情意評価は、意欲・行動といった社員の内面を評価する手法です。個人の業績に左右されることなく、数値化できない側面にアプローチできることから、社員のエンゲージメント向上が期待できるとして昨今注目を集めるようになりました。
一方で、評価者の主観が入りやすいというデメリットもあるため、注意しなければなりません。本記事では、情意評価のメリット・デメリットについて紹介しながら、導入の流れや注意点も含めて解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 情意評価とは?
情意評価とは人事考課の手法のひとつで、社員の仕事に対する意欲や取り組む姿勢、勤務態度など内面的な部分を評価する手法のことを指します。主に規律性・協調性・積極性・責任感といった4つの基準で評価をおこない、数値化して表せないのが大きな特徴です。
業務評価などと組み合わせて取り入れることで、人事考課の偏りを失くし、社員のモチベーションアップも期待することができます。最近では情意評価を人事考課に採用する企業も増えています。
1-1. 情意評価と能力評価の違い
能力評価とは、社員のスキルや資格に注目して評価する手法です。仕事に対する姿勢に注目する情意評価とは異なり、社員が保有している能力に注目します。
具体的には、営業力、コミュニケーション能力、企画力などに注目して評価するケースが多いでしょう。ただし、評価項目については業種や職種に合わせて設定することが大切です。
1-2. 情意評価と行動評価の違い
行動評価とは、社員の行動特性に注目して評価する手法です。情意評価と同様、数値化するのが難しい手法ですが、外から見えにくい気持ちではなく、具体的な行動に注目するという点で異なります。
行動評価を実施することで多面的に評価できるため、社員の納得感が高まるでしょう。
2. 情意評価における4つの項目
情意評価においては、以下4つの項目に注目して社員を評価します。
- 規律性
- 協調性
- 積極性
- 責任性
それぞれの項目の詳細は以下の通りです。
2-1. 規律性
規律性は、法律や社内ルールに従って行動できているかを評価する項目です。具体的には、労働基準法などの法律を遵守しているか、就業規則に違反していないか、一般的なモラルを守っているかなどに注目して評価します。
規律性の評価が低い社員が増えると、社内の秩序が乱れるため注意しなければなりません。
2-2. 協調性
協調性は、上司や同僚と協力しながら仕事を進められているかを評価する項目です。具体的には、適切なコミュニケーションを取っているか、必要に応じて連絡や相談をおこなっているか、チームワークを意識しているか、といった点に注目して評価します。
協調性が高まることで組織体制が強化され、生産性の向上にもつながるでしょう。
2-3. 積極性
積極性は、仕事に対して前向きに取り組んでいるかを評価する項目です。具体的には、指示を待つだけではなく自分から行動できているか、新しいアイデアを積極的に出しているか、といった点に注目します。
社員の積極性が高まることで組織全体が活性化され、新しい挑戦が生まれやすくなるでしょう。
2-4. 責任性
責任性は、与えられた役割をこなそうとしているかを評価する項目です。具体的には、仕事を最後までやり遂げる意識をもっているか、部下に対して責任をもって指導しているかなどに注目して社員を評価します。
社員の責任性が低いと仕事がうまく進まないだけではなく、組織全体の足並みが乱れるケースもあるため注意しましょう。
3. 情意評価のメリット
ここでは、情報評価を導入した際に期待できる3つのメリットについて紹介します。
3-1. 人事評価の偏りを無くせる
情意評価を取り入れることで、社員の能力を多面的に評価することが可能となります。
たとえば業績評価は、会社の売り上げに対する社員の貢献度を数値化して評価することができますが、一方で社員の仕事に対する意欲など内面的な部分までは正しく評価することができません。
また経理や総務など、会社の売り上げに直結しない部門においては、業績だけで評価してしまうと給与や昇給など待遇面において公平性が損なわれる恐れがあります。
情意評価はこのような社員間の不公平感を減らし、モチベーションを維持するためにも有用な手法だといえるでしょう。
3-2. 自社が求める人材の育成につながる
人材育成のうえでも、情意評価を活用することができます。
会社が求める人物像を社員に理解させたいと考えていても、経営理念や方針に盛り込んだだけでは社員になかなか伝わりづらいものです。
しかし、情意評価の項目に具体化して盛り込むことで、社員は目指すべき人物像を理解し行動に移せるようになります。
上司と部下との面談においても情意評価を繰り返し活用すれば、求める人物像に近づくための意識付けにもなります。
3-3. 組織の連帯感を強化できる
情意評価の評価項目のなかに協調性や規律性があり、いずれも組織の一体感を高めるために必要な要素です。
協調性の高い人材は周囲と良好な関係を築くことができ、なおかつ建設的な意見を出し合える傾向にあります。
このような人材を正しく評価することで組織の連携を強化し、さらにはコミュニケーションの活性化につなげることができるでしょう。
4. 情意評価のデメリット
情報評価にはデメリットも少なからずあります。メリットと合わせて押さえておきましょう。
4-1. 評価者の主観に左右されやすい
情意評価は数値化して評価できないことから、評価者の主観に傾きやすい点がデメリットとして挙げられるでしょう。とくに被評価者との関係性に影響を受けやすく、実態とは異なる評価をしてしまう恐れがあります。
場合によっては、被評価者から不信感をもたれることも起こりえるため、事前に対策を講じておくことが必要です。
4-2. 目標設定が難しい
業務評価であれば、予算など数値化できる目標を設定することができます。しかし、情意評価は仕事への意欲や姿勢といった定性的なものであるため、目標設定しづらいことが欠点です。
目標が明確に定まっていなければ、社員が行動を起こせないばかりか、評価者側からしても正しい評価ができないといった問題が生じます。
