公開することで複数のチャネルからどのようなアクセスが集まり、採用のきっかけになったのか?を効果分析して、社内報告するよう意識しています。
最大のメリットは「潜在的な採用候補者」を集客できること
採用ホームページに来てくださる方は、すでにヤフーに少なからず興味を持ち、就職・転職活動をしている顕在層の採用候補者かと思います。
しかし、linoticeを運用することで、「ヤフーで働くことは想像していなかったが、技術の話やヤフーの働き方、制度に関する記事をきっかけに興味を持ってくれる」といった潜在的なヤフーの採用候補者を集客できるようになったことがとても大きなメリットだと感じています。
もちろん、顕在層の採用候補者の皆さまにも、linoticeの記事がヤフーについてより理解するための材料となるので、大きなメリットだと感じています。
また、弊社のように社員数が多い企業の場合、採用オウンドメディアを社内広報として活用できる点もメリットになると考えています。
現在、ヤフーは7,000人規模の企業になりますが、すぐ隣の部署やチームがどのようなミッションを持って、日々どのような業務に取り組んでいるか知らないケースも多いです。
社内交流の機会も多く設けていますが、linoticeの記事があることで、より社員の相互理解が促進されていると感じています。
その他にも、linoticeの記事を通じて「ヤフーの福利厚生っていいなぁ」「ヤフーの働き方っていいなぁ」と社員に再認識いただくきっかけとなるなど、単に採用のためのメディアではなく、社内交流を活性化させ社員が改めて自社で働くことに誇りを持ったり、ファン化するツールになっていると思います。
自社のファンになることは、社員の知人紹介(リファラル採用)にも繋がっていくと思いますので、インナーブランディングも採用には大切な要素だと捉えています。
最近嬉しかったのは、社員から「自分もlinoticeに声掛けをしてもらえる人財になりたいです」という声が寄せられたことです。
linoticeに個人やチーム、プロジェクトとしての取り組みが取材・掲載されることが、会社としての一つ評価と受け止められている証拠であると思っています。
人事制度の中で評価されることに加えて、linoticeに取り上げられることが社員評価と認識されるのは、社員のモチベーション向上にもつながります。
それもlinoticeを運用しているメリットですし、そういうメディアとして社員に捉えていただけることはとても嬉しいです。
採用ホームページをリニューアル!「1つのサービス」としてPDCAを回し続ける
linoticeの運用方法と併せて、採用ホームページの運用についてもお話させていただきたいと思います。
弊社では「ポテンシャル採用」と「キャリア採用」の2軸から通年採用を実施しているので、採用ホームページも新卒と中途を分けずに運用しています。
昨年、採用ホームページのリニューアルを実施したのですが、その際に大切にしたことも先ほどの記事制作と同じく「目的を明確にすること」です。
リニューアルにはそれなりにコストもかかるので、リニューアルすることが目的にならないよう、リニューアル前には、「なぜリニューアルが必要なのか?」と採用ホームページの課題を詳細に洗い出しました。
そして、これらの課題を可視化・共有し、「どこを改善するか?」と目的を定めたうえで、リニューアルを実施しています。
リニューアル後は採用ホームページを一つのサービスと考え、ただ数値を拾って確認するだけでなく、改善のためのPDCAを回す運用を意識しています。
一般的に、採用組織にマーケティング担当者がいる企業は少なく、採用ホームページは公開したらそのまま放置してしまう企業も多いと思います。
しかし、 企業のサービスの一つであると位置付けられていれば、日々の課題抽出と改善活動はとても重要なはずです。
たとえば、募集要項の書き方1つにしても、求職者が検索した際にヒットしやすくなるよう、クエリ検索数などを調べた上で職種名を決めたりしています。
また、採用ホームページの募集要項に、そのポジションと親和性の高いlinoticeの記事リンクを貼ったり、その仕事をしている社員の声を掲載したりすることで、候補者の業務理解を深めたり、やりがいが伝えられるような工夫もおこなっていて、採用ホームページの質を落とさない運用を日々心掛けています。
LT3. マクドナルド宮沢さんに聞く、採用オウンドメディア運用ノウハウ
日本マクドナルドの宮沢です。
私は1994年にマクドナルドに入社し、店舗経験を経てから長くマーケティングの部署に在籍していましたが、5年前に人事に異動し、現在は全国約17万人のクルーの採用担当をしてます。
筒井さん、干場さんと異なり、私はかなりマスに向けた採用オウンドメディアの運用をしています。
全国約17万人いるクルーの採用を管理してるため、「面に対してどのようにアプローチするか?」という視点で日々取り組んでいるのが特徴です。
どのようにマクドナルドのクルーを採用しているのか?
