「20代エンジニアのキャリア」をテーマに、株式会社ネットジンザイバンク主催の注目スタートアップと若手エンジニアの交流会がおこなわれました。
本イベントは主に20代のエンジニアを対象にしたイベントでしたが、取材する中で「エンジニアのキャリアプランをどう設計すべきか」という、現代の人事により一層求められていくテーマにも通じる内容にもなっていました。
今回は注目スタートアップ3社のCTOによっておこなわれたパネルディスカッションの内容を記事にまとめました。今後のエンジニアの組織設計に向けて参考になる内容が満載です。
是非、ご覧ください。
■講演概要
- 【注目スタートアップ現役CTOが語る】
~市場価値を上げる20代エンジニアのキャリアの突き抜け方!~ - 主催:ネットジンザイバンク
- イベント詳細URL:https://connpass.com/event/70146/
- 会場:DMMグループ(東京都港区六本木三丁目2番1号 住友不動産六本木グランドタワー)
- 開催日時:2017/11/16(木)19:30〜21:30
■モデレーター・パネラー紹介
- モデレーター:戸村 憲史氏(株式会社ネットジンザイバンク)
- パネラー①:渡部 拓也氏(株式会社Kaizen Platform)
- パネラー②:柴山 直樹氏(株式会社プレイド)
目次
三者三様のバックグラウンドを持つエンジニアたち
最初は皆さんの自己紹介をお願いしたいのですが、渡部さんからお願い出来ますか。
Kaizen PlatformでCTOをやっている渡部と申します。
私の前職はスマートニュースという会社で、プロダクトの開発や開発責任者を、その前のグリーでは事業責任者兼 開発責任者をさせていただいていました。
キャリアとしては、事業側やプロダクト側の両方から開発を見てきた感じですね。現職には2016年10月にジョインしました。
2代目のCTOとして、この1年間ぐらいはプラットフォームの開発や事業の責任者を兼務しています。本日はよろしくお願いします。
渡部さん、ありがとうございます。それでは柴山さんお願いします。
プレイドのCTOをやっている柴山と申します。
僕自身は、エンジニアとして20代をほとんど過ごしておらず、9年ほど大学で研究をしていました。研究内容は幅広くて、脳科学やロボティクス、最近の流行っている機械学習などをおこなっていました。
そこから、研究室の先輩が経営しているベンチャーで働きはじめまして、経営やエンジニアリングについて学ばせていただきました。その1年後に現職という形になります。よろしくお願いします。
柴山さん、ありがとうございます。それでは最後に私の自己紹介を。ネットジンザイバンクの戸村と申します。
私はCTOではないのですが、基本的に社内にエンジニアは自分一人だけでして、今は責任者としてやらせてもらっています。
もともとは新卒でSIerに入社して業務サービスをつくっていて、その後にコールセンター向けのクラウドサービスをずっとつくっていました。
サービスをつくっていく中で、「どうせだったら自分でつくりたい」と思い、創業間近だったiettyという不動産系の会社にジョインし、採用業務まで含めて幅広く経験させてもらいました。
今はエンジニアの転職支援に加えて開発をおこないながら、開発組織を立ち上げに携わっています。本日はモデレーターをやらせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。
今の20代エンジニアが身につけるべきスキルは何か?
早速ですが、お二人に「今の20代エンジニアが身につけるべきスキル」について、お聞きできればと思っています。それでは、渡部さんからお願いします。
技術はすぐに変化するので、特定の技術やスキルというよりも「自分で学習する癖」を身に付けるのが一番だと考えています。
例えば自分の役割が増える場合のことを考えてみましょう。もちろんベースになる知識やスキルも重要なのですが、新しく習得しなければいけないことに対してどうアプローチするのかが重要になってきます。
その時に、勉強をするとか本を読むみたいなことが習慣になっている人のほうが明かにキャッチアップするスピードが早いんです。
また新しい知識とかでも、仕事でとりあえずやってみるだけよりも、自分で勉強していた方が習得する時間を短く出来るし、物凄く伸びが早いなと感じています。
ありがとうございます。柴山さんはいかがですか?
何かしらのユニークなスキルを一つ身につけるのが20代なのかなと考えています。
身に付けたスキルが、その後に活きるという場面がエンジニアには本当に多いなと感じているのですが、何でも良いから自分の色とも言えるスキルを伸ばして、リブレイスされない人になるのが重要なのかなと。
自分の今いる環境に合わせてスキルを伸ばしていくっていうのが良いと思います。
組織作りや技術力アップのために各社は何に取り組んでいるのか?
ちなみに「組織づくり、技術力アップのために取り組んでいること」は何がありますか?
よく聞く話だとは思いますが「とにかく委譲する」ことを意識しています。
例えば、ある程度の実力がついてきたメンバーをリーダーにして、わりと難しめのタスクを丸々渡したりしています。
そうすると、個人的な感覚にはなってしまいますが、リーダーになった人が極端に技術力が上がるイメージがありますね。
なるほど。ちなみに、タスクを渡す側も受け取る側も「抵抗感を持ってしまうケース」もあると思うのですが、そこは何か対策されていたりしますか?
