新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークを導入する企業は増加しました。しかし、今後、感染リスクが低下し、出社を制限する必要がなくなった場合、テレワーク環境がどのようになるのかについて気になる方は少なくないでしょう。 当記事では、今後テレワークが定着するのかどうかについて解説します。また、テレワークが定着しない理由やその対応策についても紹介します。
目次
テレワークとは
テレワークとは、「tele = 遠くの、離れた所」と「work = 働く」を組み合わせた造語であり、情報通信技術を活用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のことです。
テレワークには、さまざまな形態があります。たとえば、自宅を就業場所として働く「在宅勤務」、移動中や移動の合間に業務をおこなう「モバイルワーク」、サテライトオフィスやコワーキングスペースといった場所を利用して働く「施設利用型テレワーク」、リゾート地で業務をおこなう「ワーケーション」などが挙げられます。
今後テレワークは定着するのか?
総務省の「令和2年通信利用動向調査の結果」によると、テレワークを導入している企業は、前回の調査から2倍以上に伸びています。テレワークを導入できていると回答した企業は47.5%、今後テレワークを導入しようと考えていると回答した企業は10.7%です。
テレワークの定着率が比較的高い職業は、情報通信業であり、92.7%の企業がテレワークを導入しています。一方、定着率が比較的低い職業は、運輸・郵便業やサービス業・その他であり、30%程度の企業がテレワークを導入しています。また、資本金の規模の観点からテレワークの定着率をみると、資本金の多い企業ほど、テレワークの定着は進んでいることが読み取れます。
このように、テレワークの導入は進んでいるものの、職業や資本金の規模によっては、テレワークの導入が進んでいない企業もあります。テレワークによるメリットを活かせるかどうかや、テレワークを導入できる環境を整備できるかどうかによって、今後テレワークが定着していくかどうかは、左右されるかもしれません。
テレワーク定着のメリット
テレワークが定着することで、企業だけではなく、従業員や社会にとってもメリットがあります。
テレワークを導入すれば、企業側にとっては、地方や海外などの方も採用できるため、応募者の増加につながります。そのため、優秀な人材の確保につながり、人手不足の課題を解消することができるかもしれません。また、従業員の交通費やオフィスの賃金・光熱費などの固定費を抑えられるため、コスト削減が期待できます。
テレワークにより、従業員にとっては、通勤のストレスを軽減できるため、業務に対するモチベーションの向上につながります。また、空いた時間を趣味や家族など、自分の好きな時間にあてられるため、ワークライフバランスの実現にもつながります。さらに、育児や介護などで、オフィスに出社できない従業員でも、テレワークであれば働ける可能性があるため、離職率を減らすことが可能です。
そして、テレワークで実家や地元で働くことができれば、地域活性化にもつながります。また、オフィスの電力消費量を減らせるため、地球温暖化対策にもつながり、環境への負荷を軽減することが可能です。
テレワークが定着しない・テレワークをやめる理由とは?
ここでは、テレワークが定着しない原因や、テレワークをやめてしまう理由について詳しく紹介します。
テレワークでできない仕事があるため
テレワークが定着しない理由の一つには、テレワークでは対応できない仕事があるためです。
情報通信業の定着率が高い理由には、テレワークでも業務をおこないやすい点が挙げられます。一方、運輸・郵便業やサービス業は、配送や接客などの業務があるため、テレワークに対応できず、テレワークの定着率が伸び悩んでいるという可能性があります。
しかし、すべての業務をテレワークに対応させることは難しいかもしれませんが、企業の職種や特定の業務によっては、テレワークに対応できる可能性は少なからずあるはずです。
出社したほうがスムーズに業務できるから
テレワークが定着しない理由の一つには、テレワークよりもオフィスに出社したほうが、業務効率が上がるという環境があるためです。テレワークを導入してみたけれど、業務生産性が落ちてしまい、テレワークをやめてしまう企業もあるかもしれません。
オフィスに出社するメリットとして、従業員同士でコミュニケーションを取りやすいことが挙げられます。テレワークでは、電話やメールなどでコミュニケーションを取らなければならないこともあり、相手の表情などが読み取れず、すれ違いが生じてしまい、上手くプロジェクトが進まないこともあります。
テレワークの環境が整わないから
