同一労働同一賃金における賞与の扱いは?賞与支給条件を解説 |HR NOTE

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同一労働同一賃金における賞与の扱いは?賞与支給条件を解説

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賞与と従業員が乗った秤

同一労働同一賃金とは、雇用形態にかかわらず同じ仕事をしている労働者に対しては同じ賃金を支給することを定めた制度です。「賃金」には基本給だけでなく、手当や賞与も含まれます。

この記事では、同一労働同一賃金における賞与の扱いや、実際の事例をもとにみる賞与支給の条件、違反した際のリスクについて解説します。

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同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。

同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?

本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。

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1. 同一労働同一賃金における賞与の扱い

砂時計とお金

同一労働同一賃金の原則となる考え方を具体例とともに示した「同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省)」において、労働者の貢献に応じて支給される賞与については、雇用形態を問わず、同一の職務内容や貢献度に対しては同額を支給しなければならないと記載されています。また、職務内容や貢献度に違いがある場合は、その違いに応じて適切な賞与の支給をおこなうことが求められます。

労働者の公平性や平等性を守るために、同ガイドラインでは均等待遇と均衡待遇という二つの考え方を示しています。均等待遇と均衡待遇は、労働法や雇用関係における待遇の原則を指す概念のことです。

1-1. 均等待遇

均等待遇は、同じ労働条件や労働環境にある労働者に対しては、同じ待遇が提供されるべきという原則です。性別、人種、国籍、宗教などの個人の属性に基づく不合理な差別や賃金格差を防ぎ、公平性と平等性を確保することを目的としています。同じ職務内容やスキルを持つ労働者には、雇用形態にかかわらず同じ賞与、福利厚生、昇進の機会が与えられます。

1-2. 均衡待遇

均衡待遇は、異なる労働条件や労働環境にある労働者に対して、公平で適正な待遇が提供されるべきという原則です。労働者個人の能力、貢献度、勤務成果などを考慮して、適切な報酬や待遇の支給を目指します。均衡待遇の原則は、能力や成果に基づく差別を正当化する場合に適用されます。例えば、業績によって変動するボーナスやインセンティブ制度が導入される場合、労働者の個別の貢献度や成果に応じて報酬が与えられることがあります。

均等待遇と均衡待遇は、待遇の公正さと平等性を追求するための原則ですが、その適用は条件や環境によって異なります。労働法や雇用契約において、均等待遇と均衡待遇のバランスを取りながら、公正かつ適正な待遇の実現を図ることが求められています。

2. 賞与を支給しなくても問題がないケース

問題が無いか確認する人

同一労働同一賃金の原則において、賞与を支給しなくても問題がないパターンはいくつか存在します。実際の判例をもとに、違法ではないと判断されたポイントをみていきます。

2-1. 大阪医科薬科大学事件(2020年10月13日)

この事件は、フルタイムのアルバイトとして働いていた大学職員が、同じ職務についていた正社員との間に、賞与(および私傷病中)の賃金格差があったとして、退職後に差額に相当する損害賠償の支払いを求めて争われた事件です。正社員には基本給の4.6カ月分の賞与が支給されていたのに対し、契約社員には賞与が支給されていませんでした。

一審(大阪地裁)では原告の請求は棄却、二審において支給しないことが不合理であると判断されるも、最高裁では契約社員に賞与を支給しなかったことは違法ではないと判決がくだされました。

2-2. 違法ではないと判断されたポイント

最高裁が「賞与の非支給が違法ではない」と判断したポイントは大きくわけて以下の3つです。

2-2-1. 職務内容の違い

契約社員は基本的に補佐業務に携わっており、正社員は学内の編集事務、病理解剖に関する遺族への対応、試薬の管理業務を主に行っていました。両社に共通する業務はあるものの、一定の相違があったことは否定できないと指摘されました。

2-2-2. 人事異動の有無

正社員は規則上他部署への人事異動があったのに対し、契約社員は人事異動がありませんでした。人事異動は本人の希望にかかわらず例外的かつ個別的な事情でおこなわれていたものであったため、両者の労働条件に相違があったとされます。

2-2-3. 賞与支給の目的

賞与を支給する目的も判断する上で大切なポイントです。この事例では大学側が賞与を支給する目的として、業績に連動されるものではなく将来の労働意欲の向上や功労報賞、正社員の確保と定着のためにおこなわれたものであるとされました。そのため、契約社員は支給する対象から外れてしまったともいえます。

