新型コロナウイルスの影響により、事業運営は予測困難な不確実性の高い時代に突入しています。各個人の働き方のニーズや価値観の多様化が進み、メンバーのマネジメントの複雑性が増してきています。
そのような変化の中で、従来の組織開発手法では通用しない場合が散見されるようになりました。時代背景に沿った組織づくりを進めなければならない中で、「対話型」の組織開発が注目されています。
本記事では、2022年8月23日・24日に開催したHR NOTE CONFERENCE2022より、株式会社チームボックスの山本氏、パーソルキャリア株式会社の大里氏、モデレーターとして株式会社Mentallyの西村氏が登壇したSession2-A内容をご紹介いたします。
これからの時代に求められるリーダー像についてのディスカッションをもとに、マネジメントスタイルをアップデートをしていくための知見をご紹介いたします。
山本 伸一|株式会社チームボックス 取締役
1979年福岡県生まれ。トレーニング統括としてプログラムを設計し、リーダーシップの極意を伝える。1on1ではときに厳しく、ときに深く傾聴しながらリーダーの成長をサポートする。現在、東京理科大学・國學院大學講師を務める。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(DC2, PD, 海外)を経て、ベン・グリオン大学研究員。5年にわたりイスラエルでユダヤ人のネットワークを研究。
大里 真一朗|パーソルキャリア株式会社 タレントシェアリング事業部 Business Innovation統括部 エグゼクティブマネジャー
大学を卒業後、パーソルキャリア株式会社(旧:インテリジェンス)に入社。人材紹介の法人営業、営業企画、金融機関等とのアライアンス推進等を担い、最大100名以上のマネジメントを経験。その後、新規事業開発に従事し、PERSOL MIRAIZ(toCサービス)やHRアナリスト(toBサービス)の立ち上げ、グロースに寄与。現在は、「雇用によらないはたらき方の創造」を掲げるタレントシェアリング事業部にて、複数サービスの立ち上げに携わる。また、直近リリースした副業・フリーランスと企業を直接つなぐマッチングサービス「HiPro Direct」の事業責任者も務める。
西村 創一朗|株式会社Mentally 代表取締役社長
複業研究科/HRマーケター。1988年神奈川県生まれ。新卒でリクルートキャリアを経て、本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業。2017年1月に独立し、複業研究家として企業向けコンサルティングや、経産省「人材力研究会」の委員を務めるほか、『複業の教科書』を出版。独立後、3年間で3度メンタルダウンを経験し乗り越えた原体験を元に2021年10月にメンタルヘルステック領域のスタートアップとして株式会社Mentallyを創業。
1. 組織を成長させるリーダーシップの条件とは|チームボックス山本さん
チームボックス代表の山本と申します。
チームボックスはリーダーの育成を進める組織の開発に取り組む会社です。これまでに多くの企業様の組織開発に携わってきました。
そして、その中で最もお客様から聞く悩みは「部下が育たない」というマネジメント上の課題でした。この課題は、
①部下の育て方がわからない
②育てる時間がない
という2つの原因に分解することができます。
①については、かつて自分が厳しく育てられながら頑張ってきた課長レイヤーの方々に非常に多く、自分が受けた教育方法と同じことをやると、今の時代では「ハラスメント」と言われてしまうなどの問題が起こっています。
また②については、現場で仕事をしながら後輩育成にあたるプレイングマネジャーに多く、彼らはジレンマを抱えながら、日々孤独の中で頑張っているケースが多いと感じています。
組織発展には「リーダー層の姿勢」が大きく関係している
これらの解決方法として、部下の育成方法に関する研修の実施をおこなったり、部下の育成制度を確立したりすることも重要だと思いますが、本日は「自分自身に目を向ける」という視点で話を進めていきたいと思います。
まず、管理職の役割について考えます。大前提として業務を管理することは非常に重要な役割です。しかし、今の時代は、組織発展のために部下を成長させる、そして成功に導くことが管理職に求められています。
仕事の成果を出すにあたって、現場で行動するための知識やスキルを身に付けることは当然大切です。しかし、より根本的な部分に目を向けると「リーダーとしての姿勢」が重要で、これらは身につきにくく、変えにくい部分と言われています。
リーダーの姿勢は3つの観点から測る
リーダーの姿勢は、3つの観点から測ることができます。これらは非常に見えにくいですが、対話をしている時の言葉の中に表れてきます。
そのため、今回は対話の中で自分がリーダーとしての姿勢をきちんと表明できているかについて、次の3つで具体的にチェックしていきます。
①さらけ出しているか(自己開示できているか)
まず一つ目は、さらけ出しているか(自己開示ができているか)です。組織や仲間のためなら自分の都合の悪いことも素直に認められる。たとえば、上司が普段からスライドのような内容を自分の口で自然に伝えられているかどうか考えてみてください。
②アンラーンしているか
次に、アンラ―ンしているかです。自分の成功体験に囚われることなく、誰からでも素直に学べているでしょうか。部下に知らないことを素直に伝えられているでしょうか。
