皆様ご無沙汰しております。株式会社WEの戸田です。
前回から、全3回に渡って従業員の「やりたい気持ち(以下、“やりたい”)」を引き出すためにはどのようにしたら良いか、について記事を書かせていただいております。
今回は、具体的にどのようにして個人の“やりたい”を引き出せば良いのか、実際に研修で使用しているワークシート等もご紹介しながら詳しく説明させていただきます。ぜひ、従業員と接する人事の皆様にご活用いただければと思います。
【今すぐ使えるワークシート】
これからやることと発揮する価値
このワークシートは、自身の「やりたいこと」を起点にして、会社での仕事へと結びつける考え方を身に着けることを目的としたものです。
執筆者戸田 裕昭氏株式会社WE 代表取締役 / 総務省地域力創造アドバイザー
大学卒業後、オフィス家具メーカーにて新規事業創出・地域活性化に携わる。総務省地域力創造アドバイザーや国土交通省スマートアイランド推進実証事業コーディネーターなどを担い、全国各地の地域における事業振興のアドバイスを行なっている。 また、個々人のやりたいことが起点となる事業創出を目的とした伴走型教育プログラムを開発・構築。小学校から大学までの教育機関や自治体、民間企業と連携し、人材育成を軸とした「組織変革」「事業創造」「地方創生」を行う。
目次
1. 「指示される仕事」から「自発的に生み出す仕事」へ
前回お伝えしたように、これからの仕事は今までとは異なり、「指示される仕事」から「自発的に生み出す仕事」に変わっていきます。その自発的に生み出すということが「やりたい」の起点になると思います。
弊社の研修を受けてくれていた企業のある若手社員が、「自分は自由にしてくれたらもっと成果を出せるのに・・・」と話してくれたことがあります。そこで私は「今あるタスクを全部無くして自由にしていいよって言ったら何するの?」と質問したところ、驚きの回答がありました。
彼は「何やったらいいですかね?」と私に聞き返してきたんです。何をしたらいいか私が伝えてしまっている時点で「自由」ではなくなります。
私自身も以前は社会や誰かのせいにして「自分はやりたいことをやれない」と思っていました。例えば、大学の同級生に「戸田は日本に向いていない!海外なら活躍できる!」と言われ、「そうか!日本にいるから活躍できていないんだ!」と環境のせいにすることがありました。
そのことを当時お世話になっていた方に話したら、オーストラリアで行うワーキングホリデーの資料を渡され、「あなたは日本では活躍できないなら海外に行きなさい。オーストラリアならまだワーホリで行けるよ!」と言われました。
でも、その時に「自分はオーストラリアに行って活躍できるのか?いや、日本で活躍してないのにできるわけない。今まで言い訳をして頑張らなかっただけだ!」と目が覚めました。
きっと“やりたい”を起点にして何かを始めるためには、何かしらのきっかけが必要だったのでしょう。
2. “やりたい”を起点にした学びをサポートするWBL
弊社では、このような「やりたい」を起点にした学びをサポートするWill Based Learning(WBL)という独自の教育プログラムを実施しています。
WBLでは、「誰もがやりたい事をやって生きていける社会」の実現を目指し、原体験の振り返りや自身の目指す未来を言語化するワークを行います。その取り組みを通じて自己理解を深め、社会と自分との接続を予測し、自分のWill(人生の目的、成し遂げたいこと)の発見・実現までのサポートを実施します。
そこで今回は、WBLにて実際に使用するワークシートを使いながら、従業員が「やりたいこと」を考えられるようにする具体的な方法をご紹介します。
▼WBLの詳細は、こちらの記事で詳しくお話ししておりますので、ぜひご覧ください。
3.やりたいこと起点での仕事づくり(ワーク)
それでは、実際のワークはこちらになります。ぜひ自社で取り組んでみていただければと思います!
【今すぐ使えるワークシート】
これからやることと発揮する価値
このワークシートは、自身の「やりたいこと」を起点にして、会社での仕事へと結びつける考え方を身に着けることを目的としたものです。
(1) ワークステップ①:「これからやりたいこと」を書きましょう
必ず①から始めてください。
ワークシートには、「会社にとっての価値」という項目があり、「やっぱり会社にとって価値があることを書かないといけないのか」って思ってしまうかもしれません。例えば、「うちの会社は家具屋だから家具関連にした方がいいかな」と、事業に引っ張られてしまうことです。しかし、その始め方ではご自身のやりたいことは見つからないので、順番は必ず①からにしてください。
通常のマインドだと「会社にとっての価値」から考え始めてしまいます。それが、今までの当然とされてきたことなので仕方がないかもしれないですが、今考えたいことは、これからのことなので、過去や現在の経験からは一旦離れる努力をしてください(マインドだけですよ!)。
(2) ワークステップ②:やりたいことは「誰にとって」「どんな価値があるのか」について考えましょう
例えば「釣りがしたい!」と考えるとします。
その「誰にとって」「どんな価値があるのか」ということを考えると、「自分にとって」、「幸せな時間になる」という価値が出てきます。しかし、これは自己完結できますね。そうしたことは、自分1人でやってください!
