残業代請求の時効は2年間から当面は3年に延長|時効を中断させる方法まで

※本記事は、株式会社アシロの「労働問題弁護士ナビ」より語句などを一部修正したものを転載しております。

近年、ブラック企業やサービス残業と言った言葉を聞くように、違法に残業代を支払っていない企業が非常に多くあります。

そのように残業代を支払わない会社に対して、残業代請求をおこない、過去の未払い分の残業代を請求することができます。

しかし、残業代請求には2年という時効がありましたが、「2年」までとする規定を「当面は3年」に延ばす改正労働基準法が2020年3月27日、参院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。

社員が未払い残業代などをさかのぼって会社に請求できる期間(時効)は「2年」までとする規定を「当面3年」に延ばす改正労働基準法が27日、参院本会議で賛成多数で可決され、成立した。施行日の4月1日に支払われる賃金から適用され、実際に2年を超えてさかのぼって請求できるのは2022年4月以降だ。

引用元:未払い賃金の請求期間、当面3年に延長 改正労基法成立:朝日新聞デジタル

「退職するときに今までの残業代を請求しよう」
「最近になって残業代請求できることが分かった」
と言うような形で、残業代請求を先延ばしにしている方はいませんか?

今回は、残業代請求を行う際の時効についての解説をしていきます。

残業代請求を考えている方は、いつまでも残業代請求ができるわけではないということを理解していただいて、少しでも早く行動を移すことから始めましょう。

残業代請求の時効は2年から当面3年に延長

労働基準法第115条には「賃金や災害補償その他の請求権は2年間」とあります。

残業代もこの賃金に含まれ、請求権が2年間しかないことになります。

つまり、過去の残業代を請求しようとしても原則的に2年前までしか請求を遡られず、さらに、今後も残業代請求を躊躇していると、徐々に請求できる残業代がなくなっていくことになります。

