事例紹介④:株式会社テレコムスクエア|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯10 |HR NOTE

事例紹介④:株式会社テレコムスクエア|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯10 |HR NOTE

事例紹介④:株式会社テレコムスクエア|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯10

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン

※本記事は、株式会社日本総合研究所様より寄稿いただいたものになります。

第6回までは、効果的な仕事と介護の両立支援の取り組み方として、経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」のステップに沿って、それらの具体的な取り組み方法について解説してきました。

今回の第7回~第12回までの6回(予定)は、企業の具体的な取り組み事例を紹介し、それらの事例から導かれる仕事と介護の両立支援施策の効果的な進め方のヒントについて解説します。

今回ご紹介するのは「株式会社テレコムスクエア(以下、テレコムスクエア)」の事例です。

寄稿者石田 遥太郎株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー

シンクタンクに勤務した後、2012年より医療福祉関連ベンチャーのスタートアップメンバーとして参画し、医療介護施設の開設及び運営のコンサルティングに従事。また管理部門の責任者として、経営管理全般(経営企画、財務、人事、システム等)を担当。2019年日本総合研究所に入社。リサーチ・コンサルティング部門にて、健康分野、医療介護分野における政策提言、調査研究、民間企業向けのコンサルティングに従事。

寄稿者小島 明子株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト

1976年生まれ。民間金融機関を経て、2001年に株式会社日本総合研究所に入社。多様な働き方に関する調査研究に従事。東京都公益認定等審議会委員。主な著書に、『「わたし」のための金融リテラシー』(共著・金融財政事情研究会)、『中高年男性の働き方の未来』(金融財政事情研究会)、『女性と定年』(金融財政事情研究会)、『協同労働入門』(共著・経営書院)。

寄稿者石山 大志株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー

日系コンサルティングファームを経て現職。入社後一貫して人事組織コンサルティングに従事し、近年は人的資本経営の推進、プロアクティブ人材の育成に向けた取り組み推進に注力。近時の執筆記事等として、「仕事と介護の両立を実現するビジネスケアラー支援」(共著、『労政時報』2024年/労務行政)「エクイティがダイバーシティ施策のカギ-〜人的資本経営とDE&I」(共著、「Power of Work-2023年/アデコ)等がある。

介護経験者のインタビューを勉強会で活用し、介護に理解のある職場風土を醸成

テレコムスクエアでは、育児や介護などすべての問い合わせが可能なファミリーサポート窓口を2022年から設けています。

2024年5月には育児と介護の勉強会を開催し、社内の相談窓口の案内や制度の説明を行ったほか、育児や介護に取り組んでいる従業員の声をインタビュー形式で載せるなど、様々な工夫を行っています。

本稿では、テレコムスクエアにおける仕事と介護の両立に向けた施策について、

  • 取り組みステップ1:経営層のコミットメントを得る
  • 取り組みステップ2:仕事と介護の両立における実態の把握と対応
  • 取り組みステップ3:仕事と介護の両立に関する情報発信や研修の実施

の3つのステップに加え、テレコムスコエアの独自の工夫の視点を紹介します。

ではまずは、テレコムスクエアにおける仕事と介護の両立に向けた施策について順番に説明します。

取り組みステップ1:経営層のコミットメントを得る

本連載の第4回でもご紹介したように、「介護と仕事の両立」の推進に向け、経営者や経営陣の強いコミットメントが必要となります。それは経営者自身や経営陣が従業員やその他の経営幹部に向けて、両立を積極的に推進するための動機付けや方針を示す必要があるからです。

その一環として、経営者自らが両立支援策の推進に関するメッセージを発信することは、企業全体の方向性を示し、行動変容を促す有効な手段となります。

Point:経営層の理解は前提としつつ、人事部起点で推進

そのようななか、テレコムスクエアでは、育児と介護の両立支援は経営戦略として重要であることを社内外に発信しています。

一方で、中小企業であり、従業員の顔がよく分かることから、育児や介護事由で経営層が個々の従業員に制度を超えた特別な配慮をしてしまうことがないよう、人事部が中心となり、できるだけ客観性をもって取り組みを進めることに留意しています。

