「勝負は最初の3ヶ月」高卒生が企業にもたらす“愛情”と“競争意識”、高卒採用独自の魅力とは |HR NOTE

「勝負は最初の3ヶ月」高卒生が企業にもたらす“愛情”と“競争意識”、高卒採用独自の魅力とは |HR NOTE

「勝負は最初の3ヶ月」高卒生が企業にもたらす“愛情”と“競争意識”、高卒採用独自の魅力とは

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  • 新卒採用手法

※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

この数年、採用難易度があがってきている大卒就活マーケット。

そんな中、大卒ではなく高卒生の採用マーケットに注目する企業が増えてきており、その結果、多くのメリットを企業にもたらしてくれています。

とはいえ、「高卒生は戦力として通用するのか?」「高卒生は育てるのに時間がかかるのではないか?」「高卒生はすぐに離職してしまうのではないか?」。

そのような疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、最初の3ヶ月を乗り越え、3年も経てば大卒生以上に活躍してくれるポテンシャルがあるとのこと。

今回は、高校生の新卒就職サイト『ジョブドラフト』など、高卒就活支援サービスを提供しているジンジブの代表である佐々木さんに、高卒採用の魅力や大卒採用との違いや留意点などについてお話いただきました。

佐々木 満秀 | 株式会社ジンジブ 代表取締役

大阪府出身。高校卒業後、運送会社に就職。21歳でトラックを購入し個人事業での運送業を始める。23歳で求人広告会社に就職、営業部長を経て常務取締役に。1998年、同社の倒産をきっかけに起業し、ピーアンドエフを創業。2014年、株式会社ジンジブを設立。翌年、自身の就職活動の原体験をもとに、高卒就職を支援する『ジョブドラフト』を立ち上げる。

大卒生と高卒生の両者を採用して気づいた、「違い」と「変わらない部分」

ーまずは、高卒生の就活マーケットについてお伺いしたいのですが、高卒生を採用される企業様は増えてきているのでしょうか。


佐々木さん
高卒生の採用をされる企業様は確実に増えてきていると思います。

その背景は、大卒生の採用が極めて困難になってきていることがあります。特に、飲食小売などのサービス業、ブルーカラーといった職種の採用は大手企業でも苦戦しています。

また、中小・ベンチャー企業に目を向けると、もともと大卒生の母集団形成に苦戦しているため、若手採用のブルーオーシャン戦略的な位置づけて、高卒採用が注目されているように感じています。

あとはIT業界も高卒生の採用に力を入れてきています。エンジニア採用は困っていない企業がないくらいです。

当然、入社いきなりエンジニアのスキルがあるわけではありません。あくまでも「エンジニアとなる可能性のある卵」の採用です。

未経験エンジニアであれば大卒生・高卒生にあまり差はありません。そういうお声も徐々にいただくようになりましたね。


ー「大卒生と高卒生の差」という部分だと、そこまで大きな違いはないのでしょうか?


佐々木さん
いくつか差となる部分はありますが、大きな部分では変わらないと思います。というのも、弊社はこの数年間、大卒生と高卒生の新卒を約半数ずつ採用してきています。

その中でまず違うところとしては、やはり高校生は大学生に比べて圧倒的に社会経験がありません。簡単に言えば、こどもっぽい部分が多くあります。

アルバイトの経験も少ないですし、大人とのコミュニケーション、礼儀礼節、基本マナーなどは圧倒的に低いですね。

あと、「パソコンをいじったことがない」という声も多かったですね。スマホしか知らないんです。

「名刺交換って何のためにあるの?」みたいな感じだし、当然面接の仕方もわかりませんし、敬語もわかりません。

大学生は、謙譲語や尊敬語といった細かい敬語の違いまではわかりませんが、ある程度の敬語は使えるじゃないですか。

でも高校生は敬語が使えないんです。タメ口とまではいきませんが、非常に違和感が残る変な敬語なんですよね。


ーなるほど。それ以外で感じる差はありますか?


