HCMとは、日本語で「人的資本管理」を意味し、従業員の能力やスキルを資本と捉えます。限られた人材を有効に活用するために、HCMの考え方やツールを導入する企業が増えているようです。
しかし、「HCMとは具体的にどういうことか」「どう活用すればいいのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、HCMの基本情報や導入メリット、ツールの選び方を紹介しています。より効果的な人材活用や人事業務の負担軽減を考えている経営者・人事担当者はぜひ参考にしてください。
目次
1. HCM(人的資本管理)とは?人事における意味を解説
HCM(人的資本管理)とは「Human Capital Management」の略です。従業員の持つ能力や経験、スキルを経営資本だと考え、人材情報を総合的に管理し組織の利益に活用していく考え方を指します。
HCMの考え方に基づいた人材情報の管理システム自体をHCMと呼ぶことも多いです。HCMツールの主な機能として以下があります。
- 採用
- 育成
- 給与計算
- パフォーマンス管理
2. HCMとHRMの違い
HCMとHRMは考え方が似ていると言われています。HRM(人的資源管理)は「Human Resource Management」の略です。両者の違いを以下の表で比較してみましょう。
種類 |
考え方の違い |
取り組みの内容 |
HCM |
人材のスキル・能力・経験を「資本」として扱う |
それぞれの人材が最高のパフォーマンスを発揮できるようマネジメントする |
HRM |
人材のスキル・能力・経験を、金・もの・情報と同じように「資源」として扱う |
人材に育成やサポートなどの投資をおこない、費用対効果で利益を得る |
このようにHCMとHRMは、根本的な考え方が異なります。とはいえ、機能が重複している部分もあり、明確に区別されているわけではありません。
3. HCMの主な機能
HCMの主な機能はこちらです。
- 人事管理
- タレントマネジメント
- 就業管理
- 報酬管理
それぞれの機能について、詳しく説明していきます。
3-1. 人事管理
従業員の基本情報(勤怠・休暇・健康管理)の登録や管理をおこないます。
それにともない、組織全体の状況も把握するため、人材に対し的確な処遇を実施することが容易となるでしょう。
3-2. タレントマネジメント
HCMの代表的な機能には、人材の能力を最大限に引き出し、戦略的に活用する「タレントマネジメント」をサポートする機能もあります。
HCMを使えば、人材の資質・経験・スキルなどが可視化され、組織・チームの適切な組み合わせを考案できるでしょう。
3-3. 就業管理
HCMでは、就業管理・勤怠管理もできます。出勤・欠勤・遅刻・早退、また労働時間・有給消化などのスケジュール管理ができ、システム上で社員への連絡も可能です。
労働基準法に沿った管理がスムーズにおこなえるので、管理者の業務負担が軽減されるでしょう。
3-4. 報酬管理
HCMでは、各従業員の評価や報酬管理が可能です。成果に沿った正当な評価がされているか、また評価に沿った報酬が支払われているかがスムーズに確認できます。
評価の偏りがなく公平な判断ができるため、従業員は自分の報酬に納得感を持てるでしょう。
4. HCMを導入するメリット
HCMを導入すると、以下のメリットがあります。
メリットを受ける側 |
メリット |
人事担当者・管理者 |
人事管理業務の効率化ができる 効果的な人材の配置がスムーズにできる 計画的な人材育成ができる |
従業員 |
能力・スキル・経験に沿った配置がおこなわれる 正当で平等な評価を得られる 個人に適した人材育成が実施される 適切な育成や配置、評価によってモチベーションが上がる |
企業全体 |
企業全体の状況が把握しやすくなる 優秀な人材を発掘・育成できる 効果的な人材配置により生産性のアップが期待できる 人材を無駄なく活用できる 従業員の離職を防止できる |
HCM導入によるメリットを受ける範囲は、人事担当者や管理者だけでなく従業員、ひいては企業全体にもおよびます。
導入をする場合には、自社に合ったHCMツールを選び、積極的に活用していきましょう。
5. HCMツールの7つの選び方
ここでは数あるHCMツールのなかから、自社に合ったツールの選び方を解説します。HCMツールの選び方は以下の7つです。
