こんにちは。HR NOTE編集部の入江です。
近年、働き方改革が叫ばれるように、新たな働き方への関心が高まっています。
求職者の方々は、よりよい条件で働ける環境を日々求めており、その結果としてフリーランサーの台頭やWワークの推進といった、多様な働き方が浸透してきています。
また一方で、企業側もあらゆるツールを用いて採用成功に向けて尽力しています。そこで今回は、採用担当者にとって参考になる、「新時代の採用手法戦略」を紹介したいと思います。
目次
1. これまでの採用手法の変遷
はじめに、これまでの採用手法を整理したいと思います。
採用担当者は、これまでさまざまな手法で採用をしており、実はリクナビやマイナビといったサービスが主流になったのも2000年に入ってからで比較的最近なものです。
第Ⅰ期:オフラインでの転職
まだインターネットが普及していない1990年までは、基本的に紙媒体の求人広告や、推薦による採用活動がメインとなります。
大学新聞広告社(現リクルートグループ)が、1962年に「企業への招待」という大学新卒者向けの求人情報誌を発行し、そこから少しずつ求人広告での採用へとシフトしていきます。
しかし、依然として多くの学生は大学からの推薦により就職したり、ヘッドハンティングされて就職したりといった方法がほとんどでした。
その後、1981年に学情が日本初の新卒向け合同企業セミナー「就職博」を実施するなど、オフラインでの就職活動・転職活動への門戸が少しずつ広がり始めるようになります。
第Ⅱ期:オンライン就活スタート
就職・転職活動のスタイルが大きく変わるきっかけとなったのが、1990年代後半のWeb求人広告の登場です。
1996年2月に「Recruit Book on the Net」という名前のWeb求人広告がオープンするやいなや、さまざまな企業がWeb求人広告サイトをオープンし、オンラインで就職活動を始める人も増えていきました。
現在、就活生の多くは「リクナビ」や「マイナビ」を利用していますが、その下地はこのころに作られたといえます。
同様に転職プラットフォームとしての転職サイトも多く設立され、オンライン上での就職・転職活動が主流になってきたのがこの頃の特徴です。
第Ⅲ期:第二次オンライン就活スタート
インターネットの発達と人工知能やビッグデータなどのテクノロジーが合わさって、近年では新たなオンライン就活方法が生まれています。
AIを用いて適正なマッチングを図る就活プラットフォームや、SNSを用いた就活サービスやスカウティング型就活サービスなどがリリースされており、現在の就職活動者はさまざまな方法で就職活動をおこなうことができます。
2.海外の採用担当者が感じている新たな課題
採用担当者はこれまでさまざまな手法で新卒や転職希望者を採用してきました。
ソーシャルリクルーティングやスカウティングサービスなど、新たな採用手法が登場する今日、海外の採用担当者は新たな採用課題に悩んでいるようです。
ここでは海外の採用担当者が感じている採用課題にはどんなものがあるのか紹介したいと思います。
潜在転職者の発掘
転職を希望している人は基本的に転職サイトなどに登録して何らかのアクションをとりますが、「ちょっと転職に興味がある」「キャリアアップは考えているけど・・・」程度の、転職潜在層の人々は転職サイトに登録しません。
ただ、このような潜在転職者層にアプローチできれば、さらによりよい人材を獲得することが容易になります。
そこで、採用担当者たちはいかにして潜在転職者にアプローチしようか、日々悪戦苦闘しています。
早期離職
新卒社員は3年で3割が辞めるといわれているほど、早期離職問題はかねてから採用市場において大きな課題の1つです。
人を一人雇うためには、人件費や広告費など合わせて約50万円ほどのコストがかかるといわれており、決して簡単に採用できているわけではありません。
少なくともかかったコスト分の働きをしてもらわなければ、採用担当者としては採用に失敗したことになり、その点で早期離職は極力防ぎたいでしょう。
採用の効率化
各企業の採用担当者は基本的に業務量が多い傾向にあります。
HR総研の調査によると、採用担当者や人事関係の業務に就く人たちは所定労働時間を20~30時間ほど上回って採用業務をおこなっており、所定労働時間で業務が収まっている人はかなり少ないことが読み取れます。
採用担当者へのアンケートからも、「業務量が多く、人員が不足している」と答えた人が58%ともっとも多く、求職者への連絡や面接など、業務量がかなり多いということが伺えます。
参考:HR総研:「働き方改革」への取り組み実態調査【2】労働時間
3. 採用×AIの新サービス
近年のテクノロジーの発達によって、これまで人だけではできなかったことをできるようにするためのさまざまなサービスがリリースされています。ここでは、海外で最近リリースされたあらたなサービスを紹介します。
潜在転職者の発掘
近年のテクノロジーの発達によって、これまで探す方法すらなかった潜在転職者へのアプローチが少しずつ可能になってきています。人工知能やビッグデータを用いて、潜在転職者へアプローチすることをある程度可能にしているサービスを紹介します。
TALENYA
2016年に設立された会社であるTALENYAは人工知能を用いて潜在転職者をうまく発見するためのサービスをリリースしています。
