今回は、その中から「企業人事部門」にノミネートされた企業の取り組みに関してご紹介します。
企業人事部門ノミネート企業をご紹介
各企業の人事領域の取り組みに関して、18社ノミネートされており、人事管理、組織の活性化、生産性向上などの観点から企業のカラーに合わせた独自性のある人事施策を実施しています。
2017年度の採用活動で、応募者が書類選考と一次面談を担当する社員を指名できる「相棒(バディ)採用」を実施。
応募者が「この人と働いてみたい!」と感じた社員を、探して、指名して、選考を受けることができる採用フローで、総勢87名の社員が投稿する写真や、実際に会って話ができるイベントなどを通して、気になる社員を探すことができます。
その後、書類応募時に「この人と働いてみたい!」と思う社員を指名すると、その社員が書類選考、1次面接官を担当するというものです。さらに1次選考を通過した応募者には、指名を受けた社員がサポーターとなり、選考期間を通じてサポートを行ってもらえます。
企業理解を深めるために、応募者とのマッチングの率を上げるのが狙いで、社員を通じてよりリアルな企業風土、仕事内容などの理解促進ができます。
イオンでは、2013年5月に開催した株主総会にて「2020年女性管理職比率50%」「日本一女性が働きやすく活躍できる会社。日本一女性が働きたい会社」を目指すことを宣言しました。
その実現に向け、同年の7月のグループCEO直轄組織として「ダイバーシティ推進室」を設置。
2014年から、若年女性の退職者を減らすべく25歳前後の女性を対象とした「キャリアデザインコース」をスタートし、2015年からは女性の上位職への意欲向上を目指した「キャリアアップコース」と、現管理職の意識変革を目的とした「マネジメントコース」を開講。 グループ共通の課題をグループ全体で学び合いながら、ダイバーシティを進めています。
池田泉州銀行では、行員の出産・育児・介護と仕事の両立を積極的に支援するために、「仕事と介護の両立セミナー」の開催や、法定を上回る両立支援制度を整備しています。
また、「復帰応援ミーティング」を開催しており、出産前から育児休業復帰後まで、それぞれ同じ立場の行員が集まる機会を提供し、その場での情報交換、先輩の体験談などを通して、仕事との両立方法や今後のキャリア形成を学ぶことができます。
さらに、出産した女性行員へのお祝いとして、職場復帰を支援するツール「プランニングダイアリー」を贈呈。 復帰までの年間・週間スケジュール、保育園見学のチェックシート、両立のために夫婦で考えるシート、先輩ママ行員のノウハウやメッセージを盛込んだ、オリジナルの手帳で、頭取の直筆メッセージを添えて贈呈し、復帰に向けた準備を全力でサポートしています。
「Workcise(ワークサイズ)」は、「ワーク(仕事)」と「エクササイズ(運動)」という言葉を組み合わせた、イトーキの造語です。
いつもの何気ない行動を変える数々の仕掛けによって、オフィスを「健康になる空間」にする取り組みで、オフィスの特徴とそこで仕事をしている社員にとって最適な空間づくりを通じて、健康経営を目指しています。
ワークサイズのためのスマホアプリも開発しており、歩数の計測、座って仕事をしている時間、立って作業をした時間が1日単位でわかり、消費カロリー値も表示され、オフィスでの働き方の意識変革をサポートします。
伊藤忠商事は2016年6月に、健康力向上を重要な経営戦略として『伊藤忠健康憲章』を制定しました。
全社員が健康状態を管理できる「健康マイページ」の作成、生活習慣病予備軍に対しては、腕時計型のウェアラブル端末などで睡眠時間、血圧数、脈拍、歩行数などのデータを集計、喫煙率低下への支援強化、スマートフォンで自身の食事の写真を撮影して、オンライン上で専用の管理栄養士と相談できるなどの施策を実施。
また、若手の健康増進を図るため、独身寮も新設予定とのことです。 健康力増強を推進し、社員一人ひとりが最大成果を発揮できる環境を整備しています。
グーグルでは、職場復帰をサポートするインターン「gCareerProgram」、障がいをお持ちの方を対象としたインターン「gReach Program」、エンジニアで特にテクノロジー分野での人材進出が望まれている、女性や障がいのある方の積極参加を募っているインターンプログラム「STEP」などを実施しています。
多様性を重視したインターンシップとなっており、多様な経験、考え方、文化を持つ人が一緒に働くことによってすばらしいアイデアを生み出し、よりよりプロダクトやサービスを提供していこうという想いがあります。
「企業が社員の健康に配慮し、経営面においても大きな成果が期待できる」という、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを『健康経営』と言い、健康経営の実践に向けてサポートすることを目的に健康経営研究会を設立しました。
健康経営実践セミナーや、健康経営フォーラム、健康経営アドバイザー研修、健康経営研究会などのイベントを通じて、健康経営の普及に向けた啓蒙活動を行っています。
未来創造局は2015年に新設された会社の未来を考える専門組織で、社員の意識や企業風土の改革を推進することが目的です。 資生堂では、中期経営計画「VISION 2020」というものがあり、これから50年、100年続く会社に向け、まずは2020年を目標に「それまでに何をすべきか」「どのような会社になりたいのか」などを示したもので、現状の仕事の進め方を変革することが狙いです。
社内公募で集めたメンバーを中心に、「未来創造マラソン」と題して全国各地の営業拠点などを訪れ、そこで少人数で同社の将来について話し合うミーティングを積み重ね、国内外に約4万人いる社員の改革意識を引き出していきます。
「RIKEI-NOU」は、新たな就活スタイルとして、オンライン上で内定が獲得できる選考プログラムとなっています。
[RIKEI-NOU検定]では、「論理的思考力」「抽象化能力」「緻密性」の3つの資質を見抜くことができる、SHIFTが独自ロジックでつくりあげた新卒向けハイレベル検定で、30分で受検が完了し、合格者は即内定となります。
