【介護業界×健康経営】先進的認知症ケアを展開する「100BLG株式会社」の取り組みとは|MEDI-TRAIN伊藤 |HR NOTE

【介護業界×健康経営】先進的認知症ケアを展開する「100BLG株式会社」の取り組みとは|MEDI-TRAIN伊藤 |HR NOTE

【介護業界×健康経営】先進的認知症ケアを展開する「100BLG株式会社」の取り組みとは|MEDI-TRAIN伊藤

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※本記事は、株式会社MEDI-TRAINの伊藤彰浩さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

株式会社MEDI-TRAIN(メディトレイン)の伊藤彰浩(いとうあきひろ)です。

株式会社MEDI-TRAINは、各種リハビリやプロフェッショナル向けのトレーニングの提供とともに、企業の「健康経営」におけるサポートを行っております。

近年、働き方改革や新型コロナウイルスの流行で、健康に対する社会の捉え方も大きく変わりつつある中、企業ではどのような「健康経営」がなされているのでしょうか?

この記事では、認知症の方を中心としたデイサービスを運営する「100BLG株式会社」の代表・前田隆行氏をお招きし、介護業界における健康経営の取り組みとメリットについて話し合ったセミナーのレポートをお届けします。

登壇者紹介

伊藤彰浩|株式会社MEDI-TRAIN代表取締役

理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、健康経営エキスパートアドバイザー。子どもからアスリートまで幅広い世代のリハビリテーションをはじめ、女性のダイエット指導や産前産後のコンディショニングサポートを提供。現在は首都圏にて企業の健康経営サポートを中心に、五輪強化指定選手のトレーニング指導、トレーナーや医療従事者などの専門職向けセミナーの講師としても活躍。企業の健康経営サポートとしては、ウォーキングや腰痛予防体操の運動アドバイス、食事アドバイスなど幅広い領域から、実践しやすい取り組みを提案している。
URL:https://medi-train.co.jp/

前田隆行|100BLG株式会社 代表取締役

大学卒業後、ソーシャルワーカーとして勤務した病院で身体拘束を目の当たりにし、介護や看護のあり方に疑問を持つように。その後、転職したデイサービスで利用者から「働きたい」という声を聞き、2012年、民家を改修しデイサービス「BLG」をスタート。認知症をはじめとしたさまざまな疾患、障害のある方の「もう一度社会とつながりたい」という希望に応えるため、外部企業などと連携しながら運営。その活動が仲間を刺激し、「認知症カフェ」は東京都町田市内のスターバックスコーヒー14箇所内で展開したり、町田市内の竹林再生プロジェクトなどにも波紋が広がっている。
URL:https://100blg.org/

1. ケアする人のケアは、誰がする?

前田さんが率いる100BLGとのお付き合いは、理学療法士としてデイサービス利用者のリハビリテーションを担当したことからはじまりました。

利用者の皆さんの健康はもちろんですが、介護に関わる職員の健康についても気になりましたね。

実は、「健康経営」について意識したのは、伊藤さんからの投げかけがあってからなんです。

残念ながら介護業界では、まだ浸透していない取り組みだと思います。利用者のケアをすることには自信があっても、自身のケアまで意識ができていないというのが現実ですね。

介護事業はそもそも過酷ですし、さらに慢性的な人材不足でもあるので、職員にかかる身体的・精神的負担は大きい。まさに、「ケアする人のケア」が大切なはずなんです。

2. ケアをする人を支える「健康経営」。取り入れるメリットとは?

介護業界はもちろん、医療業界全般を見回しても「健康経営」は未だ行き渡っていない印象です。

介護や医療のサービスの担い手は「人」ですから、携わる人のケアは最も重要なはず。しかし、現実はサービスの担い手であるスタッフの健康については振り返ることができないままに日々の仕事に忙殺されてしまう。

健全な企業運営を考えても、スタッフの健康について真っ先に考えていくべきだと思うんです。

おっしゃる通りで、人が人を助けるという尊い仕事だからこそ、健康経営というスタンスが業界に必要だと思います。

介護事業社で健康経営を導入するメリットを以下にまとめました。

メリット1/健康に働き続けることができる

当然ですが、健康経営を取り入れれば、職員が元気になっていきます。また職場の雰囲気が良くなることも多いですね。スタッフの心身の不調が減っていきますから、職員の笑顔も増えるはずです。

経営のトップは、元気な職員はずっと健康であると根拠なく信じてしまう傾向があります。しかし、誰もがずっと健康である保証などありません

介護現場の職員に聞くと、体調不良は我慢するといった意見が多いのも事実。だからこそ、仕事に支障が出る前にはじめるセルフケアが大切です。

その日のうちに疲れをケアするということを組織全体で行うことで、従業員が健康でいきいきと働き続けられる環境を築くことができます。

メリット2/コミュニケーションの活性化を通じて、組織力が高まる

職員同士で何かに取り組むと、自然に会話が生まれていきます。

社内レクリエーション、ワークショップなどはお互いを隔てる壁を崩し、距離を近づけ、円滑なコミュニケーションを促進させます。

仕事面のみのつきあいだと、会話は業務の範囲にしかおよびませんが、レクリエーションの場をつくることで会話がひろがり、普段は見られない職員の側面を見つけることができるはずです。

メリット3/ケアの質が高まり、利用者満足度もアップする

組織の中でも健康的な取り組みができたとすれば、職員だけでなく施設の利用者にとっても良い影響があります。

そもそも職員が元気ならば、ケアの質も比例しますし、質が高まれば、施設の稼働率も上がり会社の業績も上がっていく。そういった良い循環は、離職率を低下させるだけでなく、熱意のあるスタッフが集まる土壌にもつながっていきます。

社外にも良い評判が広がり、さらに良い循環が生まれていきます。

3. 具体的な取り組みは?「健康相談」と「腰痛対策ワークショップ」

そもそも、健康経営に取り組まれたきっかけは?

