「経営者を育てたいなら、経営者をやらせる」しかない|抜擢を成功させる秘訣 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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「経営者を育てたいなら、経営者をやらせる」しかない|抜擢を成功させる秘訣

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

メディア事業であるAbemaTV・AWAをはじめ、ゲーム事業であるCygames・サムザップ、広告事業のCyberZ・CyberBullなど80を超える子会社を抱え、事業を生みだし拡大させる、自前成長を続けるサイバーエージェント。

驚くべきことに、その子会社の社長は、社会人になったばかりの若手社員の中からも多く抜擢されています。なぜ、サイバーエージェントは思い切った抜擢ができるのか、その抜擢基準、抜擢後の育成はどうしているか。

そこで今回は、サイバーエージェントが持つ「抜擢ノウハウ」について取締役人事統括の曽山さんにインタビューさせていただき記事にまとめました。

具体的な内容が満載で、多くの学びをいただきました。是非、ご覧くださいませ。

サイバーエージェントが考える抜擢とは?

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抜擢とは「社員の突然変異」を期待して、成長の場を提供すること

―そもそも、サイバーエージェントでは抜擢をどのように考えているのでしょうか?

曽山氏:抜擢はその人に新規事業を任せたり、他の同期よりも早く管理職のポジションを与えたり、本人の現状の能力を超える未経験ゾーンに引き上げることです。

「新会社ができて社長になる」「部長というポジションを経験したことのない人に任せる」など、大きな成長を期待して実施します。社員の突然変異を期待した異動のような感じかもしれないですね。抜擢される人は、100人に1人くらいの優秀な人材だと思います。

私たちは、「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンがあって、その実現のために事業を成長させる多くのリーダーや経営者が必要だと考えています。そのために、弊社ではよく若手社員を子会社の社長に抜擢しています。

たとえば「経営者を育てたいなら、経営者をやらせる」しか方法はない

―若手の方がよく社長に抜擢されるのは、何か理由があるのでしょうか?

曽山氏:そもそも、経営者を育てるために必要なことは何かと考えたときに、結局、「経営者をやらせないと経営者は育たない」です。これがすごく重要です。

リーダーを育てたいと思うのであれば、リーダーをやらせることが一番です。いわゆるリーダーとして成長するための「7:2:1の経験則」で、効果的なのは、7割の現場の経験、2割の上司からの薫陶、1割の研修や読書と言われている通り、リーダーを育てるためには、リーダーを経験させないと無理だと私も思います。

当社では年間10以上の新規事業を立ち上げますが、このインターネット産業における新規事業は、20代にとって、もちろん未知な領域の新規事業ですが、40代にとっても経験したことのない新規事業なんですよね。たとえば、スマホの動画分野の新規事業で言えば、42歳の私からしても未開の土地ですし、22歳の1年目の社員にとっても当然未開の土地で、「未開の土地度合い」でいうと全くフラットなんですよ。

そういった背景があって、新規事業に関して、私が社長をやるパターンと、22歳が社長をやるパターンだと、どちらのリスクが大きいかで考えてみます。

例えば現在42歳の私が社長をした場合、人事責任者として培ってきたこれまでの経験に基づく仕事を捨てて新規事業にチャレンジするとなると、人事の仕事に何らかのマイナスが生じるというリスクがあります。それと、仮に失敗した時に、経験豊富な42歳の私の方が、受ける精神的ダメージが大きいという、マイナス面が何個もあります。

それが、22歳の新入社員が社長になる場合は、これまでに抱えている仕事もないから組織上のマイナスはないし、例え失敗したとしてもそこまでマイナスはありません。むしろ、失敗から学ぶことの方が大きいでしょう。特に当社では「失敗した敗者にはセカンドチャンスを」と明言している通り、会社がセカンドチャンスを提供している場合は、失敗からの学びを活かして次の挑戦ができるので、次回は成功確率があがるのは間違いありません。

そう考えると、下手すれば22歳のほうが、成功打率が高いかもしれません。同じ素人であれば、新しい分野に若い優秀な人を抜擢することは、当然のことだと思っています。

なぜ思い切った抜擢ができるのか?

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失敗することは承知の上だから、思い切って任せることができる

―とはいえ、若手の方に社長を任せるのも相当なリスクがあると思うのですが、なぜ任せることができるのでしょうか?

