
近年、新卒採用において「親が反対している」という理由で、学生が内定を辞退するケースが増えているため、『オヤカク(親確)対策』に力を入れている企業が多くなっています。『オヤカク(親確)』とは、学生に「親御さんは内定を承諾することに賛成してくれていますか」と確認したり、時には企業側が親御さんに直接、内定承諾の確認を行ったりすることです。
学生本人が入社を希望していても、親が内定先企業に何かしらの不満を持っていると様々なトラブルが起こることがあります。今回はそのオヤカクで実際に起こるトラブルとその対策法をご紹介します。
なぜ『オヤカク』が必要になってきたのか?
実際にあったトラブルの例
- 入社後に親が「こんな遅くまで働かせるのはおかしい」とクレームをつけてきた。
- 内定を出した後に一人暮らしを親に認めてもらえない学生が出た。
- 内定後親から「倒産の心配はないか」という問い合わせの電話があった。
- 親が自社製品を嫌っているので内定を辞退した学生がいた。
- 本来郵送で返送されるはずの内定承諾書を親が成績証明書と一緒に持って来社してきたために応対をすることになった。
- 親から「就職人気企業ランキングに入っていない企業は認められない」と言われている学生がいた。
- 入社から3カ月後に配属先の上司に相談もなく、社長室宛に退職届を郵送されてきたため確認の電話を入れると親が対応し、そのまま退職の手続きはすべて親が行った。
このように子供の就職にまで親が出て来る背景として考えられるのは、現在は少子化で1人っ子も多いため、子供の教育や将来に関心の高い親が多くなったり、学生の母親が現役で働いている、もしくは以前にバリバリ働いていた経験を持つ人もいたりするため、企業や業界・職種に詳しいことも関係しているのではないでしょうか。
『オヤカク』に対する現状
教育熱心な親御さんほど子供の就職活動に熱が入るようになり、学校選びと同じ感覚で合同企業説明会に参加をする親御さんもいるため、親御さん向けのスペースを作って対応する企業も出てくるようになりました。また、就職説明会に参加しなくてもインターネットで子供が受験している企業を調べたり、職場で受験企業の悪い噂を聞くと子供が内定をもらっても反対をしたりするケースもあります。この状況を受けて60%の大学で親向けのキャリアセミナーを開催しています。
一方で、学生もまた親の意見を尊重している面があるのではないかと思います。
2015年卒業マイナビ学生モニターの調査でも、企業の選択や職種の選択に親の意見を参考にする割合は「参考にする」と「少し参考にする」を合わせた合計数が、女子学生では49.2%、男子学生でも40.0%ありました。また、就職活動中の相談相手についても、最も多いのが母親で73.9%次いで父親21.3%と両親に相談するケースが多いことがわかります。

学生の心情としては、親御さんが1番自分を理解してくれている存在であり、社会人の先輩としての意見を聞きたいという想いがあると考えられますが、親と子で就職先に対する思いの相違を表すデータもあります。
同じくマイナビのアンケートで両親の企業選択基準は「本人の能力・専門性を活かせる会社」が45.2%でトップ、次いで「経営が安定した会社」44.9%であり、公務員や有名企業であれば60%以上が賛成するが、設立間もないベンチャー企業に賛成する親は11.0%で大手安定型を望む傾向が高いことがわかります。
一方で学生は「社風や雰囲気の良い会社」がトップで、社風や人間関係を重視していることがわかります。パワハラやオワハラ、ブラック企業問題や過労死(自殺)問題があるため、少しでもそのような心配のない企業に就職して欲しいという親心もわかりますが、親が20歳以上の子供に代わって内定辞退を申し出ても法的拘束力はありません(20歳未満は親の承諾が必要です)。
学生本人の意志が優先されるため、最終的に企業は学生に入社の意思を確認しますが、企業としては親御さんにも納得したうえで入社をしてほしいため、対策を講じることになります。
親御さんを安心させるには|オヤカクのために必要なこと
親を説得するには、自社がどのような会社なのかをきちんと理解してもらうことが1番です。各企業では下記のような対策を行っています。
オヤカク対策の例
- 会社案内(パンフレット・DVD)とIR情報の送付
- 採用ページに「親向け」ページを開設
- 内々定受諾後に親向けに当社製品と手書きの手紙を送付
- 内定式の写真を親向けに送付
- 父兄の同意書をとる
- ご挨拶の電話をかける
- 親向けの企業訪問会実施
- 内定者懇親会に親にも出席してもらう
親御さんは安定と安心を企業に求めています。中小企業やベンチャー企業であれば時には財務諸表を公開することも検討する必要があるかもしれません。また、企業のトップ自らが「大事なお子さんを私たちに任せてください。必ず1人前の社会人に育てます」という決意を見せることも大切です。
オヤカク対策は、内定辞退を防止したり、入社後のトラブルを回避したりするだけでなく離職率を下げることにもつながります。大学卒業から3年後の離職率が30%前後であることを考えると、親に良い会社であることを理解してもらうことで企業側の味方になってもらい、学生が転職を考え始めた時に引き留めてもらう効果が期待できます。
まとめ

ここまで、企業のオヤカク対策について述べましたが、時には学生自身に親御さんを説得してもらうことも必要です。内定を出した後、学生が「親が反対している」と悩んでいるのであれば学生に「自分の意思はどうなのか」「入社後に何がしたいのか」問いかけてください。そのうえで「厳しい就職試験を突破してきたのだから、親御さんに面接の時のようにしっかりと自分の気持ちをぶつけてみたらいい」「自分の親を説得できないのにお客様や取引先に当社の製品を購入してもらったり、社内で自分の意見を通したりすることはできない」と諭すことで、学生に『オヤカク(親を改革)』を促すことも時には必要ではないでしょうか。
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