タイ日系企業550社に聞く「新型コロナウイルスへの対応」実態調査|業績への影響とリモートワークについて

2020年3月の3週目あたりから、タイ国内の状況が大きく変わってきていると思います。具体的には、学校閉鎖、商業・娯楽施設の閉鎖、外国人の入国制限など。そして、3月26日には、非常事態宣言が発令されました。

これらにより、タイ国内が完全に自粛モードとなっており、経済にも甚大な影響を与えているものかと思われます。そして、タイ政府が企業に在宅勤務(リモートワーク)を要請していることから、多くの企業が在宅勤務の導入を進めていると思われます。

そんな中、Reeracone Thailandが、タイ国内日系企業550社より、以下についてのアンケート取っており、それについてまとめておりますので、参考にしていただければと思います。

タイにおける新型コロナウィルスによる業績への影響

Q.タイでも新型コロナウィルスが猛威を振るっておりますが、日系企業への業績への影響はいかがでしょうか。

A.業績については、製造業・非製造業とともに非常に苦しい状況です。

具体的には、3月時点の新型コロナウィルスによるタイ国内の売上への影響は、下記となっております(前年同月比)。

 

3月におけるタイ国内のビジネスへの影響(前年同月比) 製造業 非製造業
プラスに影響 4% 3%
どちらでもない 27% 22%
どちらかというとマイナスに影響(3月の売上が前年比5%~15%程の減少) 28% 28%
マイナスに影響(3月の売上が前年比15%~30%程の減少) 25% 23%
大きくマイナスに影響(3月の売上が前年比30%~50%程の減少) 4% 7%
極めて大きくマイナスに影響(3月の売上が前年比50%以上減少) 2% 4%
まだ分からない 10% 13%

 

第2四半期(20年4-6月)の新型コロナウィルスによるタイ国内の売上への影響見込みについては、下記となっております(前年比)。

 

第2四半期(20年4月~6月)におけるタイ国内のビジネスへの影響見込み(前年比) 製造業 非製造業
プラスに影響 3% 1%
どちらでもない 8% 8%
どちらかというとマイナスに影響(第2四半期の売上が前年比5%~15%程減少見込み) 24% 26%
マイナスに影響(第2四半期の売上が前年比15%~30%程減少見込み) 27% 27%
大きくマイナスに影響(第2四半期の売上が前年比30%~50%程減少見込み) 16% 16%
極めて大きくマイナスに影響(第2四半期の売上が前年比50以上減少見込み) 6% 6%
まだ分からない 17% 16%

このように製造業・非製造業とともに業績の影響を大きく受けております(対前年比)。マイナスと回答している企業の割合が3月(61%)より、第2四半期(74%)のほうが大きくなっております。特に第2四半期では、全体の22%の企業が前年比で、売上が30%以上のマイナスになると回答しており、第2四半期は、3月よりさらに苦しい見通しになっております。

私は、タイ現地で人材紹介業を営んでいるのですが、3月24日に3月26日から非常事態宣言を発令させたことをきっかけに企業の採用が一気にストップしました。弊社の業界は、通常、3月が繁忙期になるのですが、3月の4週目以降、現在(4月1週目)に至るまで、企業から頂ける求人案件数が前年比7割減となっております。このように企業が採用を止めてしまい、今タイ国内は、経済が極めて厳しい状況になっております。

タイにおける在宅勤務の導入状況

Q.非常事態宣言をきっかけにタイ政府は一般企業に在宅勤務(リモートワーク)を要請しておりますが、実際はどれぐらい在宅勤務は進んでいますでしょうか。また、タイのおいて、在宅勤務はスムーズに導入できるのでしょうか。

A.製造業は職種的に在宅勤務の導入が難しいですが、一方、非製造業では、半分以上の企業が在宅勤務を大半・部分的に導入しております。

製造業では、職種上、在宅勤務の導入は難しいですが、15%の企業が事務職を中心に一部の在宅勤務を導入しております。

非製造業においては、54%の企業で在宅勤務の導入を大半または一部で導入しており、さらに21%は、今後、予定・検討をしています。

職種別で在宅勤務の導入数を見ていくと以下の通り、製造業では、数は少ないですが、営業事務や経理・総務など事務部門を中心に在宅勤務を導入しております。非製造業では、営業・経理・営業事務・総務・人事など多くの職種で在宅勤務を導入しております。

Q.在宅勤務となるとマネジメントも大変だと思うのですが、企業はどのように在宅勤務を実施しているのでしょうか。

A.一部のIT企業を除いては、多くの企業が在宅勤務の導入が初めての試みになっており、試行錯誤しながら導入している印象です。

製造業・非製造業とともに多くの企業が、「ビデオ会議の実施」、「実績の報告」、「日報の提出」などと回答しており、在宅勤務の導入に合わせて、何かしら工夫している印象です。中には一部、ビデオ会議を繋ぎっぱなしで在宅勤務をさせているという回答もありました。一方、「特に何もしていない」という回答も目立ち、各企業、在宅勤務導入に試行錯誤している模様です。