③人の成長を信じているか
最後は、人の成長を信じているかです。部下に対して「できない」ではなく「まだできてない」と捉えて、粘り強く関われているでしょうか。「できてないね」と伝えて終わるのではなく、次に繋げるような対話ができているかが肝心です。
このように、改めてご自身の対話をチェックして頂きたいと思います。具体的には、自分が部下と話しているときや会議での発言を録音し、チェックしてみる良いかと思います。
2. 強い組織作りと百人百色のリーダーシップ|パーソルキャリア大里さん
パーソルキャリアの大里と申します。
これまで、「doda」という強いブランドがある既存組織のマネジメント、新規事業立ち上げ時のマネジメントなど、幅広いフェーズの組織をマネジメントしてきましたので、それらをエッセンスにお話したいと思います。
「強い組織」とは何か
今回「強い組織」という題目をいただきました。
「強い組織」とは「強い」と「組織」という二つに分けることができ、僕自身はこの「組織」というワードがキーだと思っています。
なぜなら、メンバーがただ集まっただけの集団は「組織」ではなく「グループ」であり、組織は共通の目的を持って、その目的に向かって尽力しているものだと捉えているからです。
そして、その組織の目的を果たすための「しなやかさ」「変幻自在さ」などが「強さ」になると思っています。組織作りやマネジメントをおこなう中では、カメレオンのように色をカラフルに変えられる、引き出しを持てることが重要です。
組織内の目的を共通化させ、それを変幻自在に操る
組織作りは、基本的に「経営戦略」と自分たちが置かれている「事業フェーズ」のギャップをベースに、組織がどうあるべきかデザインしていくことが重要だと考えています。そして、僕自身がリーダーシップで最も求められていると考える重要な要素は、「最短で最大の成果を出す」ことです。
実際に、メンバーには本当にいろんな方がいます。前向きに今の仕事を取り組めている人もいれば、後ろ向きな人もいます。その多様なメンバーのベクトルを揃えていかなければならない。そのために、僕自身はメンバー1人1人のストーリーを理解するための「対話」を重要視しています。
途中から組織を引き継ぐパターン、ゼロから組織を作り上げるパターンなど様々ありますが、まず最初にやることは、徹底して「全員と話す」ということです。
その上で、経営戦略に向けて最短コースで進むために、どのようなマネジメントを取ればメンバーが一体となって成果を最大化できるか、という観点で考えています。
現場レベルで起こりがちな「よくある失敗」
ここで、実際に現場レベルで起こりがちな失敗についてご紹介します。
まずは、今あるケイパビリティから方針を考えてしまうことです。たとえば、新規開拓力が強いAさん・Bさん、コミュニケーション力がありストイックなCさん・Dさんがいる場合、営業戦略上は新規営業に注力しようという方針になりがちです。しかし、ここには二つの問題がはらんでいます。
1つ目は、「組織方針が戦略ストーリーに当てはまっているか」という点です。もしかしたら既存顧客をフォローする方が、売上の最大化に繋がるかもしれません。
2つ目は、「メンバーのストーリーを本当に解釈してあげられているか」という問題です。これまでは新規営業をやってきたが、本当は異なるスキルを伸ばしたいといった想いを持つメンバーも必ずいるはずです。
このような点を考慮しながら「組織としてどこにベクトルを向けるべきか」「事業を最短で進めるためにどうあるべきか」を、マネジメントや組織運営をする人、もしくは人事も一体となって考えていく必要があると思っています。
また、目的が共通化されていない場合もよくあります。「全員で協力して高い成果を上げよう」と言っていても、想像以上に一人一人が見ているものがバラバラなケースは多いです。全員の共通認識のずれは組織崩壊の一歩目ですので、すり合わせなければなりません。
各事業フェーズにおける組織のあり方とは
このように、縦軸にタックマンモデル、横軸に事業フェーズを置いたグラフの場合、順調にいけば左上から右下に流れるモデルができます。
立ち上げフェーズで混乱期にある場合は、対話が求められて一緒に作っていく一体感ある運営が大事になります。反対に、拡大フェーズでは統率形で「これをやる」と決めていくことが大事です。また、第2創業期でさらなる成長を考える場合は、ビジョンが大切になると思います。
事業フェーズによって求められる組織のあり方やマネジメントのあり方は変わります。そのため、それらを人事と連動しながらどれだけデザインできるかが問われます。
そこに置かれるメンバーのストーリーまで想像しながら、「この組織においては、どういうマネジメントがあるべきか」を一緒に考えていくことが重要です。
その中で、フェーズごとに求められる「対話」と「議論」の切り分けも必要です。青枠の上が、対話が重要視されるフェーズで、グレーより下側が議論によって意思決定を行い、早いスピード感で事業を進めていくフェーズだと思っています。
対話型組織という言葉が注目を集めていますが、目的のない対話は生産性を損ねる可能性もあります。今の組織で対話をどう位置づけるのか、対話の目的は何かをしっかり考え、事業運営や組織運営をしていく必要があると思います。
3. パネルディスカッション
それでは、ここからパネルディスカッションを進めていきたいと思います。
Q1. 「対話型」のマネジャーに求められるスキルとは?