佐々木さん
逆の差もあります。大学生はある程度の社会観や職業観があり、企業研究をしたり、自己分析したり、面接対策したり、ある程度自分を“盛って”入社するんですね。

一方で高卒生はそのあたり何もわかっていないので、まったく盛ることがないんです。

そういう差で結構感じるのは、「素直さ」の部分ですね。正直、素直さの観点では大卒生は負けます。

高校生は自分が「知らないことを知っている」ので、固定観念を全く持っていないんですよ。だからめちゃくちゃ素直ですね。

そうなると、先輩方から可愛がられやすいんですよね。


ーたとえば、がむしゃらさや地頭の良さなどはいかがでしょうか?


佐々木さん
そこはあまり変わらないと思います。個々人では感じることはありますが、そこに大卒高卒の差はないですね。

ですので、大きくは基礎知識や基本的なマナー、礼儀礼節とかその辺の差だけだと思っています。そこから3年も経てば、もう大卒生も高卒生まったく変わりませんね。


ー逆にいえば、3年目以降で高卒生が追い抜くこともあるということですね。


佐々木さん
弊社でもそれは完全に起こっていますね。

大卒生は大卒生なりのプライドが当然あります。追い抜かれたら4年間大学行っていた意味がなくなってしまうので。

だからそこに「高卒生には負けたくない」という、がむしゃらさが生まれています。

高卒生は高卒生で負けたくない気持ちがあるんです。実は結構コンプレックスを持っていたりするんですね。

家庭環境によって大学に行けない場合も多く、家庭に対するコンプレックスや経済的なコンプレックスを持っていて、ものすごく反骨精神が強いんですよ。

「絶対なりあがってやろう!」という気持ちがありますよね。これは私も高卒なので、自身の原体験としてもあります。それで頑張ってきたタイプです。

そういう反骨精神を持っている高校生と、プライドを持っている大卒生と、これがすごく相乗効果を生んでおり、良い競争環境ができています。


ーそのような切磋琢磨の環境が自然と生まれるのは良いですね。


佐々木さん
何よりも会社が愛に包まれるのが高卒採用ですよ。18歳の子が目の前でがんばっている姿をみると可愛くて仕方がないんです。

「よろしくお願いしまーす!」しか言えずに「パソコン教えてください!」って、みんなで大事に育てていこうという、愛に包まれるような良さがありますよ。

それだけで、会社の雰囲気が明るくなりますね。

「最初の3ヶ月が勝負」高卒生に対する面接と育成での留意点

ー高卒生の面接のやり方についてお伺いしたいのですが、当然、大卒生とはやり方が変わってきますよね?


佐々木さん
はい、そうですね。まず、高校生にSPIみたいなテストをやっても全く意味はありません。

「高校を卒業したら働く」と決めてる子がほとんどなので、勉強をそこまでがむしゃらにやっていないんですよね。ですので、SPIを実施してもそこまで見極めには役に立たないと思います。

また、面接においてはコミュニケーション力などを見られる方が多いと思うのですが、高校生は大学生に比べてコミュニケーション能力もそこまでありません。

そういった大学生と同様の面接方法をしたところで、高校生のポテンシャルは引き出せないと思います。過去のやってきた経験や、自慢できることなどを聞いても話は膨らんでいきません。

大学生の採用において、そこが採用の合否に大きく関わると思うのですが、高校生はそこを見てはならないとは思います。


ーでは、どのように見極めをしていけばよいのでしょうか?


佐々木さん
何気ない会話の中で、「素直だなあ」とか「愛嬌あるなあ」とか、そういったポテンシャルを見極めるような面接をするのがよいかと思います。

「この子、なんかうちに合いそうだな」みたいな。


ー佐々木さんが意識している面接方法はありますか?


佐々木さん
私がやっているのは、基本的にあまり堅苦しい質問をしないことですね。

高校生と話すときは、自分のほうから先に会社のこと、自分の人生や趣味、最近落ち込んだこととかを話します。

「ラポール」と言うのですが、相手との心の架け橋をつくることを意識し、信頼関係を築いていくことを心がけています。

心の架け橋をつくり、心の扉を開き、その子が率直に会話をしてくれるような場をつくることは大事ですよね。

ー入社後の育成に関しては、大卒生と一緒の研修をされているのでしょうか?