2022年4月以降から3年を遡って請求可能に

先の参院本会議で当面3年の案が賛成多数で可決され、施行日の4月1日に支払われる賃金から適用されます。

実際に2年を超えてさかのぼって請求できるのは2022年4月以降とのことです。

詳しい経緯は後述します。

残業代請求の時効が成立する例

それでは、実際に残業代請求の時効についての例を挙げてみましょう。

現在を2016年の6月1日とします。お伝えのように残業代請求は、2年の時効になりますので、2014年の6月中の残業代は請求可能です。

しかし、ご説明のように残業代請求を躊躇して、7月・8月と先延ばしになってしまうと、請求できる残業代も1カ月・2カ月と減っていきます。

例えば、1カ月で1日3時間の残業代が20日間払われていなかったとします。

1時間当たり1,000円で給料を計算すると

「60時間×1,000(時間給)×1.25(割り増し分)=75,000円」

となり、1カ月で75,000円分損してしまうことになります。

もちろん、残業時間が長く、未払い残業代が多いと考えられるほど損する金額も大きくなります。

残業代請求の時効が2年以上になる例外

残業代請求の時効は2年間とお伝えしておりますが、一部例外によって残業代請求の時効を延ばすことができます。

こちらでは、例外的に残業代請求の時効が延びるケースについてお伝えします。

不法行為があった場合は3年間に延長されることもある

残業代を未払いが悪質であり不法行為に該当すると評価できる場合、その請求に係る時効を3年と主張することも可能です。

杉本商事事件」は、裁判でも残業代の請求権が3年間と認められた例として度々目にします。

ここで言う不法行為とは、

  • 会社が残業の発生を認識していながら残業代を支払っていない
  • 残業時間を含めた勤務時間が管理されていない

などが考えられます。

不法行為があると、残業代(賃金)として請求するのではなく、損害賠償として請求することになり、時効が3年に延長されます。

残業代請求が3年間で認められた例は少ない

こうしてみると、大抵の未払い残業代の問題で不法行為が考えられるかもしれません。

ただ、残業代請求で3年間と認められた例は少なく、会社側とも揉めて裁判まで発展することも考えられる為、3年間で請求できることはあまり期待しないほうが良いでしょう。

弁護士と話し合って、ダメでもともとで3年間分を遡って請求してみるのは有りかもしれません。

使用者が時効の援用をしなかった場合

残業代の時効は2年間となっておりますが、厳密にいうと、使用者(会社側)が消滅時効2年間が経過した後に、時効の援用をすることで時効が成立します。

簡単に言うと、労働者が10年分の残業代を請求して、会社側が時効の存在を知らずにそのまま10年間の残業代支払いに応じれば、2年以上の残業代を受け取れることもあります。

ただ、たいていの会社では、社労士や顧問弁護士などを雇っており、残業代請求の時効を知らずにそのまま応じてしまうことは極めてまれだと思われます。

応じることは稀でも、諦める必要はありません。
残業代請求ができるかどうか知りたい方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。

 

残業代請求の時効を止める方法

それでは、こちらでは残業代の時効を止める方法をお伝えします。

内容証明郵便を送る

残業代請求の時効を仮にストップさせる代表的な方法としては、内容証明郵便を使い請求書を郵送する方法です。

内容証明郵便とは、簡単に言うと、「こういう内容の手紙を確かに送った」と郵便局が証明してくれるサービスのことで、このように時効を借りで止めるには非常に有効な手段です。

完全に時効を中断させるには

完全に時効を中断させるには、裁判を起こすか、会社と話し合って承認をもらう等の方法しかありません。

もっとも、時効完成間際で裁判を起こす時間がない場合に、一時的に時効を停止させることができます。

会社に対し、残業代を「催告」することで、6カ月間時効を延ばすことができます。

残業代請求では、話し合いが長引いたり、裁判にまで発展することも考えられます。

しかし、この延長期間内に裁判を起こさなければ、結局、権利は消滅してしまいますので、注意しましょう。

いざ残業代請求を初めても、解決するのにはそれなりの期間を要します。

残業代請求を行なう前には時効を仮に中断させることを覚えておきましょう。

残業代請求を行なう手順

少し話は逸れますが、時効の成立を免れるために、具体的な残業代請求の方法を知りたくなった方も多いのではないでしょうか。

残業代請求に関して、以下で具体的に残業代請求の方法を解説しておりますので、気になる方は一度ご覧ください。

残業代が発生している証拠を集める

未払いの残業代請求を検討している場合、残業代が発生している証拠を集める必要があります。

雇用されたときの書類

「雇用通知書」や「雇用契約書」「労働契約書」など。使用者(企業)は、労働者を雇用する際に、労働基準法施行規則第5条に定められた事項が記載された書面を、交付する義務があります。

就業規則のコピー

労働者が10人以上いるような職場では、就業規則の作成・周知は会社の義務となります。

始業・終業時刻を立証する資料

1:タイムカード・勤怠記録・日報

2:業務用メールアカウントの送受信記録履歴

3:帰宅時のタクシー使用履歴(領収書)

4:日記等の備忘録 など

残業時間中の労働内容を立証する資料

 

1:残業指示書や残業承諾書

残業指示書や指示を受けたメール

指示を受けた時のメモ書き

残業承認の旨の書面

2:残業時間中の業務内容が分かる書面

・残業時間中に送信した業務用メールの履歴

・残業時間中の業務内容が判る資料(業務日誌など) など

【注目記事】残業代請求時に認められやすい証拠と、証拠がない時の対処方法

未払いの残業代を計算する方法

いま現在残業代請求は具体的に考えていない方でも、未払い残業代が少しでも考えられる方は、一度未払い残業代の計算をしてみることをおすすめします。

具体的な計算方法は少々長くなりますので、『残業代の正しい計算方法』で解説しておりますので、ご覧ください。

残業代請求で、具体的に請求できる金額が分かってきたら、残業代請求に対するモチベーションが上がることでしょう。

特に、残業代請求を少しでも考えた事のある方は、相当な未払い残業代が考えられますので、2年間の限られた期間だけであっても、数百万円の未払い残業代が残っていることもザラにあります。