大きく分けて2つあると思っています。1つ目は、問いのスキルです。
リーダーが良い問いを投げかけることは、良質な思考を導き出したり、あるいは行動を促したりすることに繋がるため、普段からおこなっていく必要があります。
具体的には、相手から話を引き出したい場合は、オープンクエスチョンで会話を広げる質問を用いる。相手に決断をさせたい場合は、クローズドクエスチョンでイエスorノーといった選択肢を与える問いを投げかける、といった工夫が必要です。
2つ目はフィードバックです。フィードバックは、事実を正しく認識したうえで組織・個人が目指す理想と現状のギャップを埋めていくためのコミュニケーションとしておこなう必要があると考えています。
山本さんがおっしゃっている2つのスキルは、実践的で本当に重要だなと思います。その上で、僕は抽象度の高いところからお伝えさせていただきます。
「対話」は、メンバーにとって必ずしも良いものではなく、嫌がられるケースも数多くあります。この原因は、対話がメンバー・マネジメントの中ですり合ってないことが考えられます。
私は、メンバー1人1人のキャリアや生き方と今の仕事を結びつけてあげるべきだと思っています。なので、「マネジメントする側がメンバー個人に対して何を支援してあげる人なのか」というお互いの関係性がすり合っているかどうかを見ることも重要であると考えています。
積極的に成長したいと思っていないメンバーにフィードバックをしても、あまり刺さらないケースが多いです。対話の意義は、「実は、メンバーからそこまで対話を求めてられていないかもしれない」といった前提も含めてマネジメントする側が理解し、その上で「問い」と「フィードバック」をすることが重要ではないかと思っています。
ぜひ、先ほどのお話も踏まえて、これまでのマネジメントの失敗例や失敗を踏まえて成長できたエピソードなど伺えればと思いますが、いかがでしょうか?