このように、同一労働同一賃金の原則のもとであっても、正社員と非正規雇用労働者の職務内容や配置の変更の範囲などに違いがあれば、賞与の不支給は問題とされません。ただし、賞与が不支給である場合でも、他の報酬要素や福利厚生などが適切に提供され、労働者間で不合理な格差がないことが重要です。

3. 格差問題を防ぐための対策方法

問題を防ぐ対策

アルバイトやパートなどの非正規雇用労働者と正社員の間で賞与の支給・不支給をめぐる格差問題を起こさないために、以下のような対策を検討しましょう。

3-1. 賞与支給のルールを明確にし、周知する

先ほどの事例のように、賞与の支給が業績に応じておこなわれるものではなく、正社員の確保と定着のためにおこなわれているケースもあります。このような賞与支給のルールは就業規則や社内規定にしっかりと明記し、社内で周知を徹底させる必要があります。

3-2. 職務内容以外の労働条件にも気を付ける

業務内容が同じであるのに賃金格差があることは、非正規雇用労働者にとって格差問題を意識するきっかけになります。実際には、人事異動の有無なども賞与支給の条件ともなりうるので、職務内容以外に労働条件で正社員との違いを明確にしておくことも大切です。

3-3. 正社員登用制度を設ける

正社員になるチャンスを設けることで、格差が固定的になりません。正社員登用の条件を明確にし、スキルや能力の向上に応じて報酬の向上や昇進の機会を与えることで、正社員との格差を縮小できます。

3-4. 話し合いを定期的におこなう

定期的なフィードバックやコミュニケーションを通じて、報酬体系や評価基準の透明性を高めます。従業員が自身の評価や報酬についての疑問や不満を直接聞き、適切な説明や調整を行うことで、公平性と信頼性を確保します。

4. 違反した場合の罰則やリスクは?

リスクヘッジ

同一労働同一賃金のルールを記した「同一労働同一賃金ガイドライン」には法的な拘束力がなく、違反した際の罰金や科料は定められていません。ただし、従業員とのトラブルに発展して以下のようなリスクに繋がるおそれがあるため気を付けましょう。

4-1. 訴訟に発展する

罰則や科料はありませんが、従業員側から訴えられた場合は損害賠償を支払わなければなりません。先ほどの事例は違法であると認められませんでしたが、実際に退職金の不払いで訴訟が起き、最高裁が企業へ賠償を命じたケースがあります。

4-2. 評判と信用を失う

違反が公になった企業や訴訟を起こされた企業は、社会的な評判と信用を失う恐れがあります。労働者や一般の人々からの批判や非難を浴び、企業イメージやブランド価値に悪影響を及ぼすでしょう。これにより顧客や投資家からも信用を失い、ビジネスへの影響が生じる可能性があります。

4-3. 労働監督機関からの制裁

労働監督機関とは、労働法や労働基準に違反する企業を監督し、違反行為に対して制裁を科す行政機関のことです。同一労働同一賃金の原則に違反した企業は、労働条件の是正、公表の命令などの制裁を受ける可能性があります。

4-4. モチベーションの低下

賃金や待遇に格差がある場合、従業員は会社に対して不満や不信感を抱きます。公平な待遇が期待できなくなると、業務に対してのモチベーション低下を引き起こすだけでなく、組織全体の生産性や競争力の低下にもつながります。

4-5. 優秀な人材の流出

優秀な人材が、公平な待遇と自分のスキルに見合った報酬を提供してくれる企業に流れていってしまいます。優秀な人材は引く手あまたのため、待遇や賃金格差を是正できないうちはそのような人材を引き留めることが難しく、結果的に周囲の人材に業務のしわ寄せがきます。

法的な効力はないとは言え、従業員とのトラブルなどリスクは避けたいものです。同一労働同一賃金は賞与だけでなく、福利厚生などすべての待遇が確認対象となります。気づかないうちに実は対策が不十分だったなんてこともあるかもしれません。

本サイトでは、同一労働同一賃金の対象者の条件や確認方法、待遇が不合理ではないことを説明する観点をまとめた資料を無料で配布しています。対策に抜け漏れがないか?自身の理解が正しいのか?など同一労働同一賃金に関する情報を網羅的に確認したい方は、ぜひこちらからダウンロードしてご活用ください。

5. 待遇差のない適切な賞与支給のために準備を整えよう

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賞与の支給を雇用形態によって区別することに、罰金や科料はありません。しかし、その区別に合理的な理由がない場合や、納得感のある説明がなされていない場合には、訴訟や人材流出のリスクになることも考えられます。賞与支給の条件などをあらためて明確にし、就業規則や社内規定に明記するだけでなく、社内全体への周知を心がけましょう。

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