マクドナルドでは、採用計画の立案から面接などの実際の採用業務まで全て各店舗に任せています。
直近の採用状況は、コロナの影響もあり、ありがたいことに大変追い風となっています。
上図は、2019年1月からの採用の動きを表していますが、直近で黄色の応募数がぐっと上がったことがわかります。
また、コロナ禍になり応募数の変化だけでなく、採用チャネルも大きく変化をしています。
今までの採用活動は、友人紹介が過半数以上を占めていたのですが、2020年はオウンドメディア経由の採用がぐっと存在感を増しています。
マクドナルド流「採用マーケティング」の考え方
ここから、マクドナルドの採用マーケティングについてお話できればと思います。
採用マーケティングの考え方は、ハンバーガーのマーケティングと基本的には同じだと考えています。
下図のように比較するとわかりやすいですが、マクドナルドのマーケティングは図の左側のプロセスを追っていますが、採用マーケティングは右側のように置き換えられます。
一般のマーケティングは、「商品(ハンバーガーなど)の認知⇒購入意向⇒購入⇒リピート」の流れで進むのに対して、採用マーケティングでは、「求人情報の認知⇒勤務意向の醸成⇒採用・勤務開始⇒リテンション(継続勤務)」という流れになります。
このプロセスの中で、上流に位置しているのが、採用オウンドメディアによる採用活動であると考えています。
そのため、職場でのオンボーディング、リテンション、退職まで長期的な目線からコンテンツを考えていく必要があり、その中で「採用オウンドメディアを通じて我々がどのような職場を目指すのか?」という職場像を明確に表現しなくてはならないと思っています。
職場像を良く書きすぎてしまうと、入社後のリアルとの差が大きく離職につながってしまう可能性もあるため、「きちんと長期雇用に繋がる内容か?」を見極めてオウンドメディアに記事を載せていきたいと考えています。
EVP(Employee Value Proposition)の設定が他社との差別化を生み出す
ここで、当社が大切にしているEVP(Employee Value Proposition)についてご紹介したいと思います。
EVPとは直訳すると「職場の価値」という意味になり、求職者のニーズとEVPの重なりを大きくしていくことが、魅力的な職場を作ることに繋がるという考え方です。
具体的なEVPの作り方は、以下の通りです。
具体的にEVPを作る際は、左側に記載のある要素よりも、右に記載のある要素を意識することが重要です。
給与などの待遇面は数字で表せる基本的な価値として多くの求職者が気にするポイントですが、競合と比較されやすく、これだけで採用することはなかなか難しいかと思います。
そのため、なるべく右側の目に見えない価値を見定め、言語化していくことで、他社との差別化につなげていくことが重要であると捉えています。
そして、ブランド、カルチャー、ピープルなどの要素を大切にすることを前提に、マクドナルドのEVPを下記のように設定しました。
「フレキシビリティ・ファミリー&フレンズ・フューチャー」この3つのキーワードを共通言語として、全世界のマクドナルドが同じEVPを定義しています。
中でも、フレキシビリティが最も弊社のユニークなポイントです。
具体的には、マクドナルドはライフスタイルにあわせて好きに働けること、好きなキャリアにつながるように職種も自由に選べることが価値となっています。
もちろんシフト調整は大変ですが、フレキシビリティをマクドナルドのEVPと掲げているからこそ、働き方のフレキシビリティをメインにPRを実施しています。
視聴者からのQ&A~パネルトーク~
皆さん、ありがとうございました!
ここからは、視聴者の方に投票で質問を選んでいただきながら、パネルトークを進めていきたいと思います。
Q. オウンドメディア運営における失敗は?
失敗談というわけではありませんが、運用開始からしばらくはKPIの置き方に試行錯誤しました。
公開本数や、記事ごとのPV数などを追いかけていた期間もありましたが、採用に直結する数字にはなりにくいことがわかって・・・。
記事ごとのターゲットや目的を意識せずPV数だけを追ってしまうと、意図とは外れた方からの応募が増えてしまうことにもなりかねません。
KPIは今もQ毎に見直し、最適なものに都度調整しています。
まったく同じです!
弊社でも5年前は、採用オウンドメディアのKPIの正解が分からないまま運用をしていました。
「週に1本は作るぞ」と公開本数のKPIを立てたりして、“苦労対効果”が見合わないこともありましたね。
そのほかの失敗談としては、ライターさんの選定が大変だったことですね。
ヤフーではエンジニア向けの記事が多くなるのですが、技術知識を持っている方が市場には少ないので、ライターさん探しにはとても苦労しました。
初めての方に記事をお願いする時は、正直「賭け」だと思っています。ライターさんの過去記事を見ても、合わないときは合いませんしね。
インハウスですべて制作できれば、社内カルチャーも理解した上で記事制作できますが、外部に依頼するときは情報の共有も難しいところです。
ちなみに、外部のライターさんを見つけるコツはありますか?
良いライターさんから、ライターさんの知り合いを紹介してもらう方法が、角度が高いと思っています。
1人目のライターさんを探すときは、他社のオウンドメディアの編集長に聞いたりして、評判のよい方を探すのもいいかもしれませんね!