過去にファーストラインのマネジャーとしてメンバーの目標設定やキャリアデザインをおこなっていた際に、闇雲に「どうなりたいの?」という問いをしてしまっていたケースがありました。その人にとっては1つ1つ経験を積み上げていくことがキャリアとして有意義であるのに、一方的に上段からアプローチしようと思ってしまっていました。
キャリアに対するアプローチは人それぞれで、様々です。その人が今悩んでいることに寄り添ったり、もしくはより豊かに人生を送っていくサポートをしたりするために、どのような問いを投げかけてあげるべきか。これは山本さんがおっしゃっていた「問いのスキル」にも繋がってくる話です。
実際に、このような反省をしてきたからこそ、今は様々な角度からメンバーと向き合えてきているのではないかと思っています。リーダーもメンバーを選べませんが、メンバーもリーダーを選べません。なので、お互いがそこをどうすり合わせられるかが重要だと思います。
先ほど山本さんから「問い」と「フィードバック」のスキルが重要だという話がありました。具体的に「良い問い」と「悪い問い」はどうことなるのかお聞きしたいです。
「悪い問い」は、前提が自分の中で決まってしまっていることに対して、問いの形で聞いてしまうということです。
たとえば、失敗した部下に対して「なぜできなかったのか」と問うことがあげられます。部下はできなかったことに対して「修正したい」と思っているにもかかわらず、そこに対して否定的なニュアンスの問いを投げかけることは良くないと思います。
これらを「良い問い」にするためには、失敗したことを確認したうえで、これから改善するためにどうすべきかオープンクエスチョンで絞っていくことが大事です。
Q2. ミドルマネジメント層が部下育成で注意すべきポイント
大里さんがおっしゃってたように、メンバーのストーリーを一人一人理解していくことが非常に大切だと考えます。
チームボックスでリーダーの皆さんをトレーニングしながら感じることは、リーダーが部下のことを知らないケースが多いということです。
もちろん表面的なことは分かっていると思います。しかし、その人がどういう思いを持って、どういうストーリーを持って、これからどう生きていきたいのか、みたいなところまで話せない方が多いです。
まずは部下を深く知り、表に出ている面だけでなく根っこの部分を知ることは、部下育成で重要な部分だと思います。
今の話に続けてですが、逆に「部下から上司をどれだけ理解してもらえてるか」も大切です。
「どういう生き方したいのか」「何を成したいのか」「何のためにここにいるのか」といったことは、メンバーから聞くことはもちろん、同じぐらいの情報量で自分のことをメンバーに知ってもらわなければ、お互いの関係性は本質的に良くならないと思います。
また、ミドルマネジメント層は、事業方針や経営方針を自分の言葉で代弁することも大切です。マネジメントを行う上で、そこに迷い、不安、懸念があるとメンバーに伝わってしまうため、自分自身がミッションを正しく理解し話すことができているかが重要になると考えています。
もちろん、これをいきなり振られてできる人は限られていると思います。そういった意味では、僕自身も語れるようになるために、上司や役員に時間をいただいたりしていました。今では、配下のマネジメントと接するときにその壁打ち役になってあげるなど、ストーリーのずれを管理職同士で擦り合わせることもおこなっています。
様々な解釈・ストーリーで山の登り方があるので正解も間違いもないと思いますが、ミドルマネジメント横の繋がりも含めてデザインできるかは重要ですね。
Q3. なぜ心理的安全性の「ある組織」と「ない組織」に違いが生まれるのか
心理的安全性には様々な捉え方がありますが、私は組織としての目標・運営指針・約束事があっての心理的安全性だと解釈しているので、「仲良くなる」「心を開いて喋り合おう」というものは、心理的安全性ではないと思っています。
たとえば、全国制覇を目指すといった場合に、全国制覇するために、うちの組織ではこの三つのアクションを大事にしようと決めたとして、それらに対して感じた違和感などを言い合える事が、心理的安全性の本質だと思います。
そのため、組織の目標に沿った運営指針がしっかりあり、その上で話し合いをすることができる組織が「心理的安全性がある組織」なのかなと思っています。
チームボックスでもトレーニングの中でリーダーの皆さんに「心理的安全性を作っていきましょう」という話をしますが、その中で「こういうことをやると緩い組織になる」「自分が甘く見られるんじゃないか」という意見が上がることがあります。
もちろん甘くすれば舐められる流れはできると思いますが、大事なことは、そのようなアクションを取っている目的です。
「誰が、どんな発言をしても、称えられ、受け入れられる」という雰囲気を作ることができるかが重要だと思います。その雰囲気を作るのがリーダーであり、そのためにリーダー自身が失敗した時も話せるかどうかが大切だと思います。
「心理的安全性が全くなく本音を言い合わない」「何かアイディアを思いついても否定されると考えて話せない」という状態が蔓延しているチームにおいて、何から始めれば「心理的安全性のある組織」にアップデートできるのでしょうか。
リーダーが変わることです。このようなケースでは、リーダー自身がその雰囲気を作ることに加担しているケースががよく見られます。
