近年、テクノロジーの発達に伴い、いわゆる「理系学生」採用の需要が高まっています。一方で、理系学生は年々減少傾向にあり、採用に苦労されている採用担当者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
就職・転職のための企業リサーチサイト「Vorkers」の調査レポート「理系学生2万人が選ぶ、就職注目企業ランキング」によると、理系学生の注目している企業TOP10社中9社が日系大手、内メーカーが7社で、TOP30でもベンチャーやインターネット関連企業は圏外でした。
理系学生の強い大手思考が見られ、中小企業はより理系学生を採用することが困難になっています。
また、理系学生は文系学生とは就活方法が若干異なるため、採用担当の方は理系学生の就活の特徴をよく把握した上で、採用活動を考えなければなりません。
本記事ではそんな理系学生に特化した採用方法のノウハウをご紹介します。
目次
1. 理系学生の生態
理系学生は専門的な知識を備えており、就職においてもその知識を生かした就職を考えています。
近年では、多くの理系学生が大手思考を持ち、日系大手メーカーを志望する、もしくは大学教授のつながりを利用して推薦で就職を決めることが多くなっています。
また、文系学生と比べて大学の研究が忙しく、十分な時間を就職活動にあてることができない傾向にあるため、採用活動において選考フローの工夫が必要となります。
1-1. こんな学生が多い|理系学生の強み
理系学生は文系学生に比べて就活への取り組む意識が低いといわれる傾向にあります。
文系学生に比べ、研究室などが忙しく時間的な余裕がないため、就活だけに注力することができないといった背景があるためです。
また、理系学生の場合、専門の研究分野の業種に絞って就職活動をおこなうため、幅広い業種への就職を試みないということも影響していると考えられます。
数字に強い
理系学生はITエンジニア・機械系・電気系・化学系・生物系・医療系などへの就職が多いように思われますが、学生時代から数字を扱うことが非常に多いため、企業運営をおこなうにあたって財務の数値的な管理をおこなう分野においても戦力となることができます。
このような数字を生かした職種に、理系の人材を活用することもありなのではないでしょうか。
メンタルが強い
理系学生は「研究室にこもっている」という印象から草食系、おとなしいというイメージをもつ方がいるかも知れません。
しかし、理系学生は大半が研究室に所属しいつも夜遅くまで自分の研究課題と向き合っているため、なにごともめげずに最後までやりきる力を持っているといえます。
メンタルの強さといえば体育会系をイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、理系学生も強いメンタルを持っているといえるのではないでしょうか。
論理的思考力に長けている
理系学生は研究をおこなう際に、常に「問題提起→仮説立て→検証→改善」を繰り返して研究をおこなっています。
研究がうまくいかないときに、研究フローのどの段階に問題があったのかを仮定し、一つ一つ検証しながらPDCAサイクルを回しています。
そのため、複雑な課題に対しても常日頃から論理的に考える思考が身についているといえます。
1-2. 就活スケジュール
一般に、採用活動は大学3年の夏から、インターンシップを募集し、3月にナビサイトが解禁された後、順次説明会をおこなったり、選考を進めたりという流れになっています。文系学生は3年生の秋から、4年生にかけて授業数も減り、時間に余裕があるため、十分な時間を就職活動にあてることができます。
一方で、理系学生は基本的な就活スケジュールは変わらず、就活を始める時期も同じですが、多くが3年生の後半から研究室に所属しするため、研究と並行して就活をおこなわなくてはならず、時間的な余裕がなくなります。
また、文部科学省「平成28年度学校基本調査」の調査では大学院進学が約35%、学部卒業後に就職するのが58%でした。
就職活動を始める前に「進学か就職」「自由推薦か学校推薦」「専門分野か専門以外の就職」を決めなければいけないというところで動き出しが遅くなってしまう傾向にあります。
2. フロー別|理系学生採用ノウハウ
ここでは、理系学生の採用についてのノウハウを採用フローごとにご紹介します。
2-1. 母集団形成
理系に特化した就活ナビや合同説明会を利用する
理系学生は他の学生と比べ、就職活動が特殊であるため、専用のナビサイトや合同説明会があります。そこで、企業としても、そういう手法を利用することで、始めから理系学生というターゲットが絞られた中で、学生と出会うことができます。
たとえば、リクナビでも理系学生に特化した合同説明会がおこなわれています。理系人材を採用したいと考えている企業にとってはとても効果的であると言えるでしょう。
