今回は、クルーズ株式会社が多くの子会社を生み出し成長させているノウハウについてご紹介。
クルーズは、「インターネットの時代を動かす凄い100人を創る」というミッションをかかげ、そのために「永久進化構想」という仕組みを打ち出しました。
では実際に、どのように起業家を集め・育て、事業を立ち上げスケールさせているのか、その秘訣を同社 執行役員の諸戸さんにお伺いしました。
「惜しみないノウハウとリソースの投下」「子会社へ意思決定権を一任」「超大型のインセンティブ」など、クルーズ流の経営者を惹きつける仕掛けが満載でした。

【人物紹介】諸戸 友(モロト ユウ) | クルーズ株式会社 執行役員
目次
時価総額1兆円を目指すための仕組み「永久進化構想」とは?
-クルーズグループが掲げる「永久進化構想」とは、どのようなものなのでしょうか?
諸戸さん:永久進化構想とは、次世代の事業と経営者の誕生と成長、永遠のベンチャースピード、時価総額1兆円企業を目指す仕組みです。
クルーズは2001年に創業し、メイン事業をさまざま変えながらも、一度も赤字になることなく右肩上がりで成長してきております。
その中で、今後の中長期計画を立てるにあたって、「社会にもっと影響を与えられるような会社にしていきたいよね」という話しになったんです。
では、「社会に多大な影響を与えてる会社とは?」となると、トヨタやNTT、ソフトバンク、ソニーといった、時価総額が1兆円を超えている企業が思い浮かびました。
社会に絶大なインパクトを与えるためには、そのくらいの規模にまで成長する必要があり、それは数百億数千億という投資やチャレンジができる状態です。
では、「1兆円企業」を目指すためにどのようなロードマップを描くべきか。
ビジョン達成のためには、優秀な経営人材や、優秀な経営陣がいる会社にどんどんジョインしてもらい、グループとして時価総額1兆円を超えるようにしていこうという話になりました。
クルーズでは、「インターネットの時代を動かす凄い100人を創ること」をミッションに掲げていますが、まさに、100億円の事業を100人の経営者の手によって生み出すことができれば、時価総額1兆円に届くと考えました。
そのような人材や企業を外から集めるために考えはじめたのが、「永久進化構想」です。
- 今、どのくらいの事業が永久進化構想の中で立ち上がっているのですか。
諸戸さん:今は約20社。つまり約20事業が立ち上がっています。さらに実は水面下でいくつか仕掛けているものもあるため、それも含めると20数社という感じでしょうか。
永久進化構想を支える、経営人材を惹きつける3つの仕組み
-永久進化構想の具体的な仕組みを教えてください。
諸戸さん:まず、永久進化構想において、新たな事業を生み出すために、大きく以下のパターンに分かれます。
【永久進化構想で、事業を生み出す3パターン】
- 【1】優秀な経営人材に入社してもらい、子会社を立ち上げ事業をつくるパターン
- 【2】M&Aをおこない、事業を継承して拡大させていくパターン
- 【3】社内のメンバーから新規の事業を立ち上げていくパターン
これらのパターンから数多くの事業をつくっていくことになりますが、永久進化構想では事業を生み出す経営者にとって非常に魅力的な仕組み・ルールが存在します。
これも大きく分けると3つになります。
1、クルーズの経営ノウハウ、資金などのリソースを惜しみなく提供
諸戸さん:まずは、クルーズの経営ノウハウを惜しみなく提供します。
クルーズは、さまざま事業を変化させながらも右肩上がりで成長してきていますが、なぜそのようなことができているのかというと、当然いろんな仕組み、メソッドがあるわけです。
たとえば、500項目以上にわたる、リスク回避を目的としたチェックシートがあるのですが、それを定期的に合宿を実施しチェックしており、常に会社の健康状態が保たれています。
-500項目もあるんですね・・・!
諸戸さん:さらに事業を転換する中で、プロモーションは共通して重要な要素だと思いますが、そのプロモーションのノウハウや経験値もあります。
このように、クルーズがこれまで培ってきた知識・経験をどんどん提供していきます。
もちろん、立ち上げの際の資金や、追加投資も惜しみません。「出すべきだ」という判断になればどんどん投下していきます。
なぜ、そこまでするのかというと、成功確率を高めてほしいからです。目的は、事業を大きく成長させることです。そのために、クルーズのリソースをうまく使ってもらいたいと考えています。
2、意思決定権はすべて子会社の代表に任される
諸戸さん:2つ目のポイントとしては、あらゆる意思決定権は子会社となるグループの代表が持てる、という点です。
よくあるのは「結局なんだかんだで、親会社が意思決定を握っている」ことですが、そのようなことはしません。もちろん、相談には乗ります。ただ、「決めるのはあなた方です」という、そういう考え方です。
意思決定のスピードが遅くなると事業の成功確率が高まらないため、そこはスタートアップの特徴を活かして、どんどん意思決定できるようにしています。
オフィスの場所、採用方法、人事制度も自分たちで決めてもらって良いですし、企業文化も自分たちでつくっていってもらいたいと考えています。
-相談はどのような形でおこなうのですか?