佐々木さん
はい、基本は一緒です。

実は、弊社は高卒生の研修事業もおこなっていて、基本マナーから社会人としてのマインド醸成など、他社様から依頼を受けて集合研修を実施しています。

1年間かけて実施していくカリキュラムなのですが、そこに弊社の大卒高卒の内定者のメンバーも参加してもらっています。

それ以外は基本的にはOJTで教育していきますが、特に高卒生は離職に対しても教育に対しても一年目が勝負です。超重要です。

高卒生の離職率が高いのは1年目なんですよ。これは大卒生とすごく差があって、平均すると1年目で20%が離職してしまうんです。


ー離職率が高い要因はどういったところにあるのでしょうか?


佐々木さん
これは、今までの高卒就活の仕組み自体が、ミスマッチを起こしやすくなっているからだと考えています。

これまでは高卒で就活をしようと思ったら学校斡旋がほとんどです。学校から紹介される求人に対して応募していくことが一般的でした。

しかし学校経由では、一定期間は1人1社ずつしか応募ができないんです。また求人票は待遇などが書いてある文字だけで、求人票を見ても何もわからないんです。

高卒生が辞める理由が待遇の人は実は少なくて、多いのはやはり人間関係、社風、経営者の考え方など、そういった理由で離職が多いんですよね。

でもこれは当たり前なんですよ。なぜなら待遇しかわからなくて入社しているからです。どういう仕事をするかイメージがわからないまま入社して、入ってから気づくと。

ですので、実は離職が多いのは入社後1年ではなくて、3か月以内なんですよ。

「1人1社ずつ応募が原則」まだまだ閉鎖的な高卒生の採用事情

ーなぜ学校斡旋は、1人1社ずつしか応募できないルールになっているのでしょうか?


佐々木さん
これは過去70年間くらい続いているルールなのですが、これは学校の先生が、学生の就職活動のサポートに専業できないためです。

本業として授業をやらないといけません。大学に進学させることの方がメインなので、就職をメインにできないのです。

兼業しなければいけないので、1人1社ずつの方がやりやすいですし、内定を取りやすいというメリットもあるんです。

どういうことかというと、高校生は内定が出たら断れずに、そこに就職しないといけないという暗黙的なルールがあるんですよ。


ーしかも、その学校とつながっている企業しか選べないということですよね。


佐々木さん
そういうことです。行けないんです。そもそも他に探す選択肢があることも知らないですし。

ですので、私たちのような存在が出てきて、今注目されてきているのだと思います。

一応、「自己開拓」という枠があり、世の中の高校生の10%弱は、自分で探して、自分で考えて動いています。ただ、たとえば大卒でいう、リクナビ、マイナビのようなサービスはありません。


ーなるほど、ではどのように探すのでしょうか?


佐々木さん
あるのは中途の求人広告ですね。ただ、条件に「大卒以上」という記載が多かったりしてなかなか狭き門です。ですので、縁故で採用されるケースが多いですね。


ー高校生の就活事情にはそういう背景があるのですね。


佐々木さん
そうです。だからこそ私たちのようなサービスが必要だと考えていて、特にこれからはまずます少子高齢化が加速し労働力不足になってきます。

そういう面では、高校生の就職活動している子たちは、金の卵なんですよ。

大学生の採用はもう取り合いじゃないですか。今だと外資系、商社、メーカー、インフラが強くて、その次にメガベンチャーが出てきて・・・。

というような順番でどんどん就活生の母集団が減ってきて、そこから中小ベンチャー企業が取り合いをはじめるんですよね。

ジョブドラフトが高卒採用市場にもたらす変革

ーあらためて、ジンジブさんがおこなっているビジネスについてもお聞かせください。


佐々木さん
簡単に言うと弊社は、大学生と同じような就職活動を高校生に提供してあげたい、という想いが強い会社です。

高校生は、今まで学校の先生を通して就職をするという道しかなかったので、そこに新しい選択肢を提供できるようにしてあげたいと考えています。

まだ高校生は子どもなので、そういう面では保護者の方の意見も強いですし、学校と企業のつながりを活かして就職するという選択肢も、もちろんあるべきだと思っています。

ただ、大学生のようにリクナビマイナビのような就職サイトや合説のようなイベントがあるなど、「ここに興味あるから応募してみる」という選択肢を当たり前にすることを我々は目指しています。

その中で現在、弊社ではエントリーボタンこそありませんが、リクナビマイナビと同じようなサイトである「ジョブドラフト」を運営しています。

そしてもう一つは、「ジョブドラフトFes」という合同企業説明会を全国で開催しています。

ーありがとうございます。そもそも高卒生の就職活動時期はいつになるのでしょうか?


