株式会社チームボックスの山浦 早恵です。チームボックスが提供するリーダー育成プログラム「Teambox LEAGUE」では、グローストレーナーとしてリーダーの伴走をしています。
先日、弊社の山本から「リーダーに必要な5つの姿勢」をご紹介させていただきました。
①さらけ出しているか?
②アンラーンしているか?
③自責しているか?
④人の成長を信じているか?
⑤習慣化しているか?
※山本さんの記事は、こちらよりご確認ください。
どんなリーダーにも悩みはつきものです。「Teambox LEAGUE」では、参加者一人ひとりに、専属のグローストレーナー(リーダーの成長に伴走する専門家)がつき、それぞれの課題に合わせて1on1を行います。
今回は、「Teambox LEAGUE」のトレーニングの中で、自分がどう見られているのかという自己認識に気づき、周囲に寄り添ったコミュニケーションを実践。挫折に対しても、目標を見失わず、自責し続けたリーダーの事例を紹介します。
<本日のリーダーの特徴>
業種:電気機器メーカー
職種:IT事業部
役職:課長
年齢:30代
悩み:部下や上司、部署間のコミュニケーションができない。組織の体質を変えたい。
フォーカスした姿勢:自己認識ができているか?
【執筆者】山浦早恵 |株式会社チームボックス
1967年長野県生まれ。大学卒業後、大手精密機器メーカーのソフトウェア子会社に長らく在籍。ソフトウェア設計・開発、ソフトウェアプロセス改善・品質管理、人材育成に従事したほか、ソフトウェアテスト・財務経理、内部監査のマネージャーを歴任。2015年Teambox LEAGUEと出会う。トレーニングによってマネージャーの姿勢と行動が変容していく様を目の当たりにし「リーダーが変われば組織は変わる」に強く共感、チームボックスへの参画を決意。2019年4月より現職。
目次
1. 全てのステークホルダーに希望を与えるリーダーになるために
Aさんはソフトフェアのエンジニアからキャリアをスタートさせ、ITベンダーの設計、プロジェクトマネージャーなどを経験し、同社のIT部門に入社。当時、社内では大規模なインフラ整備を行っており、Aさんは会計や財務システムプロジェクトのリーダーとして採用されました。
コロナ禍の影響で同社もフルリモートワークが続いている環境下で、入社して間もないAさんは、同社の体質、上司や部下、部署間でのコミュニケーションに課題を感じていました。
「まず自分自身が何をやるべきか。部下の意見が全体の方向性と合っているのかを確認するために、1on1を行ったところ、ほとんどのメンバーから挙がったのは“モチベーションが上がらない”という声。その理由を紐解いていくと、プロジェクトのスケジュールが固まらず、いつ何を行うのか、誰が何をやっているのかが分からない、という状況だった。プロジェクト成功のためというのはもちろん、全てのステークホルダーの成長を信じ、希望を与えるリーダーになりたいと思いました。」(Aさん)
経験のみならず、IT知識やスキルも豊富なAさんの性格は、素直で好奇心旺盛、学びに対して貪欲。そのうえ、自分ごとで考え、学び、行動に移す「自責」の姿勢も持ち合わせている方でした。一言で言うと「正義の味方」のような。
Aさんのなかでは「社内で実現したい目標」と「会社を超えて日本の社会を良くしたい」という2つの大きな目標がありました。
その一方で、一人で走ってしまって周りがついてこられなかったり、Aさんに対する部下からの見られ方と自己認識に差異が生じているという課題も。事前に収集した部下からの匿名フィードバックにおいては、「声色が怖い」「感情が見えにくい」という声がありました。特にAさんは入社して間もなかったこともあり、これらの声に対して非常に悩んでいましたね。
私がAさんとコミュニケーションを取る中で意識した問いかけは、Aさんの想いや感情を素直に出す、ということ。まずはその壁を乗り越える必要がありました。
一度目の1on1(Half Time)で、役職やスキルを取っ払って1人の人間としてコミュニケーションを取っていこうという約束をしました。どんなことがあり、どんなことを感じたのか、毎日テキストでやり取りをしました。
Aさんはもともと学ぶことに対して貪欲な性格でしたので、質問もたくさんいただき、私もそれに応えるように向き合いました。また、日々の学びを行動に反映させる中で、Aさんが実現したいことをしっかりと言語化して、ぶれないように伴走しようと心がけました。
2. 自己認識を高め、相手に寄り添うことで、自分も相手も行動が変わる