テレワークを実施するには、環境の整備が必要不可欠です。そのため、十分な資金のない企業は、テレワークを推進するための設備投資ができず、テレワークを導入できないという可能性があります。
たとえば、テレワークを導入するには、従業員は、PCやネット環境などIT機器を用意する必要があります。また、企業側は、テレワークにおける勤怠管理やセキュリティ対策などをきちんと定める必要があります。
このように、テレワークを導入するには、最初のハードルが高く、導入に踏み切れない企業は少なくないでしょう。
テレワークを定着させる方法
ここでは、テレワークを定着させるための方法について詳しく紹介します。
テレワーク定着の方法①:ITツールの導入を進める
テレワークで対応できない業務とは、主に出社しなければできない業務の場合が多いでしょう。まずはその業務が本当に出社しないとできない業務なのか、見直してみるのがおすすめです。
また、近年では、Web会議システムやビジネスチャット、ファイル共有ツールなど、あらゆる便利なITツールが登場しています。同業他社でテレワークを上手く導入できている企業を参考に、ITツールを活用して、自社でもテレワークを導入できないか検討してみるのがおすすめです。
このように、とくにテレワークを導入したことのない企業は、ITツールなど、テレワークに関する最新の情報をキャッチアップしたうえで、自社の業務の見直しをおこなうことが大切です。
テレワーク定着の方法②:コミュニケーションをとりやすくする
テレワークよりも、オフィスに出社したほうが業務が捗るという企業は、コミュニケーションの取り方に課題がある可能性もあります。たとえば、テレワークでは、気軽に雑談できない、孤独感や不安感を感じて業務に集中できないという従業員がいるかもしれません。
コミュニケーションを取りやすくするには、Web会議システムやチャットツールなど、コミュニケーションツールを導入するのがおすすめです。たとえば、チャットツールを使用すれば、絵文字やスタンプを使用して、気楽に会話をおこなうことができます。また、Web会議システムの使用方法を工夫すれば、従業員の孤独感や不安感を取り除くことが可能です。
このように、コミュニケーションツールを活用して、従業員同士のコミュニケーションを活性化させることで、テレワークでも働きやすい環境を整備できるかもしれません。
テレワーク定着の方法③:テレワーク環境を整備する
テレワークの環境を整備するにあたって、テレワークの推進が順調に進んでいる企業を参考にするのがおすすめです。たとえば、テレワークで業務をおこなうためのネットワーク環境を構築する方法だけでも、さまざまな手段があります。他社の事例を参考に、自社に合ったテレワーク環境の整備を検討しましょう。
また、従業員がテレワークで快適に業務をおこなえないと、テレワークを定着させることはできません。そのため、交通費の代わりにテレワーク手当(在宅勤務手当)を支給したり、PCやネット環境など備品を貸与したりするなど、従業員のテレワークをサポートすることが大切です。
そして、テレワークを推進するために、設備投資ができない中小企業などは、テレワーク定着促進助成金など、国や自治体の補助金を活用できないか調べてみるのがおすすめといえます。
テレワーク定着の方法④:人事評価制度を見直す
テレワークでは、上司は従業員の業務をおこなっている態度や姿勢がわかりづらいため、評価しづらいというデメリットがあります。そのため、人事評価制度を見直し、従業員の人事評価に対する満足度を上げることで、テレワークを定着させることにつなげることができるかもしれません。
たとえば、従業員の目標を設定するときは、達成度合いを数値化するのがおすすめです。そうすれば、評価するときに、数値で判断できるため、適切な人事評価をおこなうことができます。また、数値化した目標のように、わかりやすい目標を設定することで、従業員の仕事に対するモチベーションアップにもつながります。
そして、テレワークでの業務を可視化できるような取り組みをおこなうことも大切です。たとえば、定期的に上司とWeb会議でミーティングをおこなうことなどが挙げられます。そうすれば、成果だけではなく、業務に取り組む姿勢やプロセスも踏まえて、より正確な評価をおこなうことが可能です。
このように、テレワークでも従業員の人事評価を適切に実施できる環境を整備することで、テレワークを定着させることにつなげることができるかもしれません。
環境を整えてテレワークを定着させよう!
現状では、テレワークを導入する企業は、年々増加しています。ただし、企業の業種や規模によって、定着率は大きく異なります。今後、感染症のリスクが低くなったとしても、テレワークを定着させるには、メリットをどう活かすかが重要です。
コミュニケーションツールなどのITツールを導入したり、人事評価制度を見直したりすることで、企業と従業員の双方がテレワークのメリットを得られるような環境を構築できるようにしましょう。