未払い残業代請求をする4つの方法

1:会社と直接交渉する場合

会社側に法令遵守の意識があり、労働者側にもある程度の譲歩が検討できるのであれば、会社と労働者が話し合うことによって早期に解決することも可能です。

2:労働基準監督署に申告する場合

残業代未払いの問題は、労働トラブルの中でも重要な問題であるため、きちんとした証拠があれば、労働基準監督署からの対応も充分活用できます。 

3:通常訴訟で請求する場合

裁判所に訴えを起こし、未払い残業代を請求する方法です。

個人で訴訟を起こすには少しハードルが高いですし、弁護士に依頼すれば費用がかかりますが、確実性の高い方法で未払い分を取り返そうと思った場合には有効な手段です。

4:労働審判で請求する場合

「労働審判」は、労働問題を迅速に解決させるための法的な手続きです。

通常の訴訟よりも短い期間での解決が期待できます。

詳しくは『実際に会社へ未払い残業代請求をする4つの手順』をご覧ください

残業代請求の時効が3年に延長された経緯

現在のところ、未払い賃金や残業代請求の消滅時効は「2年」まで遡って請求できるとされています(労働基準法第115条)。

ただ、2020年の民法改正により、労働基準法で定められている未払い賃金等の消滅時効も「最長5年」まで延長される可能性があります。

仮に時効が5年まで延長された場合、未払い残業代の請求額は2.5倍以上となりますので、企業サイドとしても無視できない問題です。

労基法は賃金請求権を2年行使しない場合(退職金は5年)は消滅すると規定しており、これが現在適用されている。厚生労働省は「労働者の生活の糧となる賃金債権の消滅時効が1年だと保護に欠ける。ただ10年では賃金記録の保存などの企業の負担が重すぎる」と説明してきた。

だが改正民法で消滅時効が原則5年に延長されると、労働者保護をうたう労基法の消滅時効のほうが短くなる。一般法の民法より労基法が優先されるため、賃金債権の消滅時効は2年のまま変わらなくなる。このねじれを巡って、労使で意見対立が続いている。

引用元:日経新聞|未払い給与、何年間請求できる? 企業・労働者、時効巡り対立

2019年12月27日|労働政策審議会建議「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」にて当面は3年に

  • 賃金請求権の消滅時効期間は、民法一部改正法による使用人の給料を含めた短期消滅時効廃止後の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ、5年とする
  •  起算点は、現行の労基法の解釈・運用を踏襲するため、客観的起算点を維持し、これを労基法上明記することとすべきである。

ただし、賃金請求権について直ちに長期間の消滅時効期間を定めることは、労使の権利関係を不安定化するおそれがあり、紛争の早期解決・未然防止という賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等も踏まえて慎重に検討する必要がある。このため、当分の間、現行の労基法第 109 条に規定する記録の保存期間に合わせて3年間の消滅時効期間とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る一定の労働者保護を図るべきである。

引用元:厚生労働省|労働政策審議会建議「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」を公表します|【資料】賃金等請求権の消滅時効の在り方について(建議)

2020年1月10日|第159回労働政策審議会労働条件分科会にて「概ね妥当との判断」

引用元:【資料1】(大臣印入り)「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」(諮問)

令和2年1月10日付け厚生労働省発基0110第1号をもって労働政策審議会に諮問のあった「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」については、
本審議会は、下記のとおり答申する。

引用元:(追加資料)労働政策審議会答申(案)

残業代請求は弁護士に相談しましょう

いかがでしょうか。

残業代請求の時効は2年間となっています。少しでも早くあなたから動き出すようにしましょう。とは言っても、どうすればいいのか分からない方も少なくないでしょう。

残業代請求を考えている方は、まずは弁護士に相談することも考えてみましょう。

この記事の監修者
梅澤 康二氏 :アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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