また、我々のアンケート回答によると、以下のようなITツールを在宅勤務の導入に合わせて使用している模様です。

タイはご存知の通り、LINEがかなり浸透しているので、LINEという回答は、ごく自然ではありますが、他には、ZOOM(製造業・非製造業計50社)、マイクロチームス(41社)などの回答が目立ちました。実際に弊社でも、毎日の朝礼・終礼、定例MTGを最大90名ほどつないで、ビデオ会議をしております。最初は慣れない感じもしましたが、今はスムーズにオンラインでのビデオ会議ができております。

新型コロナウィルスをきっかけに在宅勤務を導入した企業も多いので、これから在宅勤務のITツールの導入がより進んでいくものと思われます。

Q.多くのタイの日系企業が初めて在宅勤務を導入されたとのことですが、在宅勤務に不便はないんでしょうか。

A.やはり、在宅勤務といっても、オンラインで対応できることには限界があります。以下のようなことに苦労されているとアンケートでは回答がありました。

  • 銀行や小切手のサイン業務が困難(12社)
  • 原本が必要な印刷が困難(10社)
  • 直接のコミュニケーションができないため、意思疎通が困難(10社)
  • 機密書類の持ち出しが困難(9社)
  • 新人のトレーニングが困難(7社)
  • 社員の業務管理が難しい(7社)
  • 経理業務は一部在宅勤務が困難(5社)
  • 一部事務作業が困難(4社)
  • 会社のPCがデスクトップなので、持ち出しが困難(3社)
  • 細やかな指示が出せない(3社)
  • その他回答(44社)

やはり、書類系(サインや機密書類の管理)やコミュニケーションが取りにくいという回答が多かったです。私も日々サインすることが多いですが、一部はオンラインでのサインが可能ですが、どうしても、銀行系の書類(小切手と振り込み依頼書)とビザ・ワークパミットは、実際のサインが必要なため、在宅勤務では対応不可となります。

また、オンラインだけでは、完結が難しく、直接のコミュニケーションをとらないとうまく行かない業務もいくつか残るのも現状です。具体的には、微妙なニュアンスを伝えたり、新人のトレーニング、細かな指示出しが難しいです。

タイにおける採用状況

Q.先程、企業の採用が止まっているとお伺いしましたが、すべての職種・業界が採用を控えているのでしょうか。

A.企業の採用活動の状況としては、引き続き採用活動をしている企業が製造業で、29%、非製造業で、20%となっており、通常の半分まで下がっております。

通常ですと、我々の保有顧客のうち、製造業では、60%前後、非製造業では、40%前後が常時採用活動をしているのですが、現在は半分まで下がっております。その背景として、通常は、全求人数のうち、40-50%が事業拡大に基づく増員案件となり、残りの50-60%が退職による欠員補充案件なんですが、増員案件の採用が軒並みストップしております。欠員補充案件についても、最低限の欠員しか採用をしていない印象です。職種別で見ていくと、欠員が出ると事業が止まってしまう経理や人事などは比較的求人として残っています。一方、同じ欠員でも営業の場合は、補充しないことが多くなっております。

また、業界で見ていくと、IT業界は相対的には、採用をしていますが、数としてはそこまで多くないです。

また、以下のグラフは、タイの大手求人広告サイトのバンコクとチョンブリの求人掲載数を週次で定点観測しているものですが、3月の3週目から大きく落ち込んでいるのが見て伺えます。

以下のグラフもタイの大手求人広告サイトの、直近1週間で動いている求職者数をバンコク・チョンブリで定点観測しているものとなります。こちらについても求人の動きに応じて、大きく落ち込んでいます。もともと、タイは、失業率が1%であり、売り手市場でしたが、さすがにこの市況感において、普段は活発なタイの求職者も転職活動が止まっているようです。

最後に

欧米諸国と比べると比較的、新型コロナウィルスの影響をあまり受けていなかったタイでしたが、3月3週目以降、学校閉鎖、商業施設閉鎖、日本人の入国制限、そして、非常事態宣言の発令と、日々目まぐるしく状況が変わっております。

不確実なことが多く、今後の見通しが非常に立てづらい状況ではありますが、本インタビューがタイで頑張る企業様にとって、少しでもお役に立てますと幸いです。

我々日系企業にとって、非常に苦しい局面ではありますが、ともにこの苦境を乗り越えていければと思います。

引き続き何卒どうぞよろしくお願いします。

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