また、同じように参加している競合企業を見ることでも理系学生に対する採用の手法を知ることもできるのではないでしょうか。
大学と連携する
理系学生が就職をする際、大学や研究室とのつながりから就職先を決めるという場合も多くあります。そのため、社員の母校などのツテを使って大学とのつながりを持つことも効果的かもしれません。
学生にとっても、同じ研究室に所属していた先輩が入社している企業であれば専門知識を活かすイメージを持ちやすく、親近感がわき安心につながるのではないでしょうか。
採用担当者の方も社員が所属していた研究室の学生ということで、社員と教授の関係が構築されていることから信頼関係を構築しやすく、求める人材を採用できる確率が高くなります。
Web説明会を実施する
Web説明会は、Web上で説明会を視聴できます。そのため、忙しい理系学生も、説明会会場に移動せずに会社説明を聞くことができます。
ディスコの2019年卒就活生モニター調査によると、43.5%の学生がWeb説明会の視聴経験があるそうです。学生にとっても、徐々にスタンダードになりつつあることがわかります。
また、最近の就活生はスマホを使って、隙間時間にVorkersなどの口コミサイトで、離職者からみた企業の情報などを収集する傾向にあります。
Web説明会はオンラインで企業情報を発信できる重要な場です。「オフラインの会社説明会なら参加しないが、隙間時間で視聴できるWeb説明会なら見る」という理系学生の応募が見込めます。
2-2. 選考段階
具体的な職種を伝える
理系学生は漠然と自分の研究分野と関連する就職先を考えますが、実際のところはどんな職種があるのかわからない場合が多いです。そのため、ネームバリューがある大手のメーカーといった就職先を考えがちです。
しかし、企業側が「どんな会社なのか」「どんな仕事内容なのか」「学生が学んだこんな知識がこの職種に生かせるか」といったことを明確に提示することによって、イメージを描くことができます。知る機会をつくることで採用につながる出会いは増えるはずです。
新卒紹介を利用する
理系学生は専門的な知識を持っていることがほとんどなので、より具体的な「こんな知識・技術をもった学生を採用したい」ということが決まっていれば、新卒紹介を利用することも効果的なのではないでしょうか。
新卒紹介とは、採用したい学生のターゲットを絞り込むことで会社が求める人物像に対して、ニーズに合った学生を紹介し、面接をしながら採用を決めるという方法です。母集団の中から精査するという手間をかけず短期的に求める知識・技術を備えた学生を採用することが可能です。
また、近年では、理系学生人材の不足を解決するべく、地方の理系学生の採用を支援するサービスもおこなわれています。
Web面接を実施する
Web面接は、Web上で面接を受けることができます。そのため、忙しい理系学生も、大学やカフェで面接を受けることができます。
Web面接をおこなうシステムには録画機能が付いています。録画をすることで、ダブルチェックで面接の基準をすり合わせができたり、録画データを使って、面接官の育成もできたりします。
また、Web面接を実施することで、人事担当者の出張コストも抑えることができます。
2-3. 内定後フォロー
理系学生は4年生になっても研究室などで忙しい学部がほとんどです。所属する研究室にもよりますが、多くの学生が何ヶ月も時間をかけて卒業研究をおこないます。就職活動が終わっても、時間的な余裕は変わりません。
そのため、内定者懇談会や内定者研修になかなか参加できないことがあります。しかし、忙しいという理由で参加できないのであって、参加する意志がないというわけではありません。
理系学生も不安を抱えている
内定者フォローにおいても直接会う機会がなかなか取れず、メール中心になってしまうこともあるかもしれません。それでも、「学生が就職に対して不安を抱いている」ということは文系学生も理系学生も変わりません。
むしろ、文系学生に比べ少ない時間で就職活動をおこなうため、数少ない企業の中から内定先を決めます。そのため、文系学生よりも本当にこの企業でいいのだろうかと不安を感じる学生が多いです。
少しでも不安を感じないで入社できるように電話をしたり、メールを頻繁に送ったりなど、積極的な情報発信をしてあげることが大切です。
3. さいごに
いかがでしたでしょうか。理系学生の採用は文系学生と同じ手法でおこなっていては成功に結びつけることが困難です。
理系学生には理系学生特有の就活への向き合い方、就職への考え方があります。そのため、これらのことを理解した上で、学生に働きかけることが大切になります。
この記事を通して採用担当者の方々の理系学生採用に少しでもお役に立てれば幸いです。