ディスコでは、時間外労働の割増賃金について、月60時間までの場合、残業が短い方が割増率が高くなるように制度を改定しました。 残業を減らす社員のインセンティブを高め、長時間労働を自発的に改めるよう促すことが狙いとなっています。
4月の勤務から残業が月45時間までの割増率を25%から35%に引上げ、45時間~60時間までの30%よりも高くしました。60時間を超す分は従来通り50%となっています。
日産では、従業員のワークとライフの質の向上を目的に、2014年1月より在宅勤務の利用上限を月5日(40H)利用できるように拡充しました。育児・介護両立者の上限は所定労働時間の50%となっています。 制度を拡充により、働き方の選択肢が増え、効率化や生産性の向上の実現につなげていきます。
在宅勤務の推進は、専用のサイトを立ち上げ活用方法の好事例を共有すると共に、働き方の改革やチームの生産性向上につながるような活動を継続して行っており、2015年度に在宅勤務制度を利用した従業員は約4,000人に上るとのことです。
「ハラダサカンレディース」は1990年の4月に誕生し、「装飾壁床のアイデアを自ら企画し、営業・施工管理・材料配合などまでこなす女性の左官チームです。現在は男女混合のチームとなっていますが、今でも8名の女性が現場にて、女性ならではの感性を活かし活躍しているとのことです。
女性ならではのサポート、バックアップ体制も充実しており、結婚後も続けている社員、産休制度を利用し2人の子供を育てながら職人を目指す女性見習い左官工もいます。
女性の感性を活かした仕上げ等、それぞれの特徴を活かし、その特徴を伸ばすバックアップ体制が確立されています。
P&Gジャパンでは、「P&Gダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト」を2016年に発足。
すべての社員が性別や国籍、価値観など個々の違いを生かすことで、様々なアイデアが生まれると考えており、毎年3月に、全世界で、社員の知識を深めるために「D&Iウィーク」を開催しています。
D&Iを文化として根付かせるには、組織を動かすリーダーの理解や積極的な取り組みが重要と考えており、管理職を対象にしたトレーニングや、若手女性社員を対象とした、仕事と出産や育児などのライフイベントとの両立をはじめ、自身でキャリアを切り開いて活躍するためのヒントを得るセッションも実施しています。
『1000人キャリア面談』は、「百貨店は人こそすべて」というトップの経営方針を具現化していく取り組みであり、最前線で働く店頭の従業員と人事部が対話を行っていくという内容です。
自律的なキャリア意識の醸成やパフォーマンスの向上を図っており、その結果、契約社員からの正社員転換や女性の管理職昇格なども増え、また面談から得られた「生の声」がデータベースに蓄積され、満足度の高い人事制度改革の実現につなげています。
ユニ・チャームは、2016年度の新入社員のうち、営業職となる社員を対象に、人材育成の新制度「社内ドラフト制度」を導入しました。 ドラフト会議で営業支店が育成プランに基づき新入社員を指名、10月からの配属先を決めるというものです。
「社内ドラフト制度」導入の目的としては、新入社員がより適所で成長スピードを上げること、営業支店が支店間での競争意識を高め、早期育成に積極的に取り組み、業績貢献度の高い社員を継続して輩出する環境を作っていくことなどが挙げられます。
さらに「社内ドラフト制度」の対象となる新入社員には、ドラフト会議から3年半後の2020年に「フリーエージェント権」を与えることも計画しており、社員の自己成長意欲の向上を促し、高いパフォーマンスを発揮できるまでの期間を短縮することも目指しています。
ユニリーバは、2016年の7月1日より、全ての社員がそれぞれのライフスタイルを楽しむことで、自分らしく働き、生産性を高めることを目的に、新たな人事制度「WAA(ワー)」を導入しています。
「WAA」は「Work from Anywhere and Anytime」の略で、働く場所・時間を社員が自由に選べる制度です。
1カ月の標準勤務時間をクリアすれば、平日6〜21時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決められ、上司に申請すれば、理由を問わず会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも勤務することができるという内容となっています。
「働き方変革プロジェクト」では、「新しい価値の創造」を目指し、多様な文化・働き方を知ることで、個人が自律的に柔軟な働き方を実践できるよう、様々な働き方を実践・検討しています。
他社の取り組み事例や、自社の取り組み事例などを中心によりよい働き方に関して、どのように実践していくべきか、ヒントとなる情報が満載の内容となっています。
ローソンは、育児休職の有給化などの制度面を充実させると同時に、イクメンキャンペーンを展開して、企業全体でイクメンを応援する雰囲気づくりを醸成。制度・社内風土の両面から男性の育児支援に取り組んでいます。
取り組みの結果、男性の育児休職取得者数が2013年度0人から2014年度23名、2015年度上期43名と大幅に増加するなどの効果が出ており、2016年度はさらに「取得率80%」を目標に掲げているとのことです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
ダイバーシティ経営や健康経営、キャリア支援、多様な採用のカタチ、労働生産性の向上に向けた取り組みなどをご紹介しましたが、人事領域は幅広く、また企業のビジョンや経営戦略に紐づく要素が多いため、非常に大変でその分やりがいのあるものだと思っています。
企業としてこれからも永続的な成長を目指していく上で、これらの企業の取り組みは何か参考となるのではないでしょうか。