プログラマーの残業代事情|残業代の未払いが違法な理由と請求手順

※本記事は株式会社アシロの「労働問題弁護士ナビ」より転載しております。
  • 「朝から終電近くまで働いても残業代が一切支払われない」
  • 「みなし残業時間以上働いていても支払われる残業代は一緒」

近年、企業の需要が高いプログラマーやエンジニアですが、残業代が支払われないような劣悪な環境で働いている方は少なくありません。

ただでさえ手取りが少ないのに、残業代が支払われないとあっては、「生活もままならない」と悩まされるのも当然のことです。

もし今の職場を退職しようと考えている方は、これまで未払いであった残業代を合わせて請求してみてはいかがでしょうか。

残業をしたのであれば、残業代を請求するのは当然の権利です。

本記事では、プログラマーの残業の多い理由と残業が少ない企業の見つけ方、未払い残業代を取り戻す手順などについてご紹介します。

 【1】プログラマーの残業時間・残業代の実態

プログラマーの労働環境は過酷なイメージがありますが、「定時で上がれる」という声も聞きます。

本章では、プログラマーの残業における実態をご紹介します。

1-1 プログラマーの平均残業時間

『パーソル総合研究所』が公表した会社員の残業実態調査の資料によれば、残業が多いとされる業界は以下の通りです。

残業が多い業界

業界 30時間以上の
残業割合
月平均残業時間 繁忙期平均残業時間
1位
運輸業・郵便業
37.7% 29.26時間 39.33時間
2位
情報通信業
32.1% 24.81時間 41.50時間
3位
電気・ガス・
熱供給・水道業
32.1% 24.98時間 37.78時間

参考:パーソル研究所×東京大学 中原淳准教授「希望残業学プロジェクト」会社員6,000人を対象とした残業実態調査の結果を発表

プログラマーは業界の垣根を超え、さまざまな場所に活躍の場がありますが、多くの方は情報通信業で働いていることでしょう。

情報通信業は30時間以上の残業割合が全体の2番目で、繁忙期の残業時間平均はもっとも長くなっています。

また、同資料では職種別の情報もまとめられており、プログラマーを含む「IT技術・クリエイティブ職」は、3番目に残業が多いことがわかります。

残業が多い職種

職種 30時間以上の
残業割合
月平均残業
時間
繁忙期平均
残業時間
1位
配送・物流
46.8% 35.39時間 46.07時間
2位
商品開発・研究
41.5% 26.62時間 38.97時間
3位
IT技術・クリエイティブ職
39.0% 25.68時間 46.44時間

参考:パーソル研究所×東京大学 中原淳准教授「希望残業学プロジェクト」会社員6,000人を対象とした残業実態調査の結果を発表

そして、繁忙期の残業時間平均は、各業界を抑えてもっとも高い数値となっています。

このデータを踏まえると、プログラマーは他業種に比べて、残業が多い・長いといえるでしょう。

1-2 プログラマーの平均残業代

プログラマーの平均残業代は、厚生労働省が公表している『毎月勤労統計調査』で、大まかに確認することができます。

表:業種別の残業代平均額
 産業 現金給与総額(円) 所定外給与(円) 所定外労働時間
鉱業、採石業等 324,411 26,648 14.9
建設業 361,258 29,589 16.4
製造業 346,196 39,356 18.5
電気・ガス業 465,697 63,803 17.2
情報通信業 417,087 33,560 14.7
運輸業、郵便業 350,088 50,560 27
卸売業、小売業 354,082 18,672 11.5
金融業、保険業 409,787 23,836 11.9
 不動産業、物品賃貸業 366,140 22,133 14.1
学術研究等 445,608 29,434 15.4
飲食サービス等 265,958 22,094 15.4
生活関連サービス等 284,935 17,034 10.9
教育、学習支援業  400,265 8,743 15.6
医療、福祉 317,069 18,877 6.9
複合サービス等 348,677 19,944 10.4
 その他のサービス業 286,723 25,834 15.2
平均 358,998 28,132 14.8

参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査-平成30年10月分結果速報

また、パーソル総合研究所によれば、情報通信業のサービス残業は全体の中では低い部類に入ります。

産業 サービス残業時間月平均
1位 教育、学習支援業 12.26
2位 不動産業・物品賃貸業 11.54
3位 生活関連サービス・娯楽業 8.86
4位 宿泊 飲食サービス業 8.00
5位 運輸業、郵便業 7.91
6位 卸売業、小売業 7.44
7位 電気・ガス・熱供給・水道業 7.43
8位 建設業 7.00
 9位 その他のサービス業 6.49
10位 情報通信業 6.36
11位 学術研究、専門技術サービス業 6.19
12位 金融業、保険業 5.96
13位 医療、福祉支援業 5.51
14位 製造業 4.16