キャリア支援という文脈で、両立支援は介護に取り組む従業員だけではなく、全従業員にとって必要という認識を持っているからです。

取り組みステップ2:仕事と介護の両立における実態の把握と対応

従業員の平均年齢が徐々に上がり、来るべき介護に備えるため、2022年(当時の従業員の平均年齢は39歳)に、育児と介護についての従業員の状況や希望に関する無記名アンケートを実施しました。

point:実態把握を踏まえて社内の制度の周知を実施

当時は、育児休業は取得者が多く、そのフォローが大変だという意見があったため、介護だけではなく育児も含めて実状の把握を行うために実施しました。無記名であったことで、回答率は80%に上りいろいろな意見もでてきました。

アンケートの結果からは、介護に関する社内の制度や公的な制度を知らないケースが多いことがわかりました。介護支援制度を強化する前に、まずは既存の社内の制度や公的な制度の活用を促すことから始めました。

取り組みステップ3:仕事と介護の両立に関する情報発信や研修の実施

2024年5月には育児と介護の勉強会を初めて開催しました。社内の相談窓口の案内や制度の説明を行い、育児や介護に取り組んでいる従業員の声をインタビュー形式で載せることで、制度を活用した人の声を聞いてもらう流れとしました。

point:介護経験者のインタビューを勉強会で活用し、介護に理解のある職場風土を醸成

勉強会の後、制度について知ることができてよかったという感想はもちろん、それ以上に介護に携わっている従業員のことを知れて、自分自身が介護に直面したときのことをイメージできたという声も多く得られました。現在介護中の従業員からは、「研修内容と自身の経験がリンクした。経験者の意見が励みになった」といった声もありました。

インタビューのなかでは、前もって介護に関する情報の下調べが必要だったとか、サービスの利用のためには3か月が必要だということを伝えていたので、参考になったという声が介護を意識する年代の従業員に多かったそうです。

また、テレコムスコエアでは、ファミリーサポート窓口を設け、育児や介護等すべての問い合わせが可能となっています。

介護については、来年から育児・介護休業法が改正され、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化が求められることから、先駆けて対応することとしました。介護に取り組む従業員は多くない状況ですが、窓口を設けて以降、介護休業の取得の仕方などの問い合わせが実際に来ているといいます。

特徴的な取り組み:テレワーク制度における配慮

第2回でも述べましたが、経済産業省の調査によれば、「仕事と介護の両立が長期的に可能」と感じている人が合計74.5%、一方で「両立が不可能」と感じている人は12.6%となっています。

ここで注目すべきは、両立が困難と感じている理由であり、その最も多い要因が「勤務先に介護休業制度等の両立支援制度が整備されていないため」(24.1%)であるという結果が出ています。

同調査では「企業から求める具体的な支援」として、どの属性においても「時間単位の休暇等、柔軟に休暇を取得できる制度」や「テレワークやフレックスタイム等、柔軟に働ける環境整備」を求めていることが明らかになりましたが、「仕事場所として自宅やシェアオフィス、外出の際の移動先等以外も可能なテレワーク制度」は利用可能な勤務先が2割弱にとどまっており、遠方での介護の際の対応が難しい状況にあります。

テレコムスクエアでは、テレワーク制度を実施できる回数制限を設けていますが、育児や介護事由がある場合は制限を緩和しています。テレワークが可能な場所についても、現状は自宅もしくは2時間以内に事業所に到着できる箇所でのテレワークを可能としています。

介護は人によって状況が大きく異なるため、その方の仕事内容や管理職の意見、家族の状況をふまえて人事が個別判断して配慮しています。

最後に                                                                      

テレコムスクエアの勉強会後には、「お互いに助け合うことを個人に任せるのではなく、その気持ちを会社全体として持ち続けていくために、勉強会を定期的にやってほしい」という声がありました。

仕事と介護の両立支援を行うことは、従業員の介護離職の防止のみならず、従業員同士の助け合いや思いやりの文化を醸成することにもつながると感じます。

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