諸戸さん:月に一回、30分の報告会があります。意思決定権をすべて持ってもらうと言っても、“野放し状態”にした結果、事業が伸びないと意味がないので。
ですので、月に一度、代表の小渕、その領域に長けた役員、子会社の代表、役員とで、描いたマイルストーンに対する進捗確認や、うまくいっているのかどうかなど、ミーティングをおこないます。
うまくいっているのであれば、「じゃあそのまま続けてください」と、10分程度で終わりますし、うまくいっていない場合は、「じゃあどのようにしたらうまくいくか」を一緒に考え、アドバイスしていきます。
それ以外は基本的に自分たちの意志で決めて、事業を進めていってもらいます。これが2つ目のポイントです。
3、出した利益に応じた大型のインセンティブ
諸戸さん:この3つ目が、おそらく他のグループ経営をされている企業との一番違うポイントだと思うのですが、簡単に言うと「事業が伸びて利益が出たら、出た分に応じて大きくインセンティブが支払われる」というスキームです。
結局、いくら利益をだしても親会社に決定権があると、決められた給料・インセンティブ、決められた予算になりがちで、「投資したいのに投資できない」というケースがあると思います。
そこを永久進化構想では、出した利益をインセンティブという形で各子会社の代表にお渡ししています。その使い方も、各代表にお任せします。
-かなり大きな金額になりますよね?
諸戸さん:単位でいうと億、十数億って感じですよね。そのくらいのお金がインセンティブとして入ってくる可能性があると。
そのお金を、代表、役員、社員で分配しても構いませんし、事業に投資する、採用に使うなど、基本的には何に使ってもOKです。
とにかく、売上と営業利益が伸びれば伸びるほど、それに応じたお金が入ってくるという仕組みがあります。この3つ目のポイントは、特に魅力的な部分になると思います。
経営人材を獲得するには、タイミングと意思決定スピードが命
-経営人材の獲得となると非常に難しい印象ですが、どのようにされていらっしゃるのですか?
諸戸さん:やはり経営人材の獲得となると、圧倒的に知り合い経由が多いです。
経営人材は当然誰でも良いわけではなく、お互い慎重に見極めなければなりません。そうすると、リレーションを築き、お互いの価値観を共有し、そのうえで信頼関係を醸成する必要があります。
そして、経営人材においては「タイミング」と「スピード」が特に大事だと思っています。
過去を見ても、ほとんどの場合、代表や役員が何かしらでつながっていて、話していくなかでたまたま何か新しいことをやろうとなっていた、というケースです。
ただ、そういったケースに巡り合った際に、即、意思決定してクルーズグループに参画してもらうか。ここがすごく大事だと思います。
経営人材は、意思決定が非常に素早いです。モタモタしていたらチャンスはどんどんなくなります。
ですので、「独立して自分でやるか、転職するか」といったタイミングのときに、ちょうど永久進化構想の話ができるように、常にアンテナを張ってコミュニケーション取っておくべきですね。
タイミング間違えると「いやいや、今はちょっと・・・」みたいな話もあると思うんです。
しかるべきタイミングで、そのタイミングが来たら即、代表や役員といった意思決定者につなぐ。どれだけ忙しかろうが意思決定して進めていくことがすごく重要で、そこはもう徹底しています。
良い人材がいてタイミングが合えば、すぐにグループ代表や役員に共有するようになっています。「ミーティングお願いします」「会食お願いします」といった内容が常にやり取りされています。
【事例1】Sevenwoods Investment 代表の笠井さんが入社した経緯
-実際にどのような方が参画されたのでしょうか?
諸戸さん:たとえば、現在は「Sevenwoods Investment」という投資会社の代表をしている笠井レオさん。
彼はもともと独立系VCのインキュベイトファンド出身で、22歳で独立してIF Angelを立ち上げるといった経験をしています。
Sevenwoods Investmentはファンド・オブ・ファンズという形式で、複数のファンドを組み合わせて、一つのファンドにまとめています。簡単に言うと、ファンドの管理会社のようなイメージです。
実質、事業を動かしてるのはその下に連なるファンドになります。ここに笠井さんも自分でファンドを持っています。
-笠井さんは今、おいくつなんですか?
諸戸さん:今、25歳ですね。非常に若いです。
なぜ彼が参画してくれたかというと、東京大学在学中に学生起業し、今はクルーズグループでメディア事業を営む株式会社Candleの代表である金さんと仲が良く、たまたま話をしている中で笠井さんがポロッと「ちょっと次を考えてる」と金さんに話があったそうです。
そこですかさず、金さんが永久進化構想の話をしたそうです。
そして、翌日にはクルーズグループ代表の小渕、CFO、金さんと笠井さんで4人で食事をしながら色々話し、その翌週には、ある程度事業スキームが固まっていったというスピード感です。
【事例2】CROOZ TRAVELIST 代表の福元さんが入社した経緯
-本当にスピード感がすごいですね。他にも事例はございますか?