- 機能で選ぶ
- 料金で選ぶ
- 運用形態で選ぶ
- 操作性で選ぶ
- サポート体制で選ぶ
- セキュリティで選ぶ
- 外部ツールとの連携性しやすさで選ぶ
それぞれの選び方のポイントを詳しく紹介していきます。
6-1. 機能で選ぶ
HCMツールの機能には大きな幅があり、すべてを網羅した総合的なツールもあれば、一部の機能に特化したツールもあります。
多機能ツールは、活用できれば企業にとってメリットが大きいです。しかしコストがかかり操作も難しいため、活用しきれない可能性も考慮すべきでしょう。
コストが低く、使いやすいツールを求めるなら、必要な機能が搭載されたシンプルなツールを選ぶことが大切です。
自社が求める機能は何か、必要な機能に対応しているツールはどれかをポイントにして、ツールを選びましょう。
6-2. 料金で選ぶ
予算内で導入できるかをチェックすることもHCM選びのポイントです。
HCMを導入しても、効果とコストが見合っていなければ企業の利益にはなかなかつながりません。
HCMツールにかかるコストは、初期費用・月額コストなどです。各ツールによって大きく異なるので、導入前に必ずチェックしましょう。
従業員の人数によって費用が異なる場合や、プランごとに料金が変わる場合もあります。導入後の料金のシミュレーションをおこない、無理のない運用ができるツールを選びましょう。
6-3. 運用形態で選ぶ
ツールには、クラウド型とオンプレミス型の2つの運用形態があります。2つの運用形態の特徴をまとめました。
名称 |
運用形態・適している企業のタイプ |
メリット・デメリット |
クラウド型 |
サービス会社が提供するサーバーを活用し、オンライン上でツールを利用する。 |
場所を問わず使用できる 比較的安価で導入できる セキュリティをサービス提供側に任せられる カスタマイズしにくい |
オンプレミス型 |
システム運用に必要なサーバーやソフトウェアを社内に設置して利用する |
セキュリティを強化できる カスタマイズしやすい 導入に時間がかかる 導入費用が高価 |
クラウド型は、初期コストを抑えて導入したい場合や、一部から運用したい企業に適しています。
オンプレミス型は、独自のカスタマイズをしたいと考える企業やセキュリティを重視したい企業におすすめです。一方で、システム管理体制を社内に構築できる企業でなければなりません。
6-4. 操作性で選ぶ
HCMを選ぶ際には、操作性もチェックしましょう。HCMは人事担当者や管理者などの一部の担当者だけでなく、一般の従業員も操作をする場面が多くあります。
なかには、パソコンの操作が苦手な従業員がいるかもしれません。企業にスムーズにツールを浸透させるには、シンプルかつ簡単な操作性が理想です。ツールを選ぶ際には、従業員が使いこなせるかも必ず視野にいれましょう。
6-5. サポート体制で選ぶ
不明点や不具合があった場合のサポートが十分であるかは、ツール選定の大きなポイントです。
システムの運用に不慣れな場合は、どのようなサポートを受けられるかが非常に重要なポイントとなります。訪問によるサポートが受けられると、担当者は問題や不安を感じずに、システムをスムーズに運用していけるでしょう。
またサポートには、有料サポートと無料サポートがあります。コストの面も重要ですが、初めてシステムを運用する場合には、有料でも手厚いサポートを優先するべきでしょう。
6-6. セキュリティで選ぶ
従業員のあらゆる情報を登録するHCMツールは、セキュリティ管理が非常に重要です。もし情報漏洩が起これば、社会からの信頼が失われる可能性もあります。
ツールを選ぶ際には、どのようなセキュリティがおこなわれているかをしっかりとチェックしておく必要があるでしょう。
6-7. 外部ツールとの連携性しやすさで選ぶ
もし現在、ほかに導入している外部ツールがある場合、連携のしやすさにも注目して選びましょう。ツール同士を連携させることで、より利便性が高まります。連携が可能かどうかは作業効率の良し悪しの大きなポイントとなるでしょう。導入時には、連携方法のチェックも忘れずにおこなってください。
7. HCMを活用して従業員のパフォーマンスを最大化
いかがでしたでしょうか。HCMは、人事管理やタレントマネジメントなどを実現するうえで必要となります。
本記事を参考に、ぜひツール導入を検討してみてください。