製造業でデジタル変革(DX)に向けて社員の学び直し(リカレント教育)を推進する動きが活発になっています。
リカレント教育とは、学校教育を終えて社会の諸活動に従事してからも、個人の必要に応じて教育機関に戻り、再び教育を受けられる、循環・反復型の教育システムです。
Google Trendsによると、リカレント教育は近年再び注目を集めていることがわかります。
◆Google Trends
本記事ではリカレント教育を実施している企業を3社についてご紹介します。
1|日立製作所~中堅・ベテラン社員向けのDX研修~
日立製作所は人材育成子会社の株式会社日立アカデミーを中心に20年度の開始を目指して中堅・ベテラン社員向けのDX研修カリキュラムを作成しています。
21年度までに若年層を含むデジタル対応強化に向けた教育量(人・日単位)を従来比の50%増やす予定です。
株式会社日立アカデミーでは、従来日立グループで培ってきた教育・研修義務を統合しました。
事業戦略に応じた人財育成の戦略企画から研修、運営の提供までを一貫して実施することで、社会イノベーション事業をグローバルで加速するための人財育成施策をリードしていきます。
また、人材育成施策の実績・ノウハウをもとに、従来提供してきた人財育成サービスを強化し、デジタル技術を活用するための研修などを通じて、新たな価値創出に向けた顧客との協創につなげ、課題解決を支援しています。
2|キヤノン~職種転換~
キヤノンは既存社員の職種転換を進め、2022年までに品質検査を含むソフトウェア技術者を計370人育成する予定です。
18年10月に本社近くに新設した教育施設を活用し、人工知能(AI)やIoT、クラウドサービスなどの研修を充実させました。
AIやIoTなどのテクノロジーを用いて作業工程を効率化し、工場の稼働率を必要最低限まで下げることを目指します。
いっぽうで、事務機器など製品の競争力に直結するソフト開発体制は拡大させる予定です。
3|住友化学~170人のデジタル人材の確保~
住友化学は、2021年を目標に計170人のデジタル人材を確保する予定です。
育成対象の内訳は以下の通りです。
- 全社のデータ解析を指揮するデータサイエンティスト(20人)
- 生産や研究開発現場で統計解析をおこなうデータエンジニア(150人)
プラントの運転自動化や設備保全の負担軽減、材料開発の効率化を先導するデジタル人材が今後不可欠になることに対応していきます。
政府が18年にまとめた試算によると、20年に先端IT人材が5万人、一般IT人材が30万人不足する見通しです。30年にはその2倍の60万人が足りなくなると予想しています。
DX時代のデジタル人材育成・確保競争は業種の垣根を超えて激しくなってきています。
そこで、既存の社員に学び直してもらう「リカレント教育」を実施して、人材の確保してみるのはいかがでしょうか。