諸戸さん:「CROOZ TRAVELIST株式会社」という、旅行ECの代表を務めている福元さんの事例もお話させていただきます。
福元さんはもともと新卒でサイバーエージェントに入社し、入社数年で中古ファッションのCtoCをおこなうサイバーエージェントグループの子会社の代表になった方です。
そこからZOZOTOWNを運営する株式会社スタートトゥデイに事業譲渡し、福元さん自身も籍をスタートトゥデイに移しました。
さらにその後、ソーシャルゲームのモブキャストで事業責任者・役員を経て、現在に至っています。
なぜクルーズグループに参画してくれたかというと、福元さんと代表の小渕がたまたま経営者の集まるイベントで一緒になり、そこから何度か一緒に食事しながら事業の話などをするようになったんです。
もともと福元さんもまた自分で何か事業をやろうと考えていたので、何度か事業の話をしている中で、どちらかというわけでもなく、気づいたらいっしょにやろうという流れで決まった感じです。
-起業しようと考えている方は「いや、自分でやるんで大丈夫です」ってなりそうな感じですが、それだけ永久進化構想の中身が魅力的なんですね。
諸戸さん:そうですね。
ただ社長になりたい人には、永久進化構想は向いてないと思うんですよ。
彼らがなぜ参画してくれたかという一番の理由は単純に、「クルーズのリーソスを活用した方が事業成功確率が高まるから」という部分です。
「事業を伸ばしてたくさんの人に価値を提供したい」という人にとっては、リソースがそろってる、リソースが使える、かつアドバイスを受けながらも自分たちで意思決定できる、さらに報酬も大きく入ってくる可能性があり、投資に回すこともできます。
事業成功確率を考えたときに、「だったら永久進化構想を使わない手はない」という、そういう発想に至るんだと思います。
社内から経営人材を生み出すために何をしているのか?
-社内から経営人材生み出すために、どのようなことをされているのでしょうか?
諸戸さん:まず、どのような人材に任せたいかというと、事業についてさまざまな経験をして、あらゆる側面からものごとを見れる人ですね。
やはり事業は一つの側面だけではわからないと思うんです。営業だけやっていれば伸びるかというとそういうわけではありません。
営業会社を立ち上げるとなればそれで良いかもしれませんが、ネットサービスというジャンルでみると、営業だけでなく、マーケティング、プロモーション、企画・開発、UI/UXなどさまざまな要素が必要になります。
そのような要素に対して全体を見渡してつくっていかなければなりません。
ですので、できる限り幅広い業務を経験して、事業そのものを木ではなく森で見れてる人が上に立って意思決定してくべきだと考えています。
-何か特別な研修などはされるのでしょうか?
諸戸さん:特別に経営者を輩出するための起業塾や研修はおこなっていません。
ただ、なるべくさまざまな業務を経験してもらうチャンスをつくるように意識しています。
当然誰でも良いわけではありません。まずは与えられた場所でしっかり結果を残した人というのが前提にあります。
また、愚直にまじめにやり続けられるかは重要ですね。途中で投げ出さずにコミットしてくれそうかどうかも見ています。ですので「やらせてください」という声だけで任せる、ということはしていません。
事業の多くの側面を経験する機会を提供し、事業の全体を見れるようになる。意思決定する経営陣の近くで仕事をする、同じ会議に出席して、経営陣のノウハウを体感してもらう。
このようにしていくことが、最大の教育の場であると思っていますし、結果的に社内起業が増える一番のポイントだと考えています。
永久進化構想をもっと多くの人に知ってもらいたい
-永久進化構想の今後の展開などはございますか。
諸戸さん:今後、永久進化構想をさらに加速させていくために強化したい部分としては、知り合い経由以外から経営人材を集める方法ですね。
今後はもっと広く「クルーズ自体はあまり知らないのですが、永久進化構想を利用すれば事業の成功確率が上がると聞いたのですが・・・」といった感じで、相談がどんどん来てくれるようにしていきたいですね。
そうしないと、100人200人という数の優秀な人材に出会うことはできません。そういった人材はどの企業も欲しいわけですし。
そのためにも大事なのが、今進めているいくつかの事業が、数年経って徐々に実を結んでいくことです。
事業が伸びて、代表自身も、そこで働く社員も全員が活躍している。このようなロールモデルを早くつくって広げていく必要があります。
お金をかけてPRしていくというよりは、しっかりと着実に成果を出していく仕組みを整えていけば、自ずと経営人材が集まってくると信じています。
クルーズの永久進化構想について詳しく知りたい方は
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