実は、最近まで健康経営という言葉すら知らなかったんです。伊藤さんから、企業の健康経営のサポートをしていると聞いて、興味を持ちました。

経営者としては、職員の満足度を上げていくことも考えなければなりません。しかし、健康経営を取り入れれば、満足度は間違いなく上がっていきます。伊藤さんの話を聞いて、「ためして損はなし!」と思いましたね。

特に介護業界の場合は、自分の身体をつかって誰かの身体を支えるというシーンが多いですよね。そういった意味でも、肉体的な健康面の管理は絶対に大切ですし、ただでさえ大変な仕事ですからメンタル面のケアも重要だと思います。

お恥ずかしい話、職員はしんどい業務でもある程度こなすのが当たり前といった考えも自分の中にありました。しかしそれと同じ度合いで、職員1人1人に幸せになってもらいたいという想いもあり、揺れていたんです。

伊藤さんのお話を聞きながら、われわれ100BLGは単なる介護施設ではなく、利用者の「もう一度社会とつながりたい」を叶える場であるという理念も思い出しました。

利用者の希望を叶えるためには、一般的な認知症ケアの範囲を超えた視点が必要です。ケアする側の精神的な充実がないと、良いアイデアも生まれませんから。

前田さんから会社の現状や、職員の皆さんの様子を聞き、さっそく100BLGのための健康経営プランを作成しました。具体的には、健康経営のはじめの一歩として、2つの提案をしました。

1つ目は、職員の健康相談。個々の健康上の悩みをお聞きし、生活習慣やセルフケアのアドバイスを行いました。

2つ目は、職員を集めたワークショップ。健康相談で腱鞘炎や腰痛の悩みが多く聞かれたので、腰痛の原因やセルフチェック、セルフケアの方法を皆で学びました。

そのほかには、呼吸による自律神経の整え方などのレクチャーも行いましたね。

4. 職員同士がつながっていく!健康経営で変わったこと

伊藤さんの指導を受けるようになってから、職員の様子は格段に変わりましたね。「健やかに仕事をするためには、自身のセルフケアが大事だとわかった」という意見や、「自身の健康問題は、サービスの質に関わる」など、新たな気づきを得た意見も多かったです。

また、「さまざまな事業所で仕事をしたが、セルフケアを提案されたのははじめて」という意見もありました。介護業界で健康経営というキーワードがまだ浸透していないことを痛感しましたね。 そのほかには、職員同士の何気ない会話が増えました

皆さんの健康上の悩みに具体策を提示することで、1人1人のヘルスケアリテラシーが上がっていくことが期待できます。

リテラシーが上がれば、対策だけでなく予防にも意識がいくようになるはず。心身の健康に自信が生まれると、余裕が生まれて仕事の日常にも変化があるとよく聞きますね。

まさにその通りで、健康経営には単なるセルフケアという範疇を超えた効果があると気づきました。

わが社の一番の変化は、職員同士の意見交換が促進されたことでしょうか。かつては業務以外の会話が無いような場合もありましたが、今は職員同士で能動的に話し合うシーンが多く見られます。

先日は、職員から社員旅行の提案が上がりましたよ。仕事全体を通して、皆で何かをしよう、楽しもうという考えに変化しつつあるのを感じます。

どのような仕事も共通して「自分が楽しめないと、相手も楽しめない」と思いますが、特に私たち100BLGは、メンバーの想いの実現を担う組織です。単なる認知症ケアだけではなく、場合によっては施設の外にメンバーの活躍の場を見出していく仕事でもあるので、職員には発展的な意識を持つことが求められます。

だからこそ、職員それぞれがまず楽しめるということが大切。健康経営を取り入れることで、その楽しみの基盤を職員が見つけだすことができると感じています。

5. まとめ

健康経営は、従業員はもちろん、企業にとっても良いサイクルを生み出すための原動力になります。

しかし、1〜2年と多少の時間をかけて効果を見ていく必要があるのも事実です。セルフケアは時間をかけることで効果を発していきますから。

そのためには100BLG社のように、経営者が健康経営の必要性を実感することが大切です。また、職員の活力のある毎日を創造するという“働き手が享受できるメリット”を、説明していくことも重要でしょう。

健康経営は、人がサービスの担い手となる介護や医療業界には特に大事な視点だと思います。“健康経営”という字の印象は固いですが、取り組むことで必ず成果を感じられるはずです。

また、結果が出るまでに幾分時間がかかったとしても、取り組み自体はすぐに着手可能です。そしてお金をかけなくてもできるというのも大きなメリットではないでしょうか。

健康経営を通して企業で働く皆さんが、自身を大切にする。そんな側面も経営者として期待しています!

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