給与計算を社労士事務所にアウトソーシングするとき事務所を選ぶ基準は?

※本記事は、株式会社アシロの「企業法務弁護士ナビ」より語句などを一部修正したものを転載しております。

労働者人口の減少により、企業規模を問わず人手不足が深刻化しています。人事部門においても自社で給与計算などのオペレーションを回すことが難しくなっている企業は多く、アウトソーシングのニーズは高まっているのではないでしょうか。

そこで本記事では、給与計算を行う社労士事務所と給与計算を外部発注する側の人事担当者の両方を経験したことのある筆者の立場を踏まえ、給与計算を社労士事務所にアウトソーシングするに当たって事務所を選ぶ基準を解説します。

社労士事務所へアウトソーシングをする際のメリットとデメリット

まずはアウトソーシングするメリットとデメリットを整理しておきましょう。

最もわかりやすいメリットとしては、給与計算を外部専門家(ここでは社会保険労務士)に外注することで、自社で給与計算のできる事務担当者を育成・採用する必要がなくなり、コスト削減につながる点です。

また、給与計算という定型業務から解放されれば、人事担当であれば労務管理や採用、制度構築などのコア業務に、経営者であれば経営活動により時間を割くことができるようになります

一方、デメリットとしては、給与計算のノウハウが自社に蓄積されない点があります。

外注する場合、細かい計算方法まで自社が把握する必要はないとしても、外注先を適切に評価・管理するために、基本的な計算ルールや流れについては概要を把握しておく必要があります。

アウトソーシング会社ではなく社労士事務所を選ぶ理由とは

給与計算のアウトソーシングサービスは、社労士事務所以外にもアウトソーシング業者が提供しています。

しかし、こういった業者ではなく社労士事務所を選ぶべきなのには理由があります。

法律違反や労務リスクのチェックを受けられる

社労士は労働法令・社会保険の専門家です。

そのため、手当や残業代の計算方法や社会保険料の控除方法に、違反や間違いがないかを専門家の目線でチェックすることが可能です。

もちろん、アウトソーシング会社もこのようなノウハウは有しているはずですが、筆者の印象では組織体制やシステムは整っている一方で、オペレーションを担当する担当者のスキルが社労士事務所と比べれば未熟であり、凡ミスが多い傾向にあると感じます。

社会保険手続きを併せて依頼できる

次に、給与計算に付随する社会保険手続きを併せて依頼できる点が挙げられます。

社会保険手続きは社労士の独占業務です。そのため、アウトソーシング業者は自社で社会保険手続きを行うことが法律により禁じられています。

社会保険手続きの代行ニーズもあるのであれば、最初から社労士事務所に一括して依頼してしまえば給与計算・社会保険手続きを丸ごと外注することが可能となります。

社労事務所を選ぶ際のポイント

複数スタッフで計算結果をチェックする仕組みはあるか?

ここでは、個別の社労士事務所選びのポイントについて解説します。

まずは「複数スタッフで確認作業を行っているか」です。給与計算は原則として間違いが許されない業務です。

しかし、どれだけ優秀な人であっても人間が作業している限り、ミスが生じる可能性は捨てきれません。筆者は給与計算にダブルチェックは必須だと考えています。

よって、個人事務所で代表が1人で給与計算を回しているような事務所に発注するのは、計算ミスが発生するリスクが比較的高いといえます。

セキュリティ体制は整っているか

給与計算に用いる情報は、非常にセンシティブな個人情報です。外注するにはこの情報を社外に出す必要が生じます。

そのため、受け手である社労士事務所のセキュリティ体制がどの程度整っているかは確認しておくべきです。

執務室に外部の人間が出入りしていないか、給与データは専任担当者以外がアクセスできないようにロックされているかなどを、発注前にチェックしておきましょう。

自社の勤怠データなどをそのまま集計してくれるか

外注先に提出するデータを加工する作業が生じてしまうのであれば、外注することで自社の手間が増えることとなり本末転倒です。

タイムカードや自社の勤怠システムから出力したデータをそのまま渡せば、それを集計して計算業務を行ってくれるか。この点も事務所選びのポイントの1つです。

労務管理や必要な社保手続きについて積極的にアドバイスがもらえるか

単に計算業務だけ行うのであれば、どこに依頼しようと成果物は同様となるため、コストの安い外注先に発注すればいいでしょう

しかし、せっかく社労士事務所に計算業務を依頼するのであれば、労務管理や必要な社会保険手続きについて、適切なアドバイスを受けられるかどうかという点も、事務所選びのポイントにしたいものです。

毎月の勤怠データを見て36協定の上限時間に近い勤務をしている従業員がいないかチェックしてくれる、社会保険料の月額変更などの必要手続きを給与に変動が生じたタイミングで何も言わなくともアナウンスしてくれるなど、単なるアウトソース以外の視点で業務を行ってくれるかどうかも、比較検討のポイントとなります。

まとめ

給与計算は定型的な事務作業と捉えられがちですが、実は法改正や社会保険料率など、毎年変わるルールに対応する専門知識が求められる高度な業務です。

給与は従業員が働くための重要な要素ですから、支給漏れや計算ミスなどが頻発しているようでは、モチベーションの低下を招く恐れがあります。

社労士事務所に給与計算を任せてしまえば、基本的には、大きな間違いが発生するリスクをなくすことができます。

この記事の監修者
松永 大輝氏 【社労士有資格者】ベンチャーから上場企業まで様々な業種・規模の顧問先を担当。フリーランスの人事として現在はスタートアップ企業の採用・寄稿など幅広い活動を行う。http://ad-libitum.jp/

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