では、「釣りをして釣った魚を目の前で捌いて子どもたちに振る舞いたい!」と考え、その価値を「子どもたちにとって」「魚嫌いを無くしバランス良い食生活を届けられる」からだとしたらいかがでしょう? 同じ釣りについてやりたいこと、ですが、伝わってくる価値は全然違いますよね!
このように同じ事象でも、対象を変えたりするだけで価値が断然変わってきます。ポイントは「誰にとって」の部分を「自分」から「他の誰か」に変えていくことです。
最初はまずやりたいことを書き、その後に「誰にとって」の部分を「自分」から「他の誰か」に変えてみてください。
(3) ワークステップ③ 「会社にとっての価値」を考えてみましょう
最後は、「会社にとっての価値」を考えることです。先ほどの例でみると、「魚嫌いを無くしバランス良い食生活を届けられる」という価値が、会社の理念やVISIONに重なるかどうか、判断するということです。
例えば「事業を通じて心身ともに健康な社会を創る」ということを掲げる会社にとってバランス良い食生活を届けることは一致しますよね! ですから、これは会社にとってやる価値があるということになります。
実際に、その価値を実現させるための具体的な事業などを行うかどうかは、「儲かるか」「儲からないか」などが関係してくるとは思いますが、行ってみる価値はあるということが言えると思います。
4.会社にとって本当にやる価値があるようにするために
ここまでくると、「魚嫌いを無くしバランス良い食生活を届けられる価値を実現することは、会社にとって価値があるから予算をください!」と、なるかもしれません。
しかし、行う価値はあるかもしれませんが、「事業として成立するかどうか」は確定していません。
自分の「やりたい」ことから始まっているので、まず自分の時間を使って釣りをして、その場で捌いて子どもたちに振る舞ってみてください。
それをやり続けた先に「どうしたら事業になるのか?」というポイント見えてくると思います。 事業作りはまた考えることが違ってくるので、そのタイミングで考える必要があります。
5. やってみたい「妄想」を「現実」にする
自分のやりたいことをやることに、会社からのお金は必要ありません。
予算を獲得しようとすると当然時間がかかるのですぐにできません。やりたいことなのですぐやってみる。会社を巻き込まずに。これがポイントです。
やってみると見えてくるものが変わります。「やってみたいな!」だとやったらどうなるかの「妄想」だけ。やってみると実際に自分の目で見た「現実」が見えます。
またやり続けるとどこかで誰かが評価してくれたり、仲間が増えたりしていきます。 その時が会社に提言する時期です。まずは「妄想」から「現実」を見てみましょう!
描くビジョンは小さいことで構いません。「そんなことでもいいの?」というレベルからでいいです。誰も最初から凄いことなんてできません。
毎日ニュースに出てくる大谷翔平選手でさえ、最初からメジャーリーガーではなく、最初はどこかでキャッチボールから始めたはずです。仕事になるとどうしても最初から凄いことをやらないといけないというマインドになってしまいがちですが、はっきり言って無理です。小さいことが自信を持ってやってみる!これがとっても重要です!
6.まとめ
私はお世話になった方から頂いたきっかけがあり、考えを変えて行動することができましたが、そうしたことは稀かもしれません。
今回のワークが多くの方のきっかけになったらいいなと思いますが、そう簡単には変わらないでしょう。
人間は変わると私は信じていますが、そんなに簡単に変えられたら誰も苦労しません。コツコツとやり続けるしかありません。ワークシートには自信がありますが、このワークシートをやったから皆さんが「やりたい」を起点に仕事を生み出せるようになるわけではありません。
従業員の皆さんのマインドが変わることと同時に、組織の仕組みも考えていく必要があります。仕組みは変化をサポートするためのものです。仕組みにとらわれるのではなく、従業員の皆さんの変化に合わせた仕組みを構築していく必要があります。
第3章は、こういった内容について書かせていただきます。
小さな規模でも何か実際にやりたいことをやり出す人が増えていくと、きっと今までの仕組みではサポートしきれなくなると思います。ここでやっと仕組みを考える必要が出てきます。 また今までと違ったやり方で仕事をするので、組織の雰囲気や文化も変わっていくことが求められてくるでしょう。第3章では、「やりたい」を起点とした仕事を作り始める組織を推進するために必要な仕組みや準備を考えるきっかけをお伝えします。