「今までこうだったけど、目指したいのはここではない」「後悔してる、申し訳ないと思っている」など、自分の心情をさらけ出し、「本当はこういう組織を作っていきたいんだ」とメンバーに伝えていくこと。そして、リーダーが自分で言葉を変えていくことだと思います。
大里さんがおっしゃっていたように、まず自己開示していることを部下にわかってもらうことも大事なポイントになってくると思います。部下が本音をさらけ出してくれないという人がいますが、そのような人に限って、自分自身が本音で話せていないケースが多いです。
まずはリーダーが自己開示し部下と本音で話しあい、リーダー自身が変わっていくことが重要であるということですね。
大里さんもマネジャーとしていろんなチームをこれまでマネジメントされてきたかと思いますが、このチームはちょっと心理的安全性がなく、危機的な事態に直面したことってありますか。
メンバー1人1人が互いに尊重しあえない組織を引き継いだこともありました。
そのときに最初に行ったことは、様々な理由が絡み合ってこのような組織の状況が起きてしまったことを理解し、しっかりと吐き出す場を設けた上で、「この組織で何を大事にしていくのか」「僕にできる支援は何なのか」を丁寧に擦り合わせていきました。
具体的に、どのような形で場を設計されたんですか。
まずはメンバー全員と個別に話しました。全体の場でいきなり話すのではなく、僕自身が誰よりもメンバーの代弁者になり、一人ひとりを理解する点に注力しました。
リーダーは「この方向に行くと良くなる」という見通しを持ってないといけないと思います。それがなく議論や対話に入ると、結局収拾がつかなくなり崩壊していくと思います。
メンバー1人ひとりと対話し、その上で全体の場をどうデザインするかについて、ファシリテートする進め方でメンバーに吐き出させるような雰囲気を作りながら進めていきました。
4. 視聴者からの質問
Q1. 考えうる限りのアプローチをしても部下から期待した成果が上がってこない場合、ミッション変更や配置転換を考えた方が良いか。
最終的に、配置転換も手段としてあって良いと私は思いますが、そのアプローチの仕方を1人で考えてしまっているならば、どうしてもアプローチの数が限られていると思います。
自分以外の方から支援を受ける相談などもしてみた上で、アプローチ回数を増やしてみることは可能だと考えます。
また「期待した成果が上がってこない」という点については、はじめに「期待した成果を握れているか」が大事だと思います。
リーダーとメンバーの思い描く目標が異なっているケースは多いので、繰り返し目標を確認することも必要です。ただ単に目標を置くだけでなく、なぜその目標なのかという部分を普段から意識できているかは大事だと思います。
「メンバーと上司との期待値や温度感が同じかどうか」は、一つ確認ポイントであるかなと思っています。
上司は、自分が捉えていることを自分の言葉で伝えることが大事だと思っているので、危機的状況であれば、それがメンバーとすり合っていることが前提として必要です。
その上で「これができなかったらこうなるよ」という配置転換も含めた選択肢も、僕は事前に出した上で会話し、心を開くことが心理的安全性の本質だと思います。
そういう意味で、上司とメンバーがどういう認識の擦り合いでいるかは、1つポイントになるかなと思います。
Q2. 1on1を導入していますが、部下と深い対話ができていないと感じています。自己開示しやすい環境作りのために意識していることがあればお聞きしたいです。
物理的な環境の話をすると、たとえば「部下と話をするときに“どこ”で“どんな風に”話すか」という物理的な環境を含めた点も実は大事だったりします。いつものオンライン会議ツール、いつも使っている会議室等から少し離れて、変えてみるというのもhow toでいうと効果的だったりもします。
また、もう少しミクロな視点で見ると、たとえば座る位置を工夫してみるのも良いかもしれません。よく「真正面で対話していると圧を感じ易い」「どちらかというと自分の右にいる人と話しやすい」という話は聞きますね。
1on1は、対話と一緒でメンバーが求めていないこともあります。そのため、改めてメンバーが何を求めているか確認は必要です。
また、僕のキーワードは連続性だと思っています。
1on1は回数を重ねると、1on1の流れが分かってくるようになります。すると、何を聞かれるのか、何を話したいか自発的に考えるようになってきます。
そのため、僕の1on1は事前に目的や内容を伝えるようにしていて、連続的に一緒に向き合う、伴走するかみたいな所は重要になります。
大里さんの1on1では決まった流れがあるというお話ですが、どんな流れで1on1をされていますか。
基本的に業務は業務の中で解決していけば良いと思っているので、普段の生き方からアプローチしています。
具体的には、目標として定めたことについて「こういう目標を立てたけどどうか」「目標を進めるにあたっての悩みはあるか」「もっとチャレンジしたいことはあるか」などを毎週30分かけてすり合わせています。
1on1の終わり方に「どんなチャレンジをして、どんかワクワクすることをやってみる1週間にするか」の目標設定をして終わるので、この問いを1on1の最初を始めるような形をとっています。
1週間を面白く過ごせた方がメンバーも僕自身も楽しいので、何かワクワクすることを決めながら、実務的なこともアドバイスもする。そして翌週また一緒に確認してすり合わせるという流れです。