こんにちは。ヒトテク研究所 所長の村山です。
近年、多くの人事関連サービス、人事施策の取り組み事例を目にするようになり、実にさまざまな情報が飛び交っているように感じています。そんな中、何を自社に取り入れていくべきなのか、悩まれている人事の方もいるのではないでしょうか。
今回は、流行りの人事施策が本当に自社に合っているのかどうかを判断するための心がけについてご紹介します。
目次
1.人事の世界は新しい取り組みで百花繚乱
昨今、ビジネス誌などを読んでいると、毎日のように新しい人事領域における取り組みが流れてきます。
「リファラル採用」の流れが来たかと思えば、「HRTech」の流れ。新卒と中途でそれぞれ「AI型採用」の話が盛り上がるかと思えば、評価方法で「1on1」や「OKR(Objective and Key Result/目標と主な結果)」を目にしない日は無くなってきたり…。
大企業からスタートアップ企業の多岐にわたる取り組みまで、次から次へと「最新の」「独自の」などの取り組みがスタートしていく領域になってきています。そのため、勤勉な人事であればあるほど情報が溢れてきて、日常業務の上に何を取り入れるのか、その取捨選択は困難な状況になってきています。
一方で、「ウチの人事は新しい取り組みをしない。なんで他所ができてウチはできないんだ!」と経営陣に言われている人事の皆様も数多くいるのが現実です。経営者は“新しいモノ好き”なので、ビジネス誌を賑わす方法や経営者仲間に「これ、いいよ!」と言われたものを導入してみたくて仕方ありません。
しかし、それぞれ安易に自社に導入すると手痛い失敗が待っているのが人事施策でもあります。そして、実際に失敗したときに責任を取るのは人事なので、ここは板挟みになりやすいところではないでしょうか…。
2.その人事バズワード、本当に新しい?本当に自社に必要?
そのため、人事に求められてくるのは、「流行りの人事施策」に対する迅速なジャッジメントを取れる能力になります。ワードは新しいが、中身の施策はこれまでと具体的には何が違うのかなど「検証する目」が必要です。
例えば、
- リファラル採用と縁故採用は何が違うのか?
- OKRはMBOをMECEで分けただけ?
- 退職予測は、これまでの上司の報告で誤差率10%以内?
などなど。
多少乱暴ですが、上記の質問に答えられる程度には、新しい施策を斜めに見るトレーニングをしておくことが必要だと思います。
さらには、経営者に対して「それは、すでにウチでやっている施策の焼き直しですよ!」と、伝える事ができれば尚良いでしょう。
3.自社と似た組織の成功事例はマネてよし。
華やか有名企業の施策をマネるのは危険信号。
人事関連の読み物を見ていると、急成長企業やグローバルトップ企業の取り組みが成功事例として取り上げられる事が多くあります。しかし、その事例の因果関係を考えると、ちょっと疑問が残ってしまいます。
「A社の成功事例」は、「A社だから取り組めている人事施策」であり、その人事施策があることによって、その会社が成り立っているわけではありません。つまり、編集によってその因果関係の方向が逆になってしまっているケースが多く見られるのです。
とはいえ、取り組み自体が新しく、「実際に人事でも導入したい!」施策やサービスが見つかる場合も当然あります。しかし、それが自社に適した施策であるかどうかはまた別の話。こちらはこちらで、もう一段階ジャッジする必要があります。
それは、「実際の導入事例に挙げられている会社は自社とでは、どの程度の違いがあるか」という点です。
- 社風(新しい取り組みに対する抵抗度)
- 従業員人数(浸透させるまでの労力)
- 社歴(慣習の定着度)
- 事業部数(事業部による組織風土の違い)
- 年齢構成、男女比率、役員の女性比率(ワークライフ関連施策の需要度)
などなど。
これらの項目において異なる点が多いようであれば、成功事例のままでは導入できない可能性が高いです。
逆に、自社と似通った企業が導入している場合は、成功する可能性が高くなります。人事は同業他社の導入事例を気にすることが多いのですが、こういった背景を考察すると、あながち保守的なだけでなく合理的な意味合いも含んでいると捉えることができます。
4.効果検証できるまで、やり切れないなら導入しない
最後は採択した施策をやりきるしかないのですが、人事施策は効果が出るまでに最短でも3か月はかかってしまいます。そして、長いものだと経年単位でなければ成果が見えてこないものも多くあります。
その間にも、次々と新しいバズワードが世の中に出てきて、あれもこれもと真似をしているうちに、ひとつひとつの施策が中途半端に終わってしまうなんてことも。。。
その為、どんな施策も、スタート時には必ず「いつまでやりきるか」のゴール設計を明確にすることが重要になります。そして同時に効果検証も。
人事施策などは「時間が経つと当初の目的も忘れさられ、結果として形骸化してしまう…」なんてこともよくある話で、「事業部の意向で評価が歪められる」なんてことも多々あります。これではまともな計測は、到底できません。
一度決めたら一定期間やりきるための合意を経営と握り、効果検証をしっかり出していく。この繰り返しで自社に最適化した人事施策が組みあがっていくのです。
バズワードに翻弄されるだけでは、なにも会社に残らないのです。