正直に言うと、若干壊れるのを前提でやるしかないと思っています。
もちろんレビューなどは細かくやるのですが、どうしても経験的に足りない要素から質の差が出たりします。
そこが若手にとっては成長の機会になるかなと考えていますが、最悪の場合路回避するためにベテランのエンジニアが最後の責任はとることもあります。今はこの塩梅を取捨選択しながら使い分けています。
ありがとうございます。渡部さんはどうですか?
個人的にですが、会社が一番エンジニアに与えることが出来る成長機会は、「業務へのアサイン」だと考えています。
技術は一人でも勉強出来るけれども、チームで仕事をすることは一人では出来ない。そこで、その会社でないと出来ない仕事に対して、エンジニアをアサインするのが成長機会の提供だなと感じています。
また柴山さんの話とも似ていますが、「権限の委譲」も適切におこないます。これは採用でも驚かれることが多いのですが、僕は技術選定にほぼ関わらないようにしています。
大枠の技術の方向性とかは決めますけど、技術選定は業務をアサインしたチームで決めてもらいます。もちろん、どうしてもそれは駄目だと判断した場合は止めますが。
なるほど。他にも取り組みはありますか?
他には「パワーランチ」と社内では呼んでいる取り組みを月に2回の頻度おこなっています。
具体的には、各プロジェクトで開発しているプロダクトのデモを見せて工夫したことや意識したことを共有しながら、ランチを食べています。もちろん、ランチ代は会社側が支給しています。
後は、2週間に1回、1時間で「未来のことだけを話す会」もあったりします。業務から採用のことまで話たりもしますし、それこそ「本当に働きたい環境」みたいなことも話したりしますね。
こんな感じで、働きたい環境をなるべく実現出来るように動いています。
実際に若手エンジニアはどのように活躍していて、どのようなキャリアを目指せるのか?
最後に、お二人の会社で若手エンジニアが活躍している様子、歩んでいけるキャリアについてお話しいただければと思います。
弊社は平均年齢が30歳前後くらいの会社です。ですので、若手も活躍するというのは割と当たり前の環境です。
その中でも少しずつですが、若手でも影響度が上がってきた人は出てきています。その人たちの特徴としては、自分の考えで仕事を進められていることが挙げられます。この部分も一つ成長してもらっているところかなと思います。
また人によって適材適所はあるので、エンジニアからビジネスサイドに入っていったり、カスタマーサクセスなどの役割を担ってもらったりすることも良いなと考えています。
エンジニアという枠に縛られずに、その人が最もパフォーマンスを発揮出来る業務にアサイン出来るように組織を構築しているところです。
弊社は約60人の規模ですが、約20人がエンジニアでそのうちの5人くらいが20代です。20代の若手が活躍している例としては、エンジニアのマネージャーを務めている社員がいます。
実はその社員は、もともと「マネージャーに興味ない」と話していたのですが、最近はものすごくチームをビルドアップ出来るようになってきました。頼もしいなって感じています。
実際には、弊社のエンジニアは20代~50代までいるのですが、年齢は意識せずに全員がフラットに働いています。
キャリアとしては、もともとがコードを書くことよりも「プラットフォームをどう構築してユーザーに価値を提供するのか」ということに興味があるメンバーが多いので、その部分でのキャリアの幅は広いかなと感じています。
柴山さん、渡部さん、ありがとうございました。
【私見】これからの人事には“エンジニアのキャリアプラン設計能力”が必ず求められる。
今回のイベントの取材を通して、これからの人事には「エンジニアに活躍してもらえるキャリアプラン」を設計する能力が求められることをヒシヒシと感じました。
エンジニアのキャリアプランと一言で言っても、「プレイヤーとしてスキルをひたすら磨きたい」という方もいれば、「マネジメントや経営に携わりたい」「事業開発側に回りたい」と考えている方がいたりとキャリアの方向性は多種多様です。
実際にイベントに参加されていた若手エンジニアの方々の質問を聞いていても、各々が自分の思い描くキャリアがあり、それを具体的に実現させるための質問が多く飛び交っていました。
そこで感じたのが「若手エンジニアの成長意欲の高さ」です。若手エンジニアを採用したいともしお考えなのであれば、人事としてどのように期待に応えられるようにするかを考える必要があります。
もしすでにエンジニアが複数名働いているような会社であれば、実際にどのような業務をおこなっており、どのようなスキルが身につく環境なのかを把握し、求職者に訴求することが必須となります。
また会社からはどのようなバックアップがあり、どのような未来を描けるのかが明確でなければ熱意のあるエンジニアの採用は困難です。エンジニアを初めて採用するのであれば、なおさらハードルは上がります。
「エンジニアの採用はエンジニアに任せるべきだ」という意見もありますが、少なくとも「エンジニアが活躍出来る環境」を構築する責任は人事にあるのではないでしょうか。
「未知の領域で何をしたら良いか分からない」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、エンジニアについて理解する姿勢を持つことから始めるべきです。
まずはエンジニアが何を求めているのか把握する。そして、その期待に応えられる組織体制を設計し、試行錯誤を繰り返しながらエンジニアに活躍してもらえる環境を実現する。
会社の成長に寄与する意味でも、また人事としての市場価値を高めるためにも、“エンジニアのキャリアプラン設計能力”が求められる時代はやってきています。