このTALENYAは、機械学習、ビッグデータ、人工知能を搭載したプラットフォームであり、独自のアルコリズムを搭載しています。
これまでは転職サイトに登録してくれた人、もしくはリファラルで紹介してもらった転職希望者にしかアプローチできませんでしたが、このサービスでは、「全然行動には映してないけど、転職に興味がある人」を発見することが可能です。
採用担当者がこれまでとっていた採用方法では到底リーチできなかったであろう優秀層にもアプローチができるといわれており、これからの採用業界を大きく変えるかもしれないサービスです。
entelo
entelo社による転職プラットフォームenteloは、AIを利用して優秀な潜在転職者を見つけ出すことができるサービスです。
SNSに上がっているプロフィールや、Linkedinに記載されているビジネススキルから個人の情報を抽出し、自社のアルゴリズムでこれらのビッグデータを分析することにより潜在転職者を洗い出します。
分析した結果、90日以内に30%の確率で転職すると予測される人たちのことを「More Likely to Move(もうすぐに転職する)」と呼び、採用担当者にその旨を伝えます。
ちなみにentelo社はこの「More Likely to Move」というキーワードで商標をとっているようです。
AIを用いた人と企業のマッチング
早期離職をいかにして防ぐか、これまで多くの採用担当者はこの課題に悩まされていました。
福利厚生を充実させたり、社内イベントを開催したりとさまざまな解決策がありますが、そんな解決策のうちの1つに、就職・転職活動中に相性のいいマッチングを図ることで早期離職を防ごうとするものがあります。
また、人工知能を用いることで精度の高いマッチングを図ることも可能であるため、近年ではさまざまな求職活動用マッチングプラットフォームがリリースされています。
Leap.ai
Leap.ai社は「全ての働く人が最適な場所で輝く(everyone can be a star in the right place)」ことを掲げて求職者向けのプラットフォームを運営しています。
これまで求職者は自分に合った企業を転職サイトから探し出し、その企業ごとに沿った履歴書やエントリーシートを提出し、合格すれば面接へ向かう、というフローで転職をおこなっていました。
しかし、応募した企業が本当に自分に合うのか、また自分のスキルや経験を活かせる職場なのかは実際に働くまでわかりません。
そんな中、このLeap.ai社の転職プラットフォームLeapでは、求職者が履歴書をアップロードするだけで、人工知能がこの履歴書を分析して自分に合った企業、自分のスキルや経験を活かせる企業を紹介してくれます。
さらにこの作業にかかる時間は数分であるため、普段業務が忙しくて転職のための時間がとれない人や、少し転職に興味があるものの転職サイトに登録して行動するほどまだ本気ではない人がちょっと興味本位にいじってみるにはちょうど良いサイトであるといえるでしょう。
engage talent
参考:https://www.engagetalent.com/
engage社がリリースしている求職者向けプラットフォームサービス、engage talentはLeapと非常に似ています。
engage talentのアルゴリズムは、その人の情報だけでなく、勤務先の情報や、業界全体の動向などさまざまな要因を考慮して、潜在的転職者の転職可能性を判断しています。
採用業務の効率化
会社説明会の開催、面接の実施、求職者情報の管理など、採用担当者は日々さまざまな採用業務に追われています。
そんな中で採用業務を効率化できれば、空いた時間で採用戦略の構築や求職者との面談など、より時間をかけるべきところに時間をかけることができるでしょう。
ここでは、人工知能の発展とともに採用担当者が日々おこなう採用業務のうちの一部を、人工知能に任せてしまおうという思想のもと立ち上がったサービスを紹介します。
Mya
firstjob社がリリースしているチャットボットサービスMyaは、2016年にリリースされました。
求職者がチャットに投じた文章を自然言語処理とディープラーニングとを用いてAIが分析し、それにあった対応をします。
AIによるチャット対応は質も高く、Myaのデータでは、93%もの求職者がMyaのチャットのみで求める行動ができたといわれています。
求職者に個人情報を聞いたり、求職者からの質問に答えたり、面接日程の設定をしたりなどの業務をAI搭載のチャットボットが対応してくれるため、その分時間を別の業務に充てることができます。
Firstjob社のリサーチによると、このMyaを導入した企業の中には、79%もの時間を削減できた採用担当者もいるといわれており、実際にMyaを導入することで採用業務を効率化できるのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
人工知能などのテクノロジーの発達によって、我々の業務はどんどん転換していくかもしれません。
今後もさまざまなアイデアをもって新たなサービスがリリースされることが期待できますね。これからの採用市場における動向、ひいてはHRtech業界の動向に注目です。