参考:業種・職種残業実態マップーどの業種が、どのくらい働いているのか|パーソル総合研究所

このことから、プログラマーの残業時間は長いものの、残業代はしっかり払われているといえるでしょう。

ただし、すべての企業で残業代が全額きっちり支払われているかどうかは別の話です。詳しくは後述する「【3】ブラックIT企業が残業代を支払われない際に使う言い訳」で解説します。

【2】プログラマーに残業が長くなりがちな理由

経験が浅いプログラマーは別として、過度な残業が発生してしまう原因の多くは企業側にあるといえます。

本章では、プログラマーの残業が長くなりがちな理由を解説します。

2-1 下請け中小企業が多い

中小IT企業の多くは自社サービスの開発を行っているではなく、下請けとして開発を担っていることがほとんどです。

下請けの場合、クライアントの要望に応えることが第一です。

相手側が求める品質、細かな規格変更に対応するために残業をせざるを得ない時もあります。

2-2 納期までの締切が厳しい

仕事がスケジュール通りに進むということはあまりなく、プログラマーはそのあおりによる影響を受けやすいです。

製作途中での設計変更や仕様追加により、工数が増え、締切までのスケジューリングが厳しくなっています。

納期に間に合わせるために、締切直前は連日の徹夜や休日出勤となる方も少なくないでしょう。

2-3 残業ありきで業務が組み込まれている

売上のため、過大に仕事の受注をしている会社では、そもそも残業ありきでスケジュールが組まれていることも少なくありません。

プログラマー1人ひとりに多大な負担を押し付けられた結果、有給消費はもちろん、病欠すら許されない状態となってしまうかもしれません。

2-4 社員の定着率が低い

IT系人材は元々の数が少ないのもあり、定着率が低い会社は常に人手不足のままです。

プログラマーやエンジニアといった技術者は、転職を繰り返してスキルを磨いていくのが一般的なため、同じ企業に長く努めるケースは多くありません。

とはいえ、定着率が低い会社では頻繁に社員が辞めてしまうので、いつまでたっても人手が足りず、残業という形でしわ寄せがやってきます。

【3】ブラックIT企業が残業代を支払わない際に使う言い訳

ブラックIT企業では違法と知りつつ、残業代の支払いを避けるため、もっともらしい言い訳をすることもあるようです。

これに対抗するためには正しい知識が身についてなくてはなりません。

本章では、ブラックIT企業が良く使う言い訳をまとめたので確認してみてください。

3-1 プログラマーは裁量労働制だから残業代を支払う必要がない

プログラマーに裁量労働制の適用があるという主張、一見もっともらしいように思えます。

しかし、裁量労働制の適用には、法律に測った形で手続きがおこなわれている必要があり、手続きに問題があれば、その裁量労働制は有効とはいえません。

また、裁量労働制の適用がある職種も法律上厳格に定められています。

一口に「プログラマー」といっても、その業務・業種は多種多様であり、必ずしも適用が可能であるかは不明です。

したがって、このような説明がされた場合、まずは法定の手続きがおこなわれているか、自身の職務が裁量労働制の適用職種であるかを慎重に検討する必要があります。

3-2 固定残業代以上に残業代を支払う必要はない

固定残業制の導入や運用を誤った結果、残業代を正しく支払わない企業は少なくありません。

固定残業制は、あくまで一定時間分の残業代をあらかじめ支払っているだけです。

もともと定めた時間以上に残業をさせたのであれば、その分別途で残業代を支払う必要があります。

そもそも、正しく固定残業制を導入できておらず、裁判などで無効と判断された例がかなりあります。

✔就業規則や雇用契約書に固定残業代の時間数が明記されているか
✔固定残業時間を超えて働いた場合に、別途残業代の支給がなされると明記されているか
✔給与明細などで固定残業代の支給額が明確になっているか