このようなトラブルを避けるためにも、評価者と社員との間で事前に目標の擦り合わせをしておくことが重要です。
5. 情意評価の導入手順
情意評価を自社に合わせて運用するためには、ポイントを押さえて導入することが大切です。ここでは、情意評価の導入の流れについて紹介します。
5-1. 目的設定をする
情意評価を導入することで何を目指すのか、まずは自社の導入目的を明確にしておきます。現状抱えている自社の課題や問題を洗い出したうえで、目的設定していくことが望ましいでしょう。
目的設定が曖昧になってしまうと、期待通りの成果が得られない恐れがあるため、まずは自社に適した目的をはっきりさせておくことが大切です。
5-2. 評価項目の検討・作成
次に評価項目を設定します。項目を検討するにあたっては、役職や部署、職務ごとに内容を変えることがポイントです。
役職や部署に合った項目を設定することで公正性が保たれ、社員間の不公平感を減らすことができます。また情意評価は先にも述べた通り、評価者の主観に左右されやすいため、公平を期すためにも評価者以外の人間の評価を加味するなども検討しておくと良いでしょう。
5-3. 評価方法の決定
評価項目を作成したら、評価方法についても事前に決めておきます。
1~5段階評価が一般的ですが、評価者によっては無難に中央値「3」で評価してしまうケースもあるため、最近では1~4段階評価で実施する企業も増えています。
給与や賞与、昇給といった待遇面とも連動させながら慎重に検討を進めましょう。
5-4. 社員への周知・運用開始
決定した評価項目と評価方法を社内規定として整備します。
規定を作成しただけでは、社員から一方的な押し付けと捉えられ不信感を招く恐れもあるため、必ず社員への周知もおこないます。
この際に情意評価を導入する目的も交えて説明をおこなうと、社員からの理解も得られやすくなるでしょう。
6. 情意評価を導入するときの注意点
情意評価を導入する際は、事前に注意しておきたい点がいくつかあります。導入前に注意点についてもしっかりと押さえておきましょう。
6-1. 評価エラーに留意する
先にも述べた通り、情意評価は数値化して目標設定できないことから、次に挙げる3つの評価エラーが起こる可能性があります。
- 中心化傾向:無難な評価に逃れ標準値に評価が偏ってしまうこと
- ハロー効果:際立った特徴に引きずられて他の評価まで影響を受けてしまうこと
- 寛大化傾向:被評価者への配慮から甘い評価をしてしまうこと
上記はいずれも評価の基準が明確になっていないことが原因で発生するエラーです。評価エラーを避けるためには、導入時に明確な基準を設けることが重要です。
6-2. 改善ポイントを伝える
単純に社員を評価するだけではなく、改善ポイントを伝えることも大切です。どのような点に問題があるのかを明確に伝えたうえで、今後の改善方法を一緒に模索しましょう。
改善点を考えることで社員の成長につながるだけではなく、評価に納得してもらいやすくなります。
6-3. 社員の不信感につながらないように評価する
情意評価は社員の内面的な部分を評価するものであるため、評価内容によっては社員が納得できずに不満を覚えることも十分起こりえるでしょう。
業績評価の場合は数値といった評価の明確な根拠を示すことができますが、情意評価では不透明になりがちです。
まずは情意評価を導入する際に評価プロセスの透明性を図ることが大切です。場合によっては面談をおこない、評価者側から評価の根拠を明確にフィードバックすることも必要となるでしょう。
このように、何を主軸として評価をおこなうか取り入れる人事評価制度次第で、準備しなければならないことが異なってきます。
しかし、人事評価制度を整えると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りのもいらっしゃるかと思います。そのような方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するためにまずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
7. 情意評価の項目を具体化する評価方法
情意評価の項目を具体化する手法として、コンピテンシー評価やバリュー評価が挙げられます。それぞれの評価方法について詳しく見ていきましょう。
7-1. コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、よい成果を出している社員の行動を基準として評価する手法です。優秀な社員の行動特性をコンピテンシーと呼び、その特性に沿って行動できているかどうかを評価します。優秀な社員をモデルにするため、社員全体のレベルアップを期待できます。
行動特性のなかに仕事に対する姿勢なども含めることができるため、コンピテンシー評価は情意評価を具体的に実施する手法のひとつといえるでしょう。
7-2. バリュー評価
バリュー評価とは、自社が設定した価値観(バリュー)に沿った行動ができているかを評価する手法です。バリュー評価では定量的な基準を設けにくいため、基本的には他の社員と比較する相対評価がおこなわれます。
バリュー評価をうまく実施することで求める人材像が明確になり、社員が努力すべき方向性もわかりやすくなるでしょう。
8. 情意評価を上手く活用して社員のエンゲージメントを高めよう
今回は、情意評価の特徴や導入方法などを紹介しました。情意評価は、仕事への意欲など社員の内面的な部分を評価する手法です。定性的な面を評価できるため、業務評価など定量的な評価と組み合わせることで人事考課の公正性を保つのに活用できます。
このほか、人材育成やチームワークの面から見てもメリットの多い手法です。ただし、評価者の主観に偏る恐れがあるなどデメリットも少なからずありますので、導入の際はデメリットも踏まえたうえで人事考課の制度に取り込んでいくことが大切です。情意評価を上手く取り入れて、社員のモチベーションアップを目指しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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