曽山氏:まず、「リスクをとる人を評価する」というサイバーエージェントの中で大事にしている考え方があります。リスクをとらずに新しいものは生まれないということを、経営陣全体が理解しています。

また、たとえ30代、40代に任せたとしても、同じぐらい失敗するんですよ。なぜかというとそれまでに経営者をやってきてないからです。ですので、年齢を重ねた後に任せて経営が成功すると思っているとしたら大間違いだというのが根本にあります。

―30代、40代のほうが、社会人経験も豊富なので、リスクは少ないように思ったのですが、そういうことでもないのですね。

曽山氏:やはり、社長という役割は、社長をやらないとわからないものです。

社長は、マネージャーとは違います。マネージャーは決められた目標があり、それに対してマネジメントをする役割があります。一方、社長は目標を決める立場の人間になります。ここが大きく違うんですよね。

なので、1年目だろうが2年目だろうが社長を任せて、目標を決めさせ、自分でその戦略を考えさせ、やらせることが1番です。

ここでポイントが1つあります。「できるのか」という話です。彼らはできるのか?本人たちはどう思っているかは別として、総合的に見るとできません。これがポイントなんです。

初めての社長業に就き、できない中で、すぐできるようになる人もいるし、なかなかできるようにならない人もいます。それでいいんです。なぜかというと、日々の中で訓練され、どんどんできるようになってくるんですよ。最初から社長ができる人は滅多にいないと思います。

要求することはただひとつ「意思決定は必ず社長がする」こと

―失敗することを前提して抜擢しているのですね。

曽山氏:そうです、いいんです。その代わりに私たちが要求しているのは、意思決定は必ず社長にやらせることです。

たとえば、新卒5人で会社を設立したとします。そうするうちに、少し事業が上手くいかなくなってくると、戦略の方向性が違うといった理由で喧嘩になったりします。そうした中、仮に社長が判断に悩み、私に相談に来た場合「どうしたいの?」「どういう着地にしたい?」と繰り返し聞いて、基本的には本人たちに解決案を発言してもらうようにしています。

もちろんアドバイスはしますが、「最後決めるのは誰?私が決めた瞬間、私が社長になっちゃうけどいい?」と必ず言います。

そうすると当然、「自分はもっとやりたい。自分はこうしたいと思います」となるので、「うん、じゃあやってみよう」というように、社長自身に最終意思決定者は自分だと思わせることがすごく重要です。

どのような人材を抜擢しているのか?

「言うことが壮大で、やることが愚直」な人材は成長する

―どのように抜擢する人材を決めていくのでしょうか。

曽山氏:弊社社長の藤田が言っているのは「根拠がなく大きいことを言う人間は見どころがある」ということです。

抜擢人材で活躍するパターンがあって、それは、「言うことが壮大で、やることが愚直」。このワンセットができている人材は、私が見ている限りでは、どんなキャラクターであっても必ず成長します。

大きいことを言うのは、それだけでまず勇気がいるんですよね。その内容が、「数十億人のユーザーを集めたい」「売上を1兆円つくりたい」でもいいですし、もっとあいまいでスケールのあることでもいいと思います。

その言葉が本気であれば、言った人間は常にその方向に向かいます。「営業をやれ」となっても、「企画を考えろ」となっても、自分が言った目標に向かうので、必ず逆算志向という習慣が働くんですよ。目標から、今の自分の現実を直視して、何をするのが最善なのかを考えて行動します。

逆にダメなパターンは何かというと、「言うことが壮大でやることが派手」という人です。そういう人は地に足がついていないので、すぐに消えてしまいますね。

―それ以外に見ている部分はあるのでしょうか。

曽山氏:基本的には、言うことが壮大で、本当に愚直にやれる人間であれば、もうそれだけで十分な感じもします。

サイバーエージェントグループの社長陣を見回しても、全員キャラが違いますね。尖っているタイプもいますし、チームビルディングが得意なタイプもいます。

―共通しているのは、「言うことは壮大でやることは愚直」という部分ですか?

曽山氏:そうです。性格やキャラクターではないです。寡黙でもいいし、ハイテンションでもいいんです。藤田も副社長の日高も全くキャラは違います。CA8といわれている取締役も全員バラバラです。色んな人に可能性があるんですよ。

抜擢は「まずは抜く」の5文字が鉄則

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「穴埋めをしてから抜擢をする」というパターンは絶対に成功しない

―抜擢をする際に意識していること、気をつけていることはありますか?