3-3 年棒制だから残業代は出ない

月給制ではなく年棒制のプログラマーも多いと思いますが、年俸制でも残業代は支払われます。

成果主義的な報酬のイメージが強いためか、残業代が除外されると思いがちですが、年棒制であるという理由のみで残業代の支払義務が免除されることはありません。

また年棒制の場合、賞与を含めた金額から割増賃金を計算するため、月給制で同じ年収額の人よりも、支給される残業代は多くなります。

【4】プログラマーが残業の少ない企業を見つけるポイント

プログラマーに対する求人がブラック企業のものしかないということはありません。

違法な長時間労働がなく、きちんと残業代を支払う企業は当然あります。

本章では、残業が少ない企業を探す際にチェックしておきたいポイントをご紹介します。

4-1 募集している人材を詳細に記載している

人手不足の昨今では、採用にかかるコストも膨大です。

費用を抑えるため、欲しい人材からの応募が来るように募集要項を詳細に記載して、求人をかけるのが通常です。

ですが、人材を使い捨てと考えているような企業の場合、誰からでも応募が来るように、あまり細かく募集要項を記載しません。

未経験でも可としている企業に応募する場合には注意したほうが良いでしょう。

4-2 自社開発をおこなっている

自社サービスの開発を手掛けられるということは、それだけの企業体力があるということです。

しっかり残業代が支給される可能性は高いといえます。

一度、サービスが安定してしまえば、運用・保守がメインとなるため、極端に労働時間が長くなることは少ないでしょう。

4-3 中高年の社員が活躍している

年齢が上がるにつれて、無理な働き方ができなくなります。

逆に言えば、中高年のプログラマーが活躍しているということは、無理なく働ける環境と言えるでしょう。

ただし、中高年の社員が管理職しかいない場合、若い社員を使い捨てにしている可能性があります。

そのような場合には、離職率や口コミなども合わせて確認したほうがよいでしょう。

【5】未払い残業代を取り戻す手順

今の会社を退職するにあたり、これまで未払いであった残業代を回収したいと考えている方もいるでしょう。

残業代は、2年分までさかのぼって請求できるため、人によっては、100万円以上の回収ができる場合もあります。

本章では、未払い残業代を取り戻すための手順をご紹介します。

5-1 無料の相談窓口を活用する

「何から手をつけていいかわからない」「そもそも本当に残業代が未払いなのか」などの不安や悩みがある方は、無料相談を活用してみましょう。

[労働問題の無料相談窓口一覧]
・労働基準監督署
・労働局
労働条件相談ほっとライン
総合労働相談コーナー
・一部の弁護士事務所
法テラス

法律もプログラミング同様、一般の方ではわかりづらいところが多々あります。

1人で悩みのではなく、専門家に確認するのが確実でしょう。

5-2 証拠を集める

残業代申請をする上で重要なのが、証拠を集めることです。

退職後の証拠集めは大変なので、在職中に以下を参考に証拠を集めておきましょう。

  • 就業規則
  • タイムカード
  • 給与明細
  • 雇用契約書 など

プログラマーであれば、間違いなくPCを使いますので、ログイン記録も業務時間の証明に役立つでしょう。

また、メールやチャットでのやりとりも証拠となり得ます。

5-3 残業代の未払い分を計算する

残業代請求をするためには、未払い分の具体的な金額を算出しておかなければなりません。

ただ、今まで未払い分であった残業代を支払ってくださいと会社に請求しても、具体的な金額がなければ応じないためです。

残業代は以下の計算式によって割り出します。

残業代=残業時間×1時間あたりの賃金×割増率
固定残業代が正しく導入・運用されている場合には、その金額分は除くようにしてください。
[具体例]
残業時間‥60時間、1時間あたりの賃金‥1,300円、固定残業代‥65,000円(40時間分)
未払い残業代=60時間×1,300円×1.25
=78,000円×1.25
=97,500円
=97,500円-65,000円
=32,500円

より具体的な計算に関しては、以下の記事をご覧ください。

5-3 会社に請求書を送付する

会社への残業代請求は、請求した事実が証拠として残るよう、書面でおこないます。

口頭の場合、聞いていないと会社が知らないふりをすることもできるからです。

また、請求をおこなうことで一時的に時効を中断できるのですが、書面でないと証明が難しくなります。

そのため、配達証明付き内容証明郵便で請求書を送付すれば、郵便局が会社に届けたことを保証してくれるので安心です。

5-4 弁護士に依頼する

会社が残業代請求に応じない場合には、法的な手順を取らざるを得ないので、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

弁護士に依頼すれば、請求に必要な手続きをすべて任せることができるので、自身は転職活動などに時間を使うことができます。

また、専門知識をもつ弁護士に依頼することで、正しい金額の残業代を算出できます。より多くの残業代が回収できるようになるかもしれません。

弁護士はそれぞれ専門的に扱っている分野があるため、単に近場の事務所を探すのではなく、労働問題に精通した弁護士に依頼・相談するようにしましょう。

【6】まとめ

労働環境によっては、過酷な残業を強いられるプログラマーですが、その原因は以下のようなものがあげられます。

  • 下請けの中小企業が多い
  • 納期までの締切が厳しい
  • 残業ありきで業務が組み込まれている
  • 社員の定着率が低い

残業時間が長いだけでなく、労働裁量制や固定残業制、年棒制を理由に、残業代をきちんと支払われない会社も中にはいます。

未払いとなっている残業代は、2年分までさかのぼって請求することができます。退職をお考えの方は、残業代請求することを検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者
梅澤 康二氏:アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014根8月にプライム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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