佐々木さん
一般的には7月から就職活動が解禁となります。ただ、大学の採用と同様にそれを遵守しなければならないという法律はありません。そして面接が解禁となるのは9月からです。


ー内定出す時期も決まっているのでしょうか?


佐々木さん
内定出す時期は決まっていないですけど、だいたい9月〜10月頭くらいまでに内定が出されます。それで、6割〜7割が決まっていきます。


ー学校の先生にもジョブドラフトを知ってもらうことが重要だと思うのですが、その辺はどのように動かれているのでしょうか?


佐々木さん
そのような活動はめちゃくちゃ頑張ってきました。地道な活動を5年くらいかけてやっています。全国にキャリアコンサルタント部隊がいるのですが、彼らが学校に訪問してプレゼンの機会をもらいます。

正直、スタートした頃は感覚値ですが、大半は拒否されていました。

それでも足を運び続けて高校生や先生に弊社のサービスや使命を伝えていって、そこで共感をしてもらって、ようやく認知してもらえるようになってきました。

情報がどこでもとれるようになり、既存のやり方だけで決めていくことができない時代になっているように感じています。

高校生も自分で情報がとれるようになっているので、大半に拒否されていた頃とはだいぶ変わってきていて、協力してくれるところも増えてきました。

一番伝えたいのは大卒生も高卒生も「ビジネススキルは変わらない」ということ

ー佐々木さんが考えていらっしゃる、今後の展望などはありますでしょうか?


佐々木さん
まずは第一構想として引き続き高卒生の就職活動を、大卒生と同様の形式まで持っていきたいです。

次に第二構想があるのですが、18歳から22歳くらいまで、要するに大学に言っていない子たちの第二新卒枠となるキャリア支援ができる会社がないんですよ。19歳の転職支援ってほとんど聞かないですよね。

19歳20歳ですぐに辞めた子って中途採用すごく苦しいんです。でも一方で大学生は第二新卒採用枠があるんですよ。

高卒採用に対する偏見をお持ちの方もたくさんいらっしゃると思うのですが、実は多くのポテンシャルを秘めているのが高卒生です。

彼らはよくわからない中で就職してしまい、その結果として早期に辞めてしまう。ミスマッチが起きやすい仕組みの中で動いているので当たり前ですよね。そこを助けないといけない。

若手のセカンドキャリアを高卒生向けにやりたいんですよ。彼らの活力になりたいのです。

さらに、高卒生のファーストキャリアからセカンドキャリア、そしてサードキャリアへとキャリアステップしていくと思うのですが、そこにも寄り添っていきたいと考えています。

その子たちの思考性やスキル、経験、離職理由など、すべてが把握できているので、次の企業とのマッチング精度も高まっていきます。

それに付随して、キャリアだけでなく、その人のライフサービスのコンサルタントとしてサポートもできると思っています。

就職支援を通して家族構成もわかっていますし、たとえば引っ越しをする、結婚をする、車を買いたい、大病を患った、介護をしないといけない、などライフ全般を寄り添える立場になっていって支援できたらよいなと思います。

その人その人の、人生のパートナーになるというのが将来的なビジョンなんですね。


ーありがとうございます。就職からライフイベントまで一貫して寄り添える世界観はワクワクしますね。最後になりますが、読者の方にメッセージをお願いします。


佐々木さん
中卒、高卒、専門卒、大卒、仕事がいずれできるかできないかに関して、ほぼ差はないということだけは断言しておきたいです。

当然、職種によっては違う場合もあります。ただ、やっぱり仕事ができるかできないかって、一番大きく影響を及ぼすのは、簡単に言ったら行動力や主体性、人間関係をつくる力とかじゃないですか。

そこには学歴とか一切関係ないわけですよ。

私も高卒採用のOBですが、社会に出てからどれだけ経験して吸収して行動してやれるかが、最終的に仕事ができる人になっていくと実感しています。

高卒生はもちろん、学歴による偏見を是非なくしていただけるとありがたいですね。これは今日一番伝えたいことです。

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