曽山氏:抜擢の大前提は「まずは抜く」。これがすべてです。

抜擢する際、部署のナンバー1を引き抜くことが多いため、不安もつきまといます。ただ、不安視してそれを論理的に突き詰めると、「今は動かさない方がいい」となりがちです。

よくあるのは、穴埋めをしてから抜擢をするというパターンです。これは結論、抜擢の話が消えていきます。その穴が埋まらないからです。埋まらない間に、毎週の定例会議で、だんだん議題としてぼやけてきて、その話が消えていくことがあります。抜擢ができない会社のほとんどはこの罠に嵌っていると思います。

抜擢は経営判断です。まずはその人を今いる部署から抜いて、新たなポジションに入れるのか入れないのかを決める。その余波で起きることは抜擢した後に考える、と決めておくことがすごく大事です。

―抜擢後、人材が抜かれた事業部の穴埋めなどはどうしていくのですか?

曽山氏:役員会で抜擢を決めた後、どのように穴を埋めていくのかも決めていきます。ナンバー1が抜擢された後の穴埋めで1番簡単なのは、ナンバー2の引き上げです。ナンバー2はまだ難しいとなれば他部署からの異動で埋めていきます。

たとえば、今週の役員会で抜擢が決まったら、翌週には穴埋めプランを決め切ります。今度ナンバー2を引き上げると、その次のポジションはどうするのかと、また揉めることもありますが、その際はまたどうするべきかを決めるんですよ。

―そこまで役員会で決めていくのですね。

曽山氏:そうです。実際やるとわかるのですが、ほとんどのケースで、ナンバー2を引き上げた後のほうが業績は伸びるんですよ。面白いですよね。

ナンバー2を上げて一番伸びたケースは、私が営業本部長から人事本部長に異動した時ですね。これはもう本当に心配したんですよ。私がずっと生え抜きで育ててきた組織だったので。

曽山氏:「社長、私は人事に行きますが、営業組織は大丈夫ですかね?」
藤田氏:「うん、まあそれは色々あるけど、まずは人事を頼む」

そう言われて、ものすごく心配していたのですが、翌月からぐんぐん伸びましたね(笑)。

なぜナンバー1が抜けた後のほうが売上は伸びるのか?

―なぜ抜けた後のほうが業績が伸びるのでしょうか?

曽山氏:だいたいフタをしているんですよ。ナンバー1が効いている部署であればあるほど、ナンバー1が気づかないうちにフタになっているというジレンマがあります。「ナンバー1は抜けないよ」と言っている部署ほど、上にフタがあって、ナンバー2以下が伸びてない可能性があるんですよ。

また、上がいなくなると燃えるんです。たとえば、2011年に「変革」として、当時、広告代理店部門に500~600人いた人材のうち、スマホの新規事業立ち上げのためエース級を150人異動させたんです。

結果、広告代理店部門は400人になりました。残るほうは大変です。大幅に減った人数で売上を維持させなければいけない。ただ、結果的にこの400人は、1年後に営業利益を激増させたんです。

―それはすごい・・・!(驚)

曽山氏:たまにそのときのメンバーと飲みに行くと、「いや、本当にあの時、残れてチャンスでした」ということを言うわけです。「上がいなくなったので。すごくチャンスに感じました」と。

―残った方々が奮起するために、フォローなどはされたのですか?

曽山氏:このときにおこなったことは、「経営からの率直なメッセージ」と「捨てることを決める」という2つです。

1つは、社長の藤田が直接、自分の言葉で広告代理店部門の社員に対し説明をしました。現実をストレートにそのまま全部語り、「いま、スマートフォンの事業に舵を切らないとサイバーエージェントの将来は暗い」などといったことを、率直に全部話したんです。

何も隠さずに率直に話をしたため、社員の間に不安感は生まれなかった。現実を素直に受け止めてくれたと思います。

2つ目が、やらなくていいことを決めました。当時何をしたかと言うと、顧客数を増やす営業活動をしなかったことです。

新規顧客の開拓をストップする代わりに、その時の取引先である顧客の満足度を上げるため手厚いフォロー体制を構築し、それがいい提案や企画に繋がり、結果的に多くの顧客で取引拡大となりました。

抜擢した後は、どのように育てるのか?

抜擢後の原則は、極力放置すること

―抜擢した後はどのように育成をしていくのでしょうか。

曽山氏:抜擢後は、原則は極力放置です。放置とは、「最終意思決定は任せる。基本的にはやらせる」ということです。

抜擢の一番の効用は、裁量権を渡すことです。裁量権が何かと言えば、それは決断する権利であり、自分で決めて実行する権利です。それを渡さない限り、抜擢された人は、絶対に伸びません。

逆に放置せずに介入するのはどういうことか。その人の才能を信じてないということなんです。信じたら見守ることがすごく大事です。

過保護パターンになると、「こんなことをやるといいよ」とすぐに具体的なアドバイスや動き方の指示をしてしまいます。この瞬間、抜擢された社長は、「社長でなくなる」のです。社長というのは、最終意思決定者です。社長に抜擢した以上、最終意思決定をさせることが重要で、「社長であれば、自分で決めるべき」と伝えています。

抜擢を成功させるための3つのフォローアッププラン

―フォロー体制などはまったくないのでしょうか?

曽山氏:そんなことはなく、事業を成功させるためフォローアッププランは3つあります。

1つは、まず新会社の役員に、サイバーエージェントの取締役のうち誰かがアドバイザー的な役割として入ることです。そうすることで、役員会などで相談しやすくしています。致命的なミスがある際は、問題提起や問いかけが入ります。ただ、アドバイスに乗っても最終意思決定はあくまで社長がおこないます。

2つ目は、本社機能のサポートです。経理、法務、人事、広報といった管理部門が新会社向けのプロジェクトチームをつくり、サポートします。

3つ目は、社長同士のネットワークがあることです。弊社では「スタートアップJJJ」という原則設立2年以内で収益化していないスタートアップ事業を対象に推定時価総額でランキング化する制度があります。現在であれば20人ほどのスタートアップ事業の社長が月に月1回集って、各社のトピックスやKPIの共有などを行う会議を実施しており、そこで各社の進捗がわかるんです。

これによって「競争と協調」が生まれます。ここをバランスよくできれば、強い組織になります。スタートアップJJJは、いち早く昇格したい、という競争と、お互い事業立ち上げで苦労している同士意識から助け合える協調の場を生み出しています。

抜擢された人材に、その後立ちはだかる壁とは?

―抜擢された人材がぶつかる壁はあるものでしょうか?

曽山氏:確実にあるのは、人数肥大化によるマネジメント破綻です。チーム人数が10人20人ぐらいはまでは大丈夫ですが、30~50人ぐらいから、マイクロマネジメントができなくなります

そうなると、チームビルディングの課題が出ます。それまでは、どちらかと言うと事業の発掘をしていたところから、組織マネジメントを手がけるフェーズに変わります。これは、別の能力が必要になるので、必ずぶつかる壁と言っていいかもしれません。

チームビルディングで一番重要なことは何かというと、目標が統一化されているかどうかです。メンバー全員が自分たちの目標について当事者意識を持ち、共有化しているかが大事です。

そのため、サイバーエージェントでは、「プロレポ」という取組をおこなっています。これは、弊社の全部署で実施しているものですが、半期に1回、部署全員で集まって、半年後の部署の目標をみんなで決めるという会議です。

自分たちが目指すことを自分たちで決めるため、意見を出したことで当事者意識がすごく高まります。これはスタートアップ事業もすべて行っていて、目標の共有化という面で非常にいい効果を生み出しています。

―それ、いいですね!他には、何かありますか?

リスクを取れるかどうかという話になるのですが、ピボット(方向転換)を極端にできる社長は、大きく伸びますね。これは、最終決定者としてはすごいことです。

リスクを取らないまま、小さく横ばいで成長していく可能性も多くあります。活躍している社長は必ず思い切ったリスクテイクを必要な時にしている印象ですね。

―人に関することでの悩みはありますか?

曽山氏:自分と相性が合わない人についての相談が多くあります。それは仕事の進め方的なものも含め、社長に多大なマネージメントコストがかかってしまっている状態です。ただ、一緒に働く人が悪いかどうかで言うと、本当にわからないんです。

相性が合わないなんて、誰でもあることです。そのため、相性が合わないということはあり得ることを前提に、「社長がマネジメントをしやすい組織につくったほうが良い」と伝えています。

基本的には、トップが経営しやすい環境にすることが1番だと思います。思い切って、その人材を他部署に異動してもらうことも組織全体を考えれば、必要なことかもしれません。

―ありがとうございます。最後に「強みを活かす」に絡めて一言いただければ。

曽山氏:抜擢はその人材の強みをとにかく徹底的に活かすことです。

抜擢された人は未経験ゾーンの中、うまくいかないことばかりだと思います。そんな中で、できる限り自分の強みを自分なりに意識してもらいたいです。

私は、「才能投資」と言っていますが、たとえば、「スピードが強みだと思ったらスピードで戦ってみよう」というように、自分の持っている強みを投資していく考え方で、どんどん強みを伸ばしていってほしいなと思っています。

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