Aさんが「Teambox LEAGUE」を受ける中でまず取り組んだ課題は、部下とのコミュニケーションと部署間でのコミュニケーションについて。そのために、自責の意識を持ち、自らが考え、行動に移しました。
当時、Aさんの部下は関連会社や派遣社員含め7名。まずは自らのパーソナリティを知ってもらうために、それまでカメラオフで行っていたオンライン会議をすべてカメラをオンに切り替え、他の参加者に顔が見える状態で参加しました。
加えて、1日1時間、メンバーとの1on1相談タイムを設け、Aさんと部下のIT知識やスキルの乖離、部下が抱えている課題などを把握しました。そうすることで、自分自身がどういう見られ方をしているのかを理解し、部下に寄り添えるようになりました。業務に関してだけでなく、週に一度部下と雑談だけをする場を設定したことで、コミュニケーションが円滑になったように思います。
大規模なプロジェクトであったために、部署間での連携は必須。そこでAさんはもう一つの課題である部署間でのコミュニケーションに焦点をあてました。
それまでは、業務で問題が起きてから該当の部署の人とコミュニケーションを取る、どちらかというと受け身な姿勢でした。Teambox LEAGUEを受けてからは、週に一度は他部署とコミュニケーションを取る機会を設定し、関係性を深めるよう努めることで、業務の円滑化や課題の早期対応を可能にしました。
Aさんにとっては、自分自身が突き進むだけでなく、部下や周囲に歩み寄っていくということが大きな成長、気づきにつながったのだと思います。実際、他部署で同じ想いを持った仲間が増えたり、Aさんに対して部下が本音を言うことができるようになったりと、周囲の変化は見てとれました。
3. 立ち止まってやり遂げたい目標を言語化
さらに大きな課題としてあったのが組織間の壁です。他部署との連携をより強固にしたことは、組織内の一つの壁を乗り越えた事例だったと思います。実際に、隣の部署のマネージャーが体調を崩し、マネジメントがうまくいかなかった時は、Aさんが率先して立て直す、ということもありました。
しかし、残念ながらAさんの組織の体質として「ボールを拾ったもの負け」という体質がありました。Aさんの上司は、Aさんのこの行動を良く思っていなかったようで、結局はポジションを外されるまでになってしまいました。
部下もいない状況で、「Teambox LEAGUEを続ける意味があるのか」と、Aさん自身も目標を見失った時期がありました。それほど厳しい状況に置かれたのだと思います。
ですが、Aさんは苦しみながらも、諦めるという選択はしませんでした。一度歩みを止めて、自分が本当にやりたいことは何かを見つめ直したのです。Aさんには、会社で実現したい目標と、会社という組織体を超えて実現したいビジョンが明確にありました。それをアウトプットして、私に共有してくれたことで、Aさんのモチベーションが再燃していきました。
その後は、目標の実現に向け部署の壁を超えて、決裁者である所轄の本部長と折衝し、Aさんが思い描いたことを何度も提案。相手が何を考えて、どこに向かっているかまで寄り添いコミュニケーションを取るという新たなアクションを起こしていきました。
4. 想いや考えを行動に反映させ、自責のステージを上げる
Aさんは、会社で実現したい目標に向け、自己認識を高めて、周囲に寄り添いました。そして、自分自身にある願望・やりたいことを立ち止まって考えることで、自責のステージが上がったように感じました。
チームボックスにおける自責というのは、自分を責めるとか、自分で責任を被るという意味ではありません。自分事で考え、行動を起こしていくという意味です。
Aさんはもともと好奇心が旺盛で、新たな学びを素直に受け入れる姿勢がありましたが、Teambox LEAGUEから得た学びでさらに、自責のステージを着実に登っていったと感じています。
想いや考えを素直に行動に表すことで、部下との関係性が深められたり、同じ想いを持つ仲間が集まってきます。目標を失ったときには、一度立ち止まっても構わないと思います。自身が本当になし得たいことを自分に問いかけ、言語化してみる。そして、どんなに小さなことでもいいから、いま自分にできることをやってみる。そうすることで、自責のステージは上がっていくのかも知れません。
この連載では、これからも姿勢や行動を変えたリーダーの事例をご紹介していきますので、ぜひみなさんも参考にしていただき、組織に変化をもたらすことができると嬉しいです。