「良いライターさんを知りませんか?」という相談よく来るので分かります!
でも、紹介しすぎた結果、弊社の記事を書いてもらえなくなっては困るので、紹介するのをしぶっちゃうときもありますよね(笑)。
宮沢さんは何か失敗例はありますか?
当時、主婦(夫)のアルバイトさんを増やしたいと考えていまして、主婦(夫)の皆さんに興味を持ってもらえるように「主婦力は即戦力」というコピーをつけたことがありました。
私としては「このコピーはとても良い!」と思っていたものの、リリースしたあとに非常に評判が悪かったことが判明しまして(笑)。
先ほどもお話した「求職者を理解した上で制作する」という点、ターゲットのインサイトをとらえることが重要だと実感した失敗事例ですね。
採用オウンドメディアでは「いかにリアルを伝えられるか?」が大切で、飾らないのが大事なんだと学ぶことができました。
Q. 記事のネタ探しをどのようにしていますか?
弊社には約17万人のクルー(アルバイト)がいるので、ちょうど今、クルーにアンケートを取り始めています。このアンケート結果を記事のネタに活用していこうと計画中です。
アンケートの中身は、「お休みの日に何してる?」「好きな芸能人は?」などカジュアルな質問も多く、クルーのパーソナリティが浮き彫りになるような内容となっています。
このアンケート結果は、今年中にマクドナルドのオウンドメディアで登場してくると思いますので、ぜひ期待していてください。
弊社では、採用ポジションありきで記事ネタを計画し、制作スケジュールを引いています。
ただ、採用ポジションありきだと記事テーマが偏ってしまうこともあるので、中途入社者に入社後1か月くらいのタイミングでヒアリングをして、新たなネタ探しも行っています。
聞くポイントとしては「どの情報に惹かれて応募・入社したのか」「記事を通してユーザベースはどういう会社だと感じたか」など、具体的に聞き出すことですね。
あとは毎日、ひたすらSlackでいろいろなチャンネルを覗いて、ネタ探しをしています。
弊社はサービスを作ることが多いので、新たなサービスを記事のネタにしていますね。
そのほかにも、副業やリモートワークなど働き方についてテーマをピックアップして、訴求することも多いです。
採用ホームページでは「こういう制度がある」と明記していますが、採用オウンドメディアでは「制度を具体的にどのように活用し、社員は制度の利用に対してどんな風に感じているのか」と、書き分けることを意識しています。
ちなみに、linoticeの記事を社員に見てもらうために、次のようなポイントも意識しています。
- 記事公開ごとに社内に周知
- キャプションに「これを読むとこんなメリットが」などポイントを載せる
- この記事は「読了何分です」と書くことでクリック率を上げる
- メインビジュアルもクリック率アップを意識して作り込む
- Linkedinで拡散する際は「ヤフーで働く社員に通知する」という設定も入れる
Q.採用オウンドメディアの予算確保はどうやっていますか?
採用オウンドメディアを活用することで、エージェントの割合がどのくらい減って、コストがいくら削減できたのかを伝えるよう意識しています。
実際に、「今後3年分の採用予算は削減しました」と役員陣にプレゼンしました。
採用ブランディングの予算について経営陣にプレゼンすることはありませんが、人事部の予算の中でどのように配分するか、という話し合いはしました。
先にご紹介したように、既存チャネルの運用だけでは採用候補者の量も質も確保できないことが背景にあったので、人事部内で採用オウンドメディアの必要性が認知されていたんですね。
その後、人事部から財務部を説得するために、「中途入社者の~%が記事を読んでいる」と具体的な数値で示したりして、交渉を進めました。
採用オウンドメディアの記事は、取り引きするエージェント担当者に、弊社の採用ポジションの業務内容について理解してもらうためのツールとしても役立っています。
数値にあわせて、記事の使い方などを丁寧に財務に伝え、予算確保をおこないました。
弊社では、求人媒体にたくさんお金を使うよりも、採用オウンドメディアに投資したほうがROI(投資利益率)が高いと伝えて予算を確保しました。
オウンドメディア活用は、会社のブランディングにもつながりますし、マーケティング部にかけあって予算配分をしてもらったのもポイントですね。
最後に登壇者からメッセージ~採用オウンドメディアの運用を考えている皆さまへ~
採用オウンドメディアは、継続することが何よりも大切です。
ライターさん探しなどでお困りのことがあれば、私のTwitterからお問い合わせください。
採用オウンドメディアを始めたばかりの時期は大変だと思いますが、始めたからには継続する覚悟でやらないといけないと思います。
すぐ閉じてしまうと、逆に企業ブランディングの毀損につながるからです。
採用オウンドメディア運用は、継続と効果測定ができるような体制作りが大切だと思います。皆さんで頑張りましょう!
良いコンテンツを作成するには、企業のありのままの姿を言語化して伝えていくことが大切です。
求職者の気持ちや、EVPを意